両親が熟年離婚をした。
原因は父の、モラハラになるんだろうか。
父には、人前や子どもである私達の前で母を落とす癖があった。
料理の味付けが気に入らない、
と顔をしかめていうのにどこが悪いのかは言わない。
どこが悪いの?と聞くと、
こんなことも分からないのか?と絶対に理由を言わない。
人前では、こいつブスでしょ、
○○さんの奥さんが羨ましいですよ!とか、
こいつは食うだけの主婦とか、そう言った感じだった。
母は何も言い返さなかったけど、
代わりにもともとうまかった趣味の道でパートをするようになった。
それでも父は、いや、更に激しく母を落とし続けた。
そんな母が父が早期退職したのをきっかけに、離婚を切り出した。
父にとっては寝耳に水だったらしく、
抵抗し、そんなことをしたら無一文で放り出してやると脅した。
けれども母は顔色1つ変えなかった。
今まではパートだったけど、生徒の評判がよいので
スクールの1つを任されることになった、
あなたがいなくてもやっていける、
もう弁護士にも頼んでありますから、と言った。
結局、母の決意は変わらず、
最後の家族での話し合いの時には、
父が泣き落としで母を説得しようとしていた。
当然だろう。
兄は父を嫌って家を継がずに東京に住み、
私は県外で就職して帰る意思はない。
しかも父は生活能力がない。
卵焼き1つできない。
母は、そんな泣き落とす父を冷たい目で見ていたけど、
やがてぼそっと、
「吐気がするのよ」
忌々しげに言った。
母のあんな声を聞いたのは初めてだった。
「あなたの顔を見るだけで気持ち悪いの。おぞましいの。
毎日それを見ろって言うの?
あなたは汚い女は嫌いだって言っていたでしょ?
私もおぞましいモノは嫌いなの。
再婚でもしたら?次の妻って名目の家政婦が、毎
日貴方のストレス解消に付き合ってくれるか分からないけどね」
両親はこの半年後に離婚した。
母さんのあんな顔も声も初めて見たし聞いた。
怖くて、修羅場だった。
母とは、今でも連絡取り合ってて、
たまに会って楽しく話しているけど、
あの台詞と雰囲気は忘れられないと思う。