姉が中学二年、私が小学五年の時の話
商店街へ両親へのクリスマスプレゼントを買いに行った
可愛い小物雑貨屋で、マグカップを見つけた
父にそっくりなクマの顔のイラストがついていた
父へのプレゼントはこれで決まりだね!
とすぐに意見が一致して
姉とお金を出し合ってそのマグカップを買った
(母へのプレゼントは話に関係ないので省略)
父はクマのマグカップを大変喜んでくれて
「会社で使うカップにして、
みんな(会社の同僚)に見せびらかそう」
と会社に持って行った
しばらくして、帰宅した父がしょぼんとして
姉と私に
「あのカップ、会社で割れちゃったんだ、ごめん」
と謝ってきた
姉も私も「食器は割れるものだから、いいよ」
と納めた
学校帰りにそのマグカップを買った店の前を通ったら
新しいのが入荷したようで、
同じものが陳列されていた
たまたま父の誕生日が近かったので、姉に知らせ
再び同じマグカップを父に贈った
父は大いに喜んで
「今度こそ気をつけて割らないようにするよ」
しかししばらくして、再び父が
「あのカップ……」
姉と私はもちろんいいよと言ったけど、
二人だけになった時
「よく割れるマグカップだね、粗悪品なのかな
それともお父さんがそそっかしいのかな」
と話し合った
これだけのことなのに、
ここからなぜか修羅場に突入
両親は離婚、姉と私は母に連れられて母の実家へ
ずっと後になって母から聞いたのだが
父は社内に彼女がいた
相手の女は
父が「娘たちからのプレゼントなんだ」
と見せびらかすマグカップに怒りが湧き
洗ってあげると見せかけて、
給湯室で叩き割ったらしい
しかも2度も
母は「娘たちからのプレゼントが2度会社で割れた」
ということに「ん?」と勘が働いて、
水面下でいろいろ探ってみたら社内交際が判明
離婚に至ったということだった
父は相手の女と再婚したらしいが
姉と私との面会を希望せず、
慰謝料と養育費は一括払いだったので
父の現状は不明
母の勘の鋭さに驚いた
しかし事情がわかってみると
相手の女も見ているところで
娘たちからのプレゼントを見せびらかした
父の神経がわからない
再婚したくらいだから、
相手の女を愛していたんだろうに
少しは父も気を使えばよかったのに
毎年、商店街がクリスマス商戦に入ると思い出す