家の近所のトンカツ屋の親父は
何に影響されたのか頑固親父。
味は悪くない、というか結構うまいのでたまに行くんだが、
ある日、中学生くらいの女の子を連れた主婦が
カウンターに座っていた。
そしてトンカツを出され、食べ始めると主婦が
「わぁ、おいしい!サクサクだね!」
といい、親父に
「どうやったらこんな風にサクサクになるんですか?
私揚げるとべちゃべちゃで…」
と話しかけた。
すると親父は
「ああ?そんなもん肉も違う、油も違うパン粉も違う、
大体にして腕が違うだろうが!wwおっかしな事言う人だな、あんたも!!」
と怒鳴り返した。
主婦はショボンとして
「すいません」と言ったが、その後も親父は
「ろくに飯も作れねぇ」だの「味が分かる人間に食って貰いてぇもんだ!」だの
その主婦を悪しざまに罵り続けた。
さすがに気分が悪くなってきたら、
女の子が
「御馳走さま」
と言って箸を置いた。
主婦が
「え、もういいの?ほとんど食べてないじゃない?」
と言うと
「うん、こんなクソジジィの作ったものなんて食べたくない。
ママの悪口聞きながら食べるご飯なんてヤダ。まずい。くそまずい」
慌てて「○○子!」とたしなめる主婦、
気色ばむ親父。
でも子供はおびえた様子もなく親父をじっと見据え
「だってこのおっさん前にパパと一緒に来た時、
ママは同じ事言ったじゃん。
でもその時このおっさん「いやー企業秘密ですよー」とか
ニヤニヤ言うだけだったもん。
今日はパパがいないから怖くないから、こんな偉そうなんだ。
最低じゃん、何組の×男みたい。弱い子はいじめる癖に、
強い子はいじめないんだよ。
ママ食べたいなら食べてていいよ、でも私もういらない、
ママの悪口言ってニヤニヤ楽しそうにしてる大人見ながらご飯食べるの気分悪い、帰ろうよ」
主婦は半泣きになり、席を立った。
小さな店は静まりかえり、
親父は目をそらして何やら洗い物を始めた。
会計を済ませ、出て行く直前、女の子は
「セブンイレブンでかつ丼買ってかえろ。
おうちで食べようよ、そっちのが私は好き、ここは嫌」
客はみな落ち着かない様子で、ろくに食べず酒も残して出て行き、
俺も食った後出たが、終始親父もカミさんも無言だった。