高校1年の頃から本にはまり、図書館である男性と仲良くなった

私の家族は私、母、父の3人家族だった。
普通に幸せな家庭だったし
高校生までは何不自由なく暮らしてきた。

私は高校1年の頃から、本にはまり、
図書館に通うことが多くなった。
その図書館で、ある男性と仲良くなった。

その男性は何処かの会社の社長
(ここは伏せさせてください)で、
日曜日のみ図書館で
まったり本を読んでいるとの事だった。
ふんわりして言葉遣いも丁寧で、
恋愛対象にはならなかっただったけど
「図書館仲間」としてその男性に好印象を抱くように。

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男性は自分が社長だという事以外
素性を明かさなかった。
はたから聞けば怪しさ満載の不審者なんだけど、
どうも私はそんな怪しい人と思えなかった。
なんというか社会の荒波に揉まれて
大きな壁を乗り越えてきたような・・
洗練された人というか・・。
うまく説明できないがそんな感じでした。

男性は、私に高校生活は楽しいか?
将来の夢は何だ?と聞いてくる。
答えるとそうか・・と言うだけで
それ以上詮索してこない。

私は両親に男性の事を話した。
すると両親は、社長なの!?付き合っちゃいなよ!と
目を光らせてせっついてきた。
いやいやさすがに親子ほど年が離れてるし、
そういった対象にはならないよと笑いながらはぐらかした。

ある日、いつもの図書館で男性が
「今日でここに来るのは最後にする」と言ってきた。
え?なんで?どうしたの?と訳を聞くが、
男性はうっすら涙を浮かべながら
「頑張って教師になるんだよ、私ちゃん」と

少し汚れた絵を渡してきた。
その絵は丸の中に目や口があり、
棒のような手足を生やした頭足人。
子供が描いた絵だった。
その前に、私はこの男性に名前を名乗った事はない。

何故私の名前を知っているのか尋ねると、
「僕は君を立派な人間に育てる義務があった。
幸せにする権利があった。
ある日それが突然それが奪われて僕は天涯孤独になった。
社長にのぼりつめても君が幸せじゃなかったらと思うと、
我慢できなかった。でも安心した。君は幸せなんだね」
と最後のほうは嗚咽交じりで語った。

男性の言葉の意味にうっすら気づきつつも
「貴方は誰なんですか?」と震えながら聞いてみると、
「ごめん・・」と言って理由を話してくれた。

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男性は私の実父だった。

母が現在の父と交際し、前夫と離婚したのだが
前夫(私の実父)に育児実績がない事から
親権が母に渡った。
実父は仕事柄上、出張が多かったようで
育児になかなか参加できずにいた。

母は実父の出張中に今の父に出会い、恋人に。
実父は怒り狂い離婚を言い渡したが、
親権は取れなかった。
母方の両親が大変裕福なのに比べて、
実父は施設育ちで親族がいない上に
度重なる出張で環境がコロコロ変わる
安月給の仕事だったのも原因の1つらしい。

実父は
「ごめんな、混乱してるだろう。
でも母さんを責めないでくれ。
僕が出張ばかりして
お前たちにかまってやれなかったのは事実だ。
裏切りは許されない事だけど、
今父と母さんが君を不自由なく育ててくれたんだ。
僕に会ったことは両親に言っては駄目だよ。
今の家族は大事にするんだ。」

「本当は影からこっそり見守るつもりだった。
でも大きくなったお前を見て
声をかけずにいられなかった。」
と言って去ってしまった。

私は頭が真っ白になってしまって、
実父を追いかけることができなかった。
しばらく公園のブランコで時間を潰しながら泣き、
落ち着いたところで帰宅した。

私は実父に会った事は両親に話していない。
今でも知らない。
不誠実な家族だけれども、
この両親に愛されて育ったのも事実。
「本当のお父さんに会った」と言って
修羅場に発展させたくない思いもある。

あれ以来実父は図書館には現れなかった。
会社名は聞いているから、
会おうと思えば会えるのだが、
勇気が出ずに会えずにいます。

今春結婚したのですが、
報告に行きたいし、結婚式にも呼びたい。
でも絶対にトラブルが起きるのはわかってる。

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