小学校の頃、あまり遊んだことない子に
「うちにおいでよ」
と誘われた。
私はその時まだ転校してきたばかりで友達も少なく、
嬉しくてすぐ返事して彼女の家を訪問した。
もう夕暮れ時だったけど、
ご家族は不在のようだった。
玄関にはお父さんのらしいツッカケ、
お母さんのらしいパンプスや、
学生用の白いズックもあった。
廊下には小さなカラーボックスが置かれ、
女性物のハンドバッグが数個入ってた。
子供部屋には中学生のお姉さんのらしい制服が
鴨居に掛かってて、学習机は2つあった。
「6時過ぎに家族が帰ってくるまで留守番なんだ」
と彼女は言ってた。
一緒にお菓子を食べて流行りのマンガを読んで、
お礼を言って帰った。
帰って母に遊びに行ったことを伝えると
「まーじゃあ今度お礼言わないと」
と言ってた。
その後母から、その子のお母さんとお姉さんはもう
彼女が赤ん坊の頃に事故で亡くなったらしいと聞かされた。
学校の用事で2人が出かけてそのまま事故で鬼籍に入り、
その日預けられてた彼女とお父さんだけが残ったらしい。
母にその事を教えてくれた人は、近所にあるファミリー向けのレストランで、
大人3人分の食事を頼んで、その料理をうなだれて見てる彼女のお父さんと、
何もわからずキャッキャ笑ってる幼児の彼女を見たことがあるらしい。
家族の急逝が悲しく受け入れがたくて遺品を
片づけられないと言えばそうなんだろうし、
残された子の世話で忙しくて手一杯だと言えば勿論そうなんだろうけど、
今思い出しても、何かあの家の家族4人の生活感には胸がざわざわする。
転校先になじむと友達も増えて、
あれ以降は彼女の家に行ってない