高校生の頃、中学の頃のやんちゃな先輩のツテで、
893の事務所に出入りしてた
っていっても、ただジュースやおやつをご馳走になったり
喋ったり勉強教えてもらって帰るだけで
変な薬や商売を勧められることも無かったし、
何一つ危ない目に遭わなかった
最初先輩に連れられて事務所に行った時は
とにかく怖くて「もう人生終わった」とまで
思うぐらいびびってたけど、
いつしか自分から先輩を誘って行ったり、
先輩の都合がつかない時は自分から遊びに行ったりしてた
ジュースやお菓子に囲まれて5~6人で
ボードゲームやトランプをしたり、
大学卒の組員のお兄さんに勉強を教えてもらったり、
悩みを聞いてもらったり、本当に居心地良かった
でも、高校3年に差し掛かった時に、
いつものように事務所のドアを開けたら
今まで優しかったおじちゃんやお兄さん達が
一斉に私を睨みつけて
「ここをどこだと思ってるんだ!帰れ!」
って怒鳴られつまみ出された
泣きながら「なんで?なんで?」って訊いても
「いいから二度と来るな!」
の一点張りだったんだけど、
ドアの前でしゃがみ込んで泣いてたら、
ドアの向こうから震える声で
「幸せになれよ」
って聞こえてきた
それから数ヶ月して家族で夕食を食べてたら、
番組の間に流れる短いニュース番組で
暴力団の抗争のニュースが流れてた
いつも遊びに行ってたあの事務所が、
ほかの組に襲撃されて一人死亡
大学卒の勉強教えてくれたお兄さんの顔写真が出た
親は「地元じゃないの、怖いわぁー」って軽く流してたけど、
泣くのをこらえて平然を装うのに必死だったよ
やんちゃな先輩とは高校卒業するかしないかぐらいから
だんだん疎遠になって、
実家が家を購入して完全に地元を離れて以来、
もうずっと会ってない