遭難した女を見捨てたら結婚した

俺=当時30歳 5年付き合ってた元カノに二股されて以来、
極度の女性不信
元のカノに捨てられてから彼女なし

嫁=女 当時21歳 JD 黙ってれば可愛い

嫁父=最強

嫁母=温厚、優しい、タレ目が可愛い

元カノに捨てられてから女性関係なしで趣味の世界に没頭。
カメラと登山とロードバイクにハマり1人だけどそれなりに楽しんでいた。
毎年、冬になるとテント持参で撮影に行く場所あるんだが嫁との出会いがそこ。

最寄りの駐車場に車とめて徒歩1時間ほどで目的地に到着するのだが
途中で挙動不審な女を発見。

撮影場所で女性に会うのは珍しくないけど、そのときは冬の北海道の2月しかも夜。
嫁はジーパンにダウンジャケットにニット帽でフラフラと歩いてた。

夜なのにライトも持たず(外灯とかない場所、せいぜい月明り)この時期に軽装
元々、女と関わりたくないから無視して素通りしようと遠回りでパスすると

「助けてください」

と泣きながら声かけてきた。

お化けとか信じないけどゾッとして

「やだよ」

と言い足早に撮影地へ向かった。

後ろ振り向いたら追いかけてくるんじゃないかと想像してビビリながら到着。
テント張って飯くって落ち着いてから撮影開始。

雪も降ってなく月も雲もなしで星空撮影には良い条件で
撮影してたらこちらに向かってくる足音が聞こえる。

(他に撮影する人きたのかな?)

程度に思って撮影続行。暗闇から

「助けてくれないんですか?」

と聞こえた気がするので声のした方向を見ると
さっきの挙動不審の女が木の側かららコッチ睨んでた・・

情けないけど「ひぃー」とか声にならない叫びあげてしまった。
そのあと何を思ったのかカメラで相手の顔確認する動作取ってた。。

そのまま固まってると、

「何やってるの?助けてよ」

と嫁が怒り気味に言ってきたのでようやく『さっきの女か』と理解できた。

正直、あんな軽装でこの時期に来るなんてバカか?と思ってたので

「撮影中なんですよね」

とぶっきらぼうに返答。

嫁「・・・・・」

俺「・・・・・・」

俺、嫁に背をむけて撮影続行、心の中で悪態つく

(せっかく休みとってきたのに面倒くさいなぁとか、さっさと消えろよとか)

嫁動かず、俺は無視、そんな空気に耐えきれず俺テントに逃げ込む。

嫁「ちょっと・・・」

と消え入りそうな声で抗議するが、俺無視

5分くらい経過して来た道へ戻るような足音が聞こえた。
最初は正直、ホッとしたけど少し後悔というか反省する気持ちもあった。。

冷静に考えると嫁の服装では寒いだろう、手足も冷え切ってるはず
俺が来る前からいたわけだから、かれこれ1時間以上は外にいるはず
山ではないけど天候崩れたら低体温症になる可能性も・・

とか考えて、とにかく後を追うことにした。

嫁いました。
テントから50mくらい先の、木が密集してる場所で
体育座り?のような格好でうずくまってた。
俺、見つけたときにホッとしたけど同時に面倒くさいとも思ってた。

嫁に声かけるも返事なし、ちょっと近づく、声かける、返事なし。
あれ?これはヤバイのではと嫁の肩を数回かるく叩きながら声をかける。

嫁、反応

「さむいよぉ~」

と鼻水と涙がシャーベット状になった顔をあげて返答。

嫁のジーパンすでに凍った状態、ニット帽も同じく、
手袋はコーチの革手袋とか舐めんてのかと思った。

とりあえず暖とるのが先決なので嫁をテント内へ誘導。

そこで嫁が

「変なことしないでね」

と余計な一言を放つ、俺内心ムッと来たけど、とにかくテント内にいれる。

あらためて嫁の状況確認すると、着てる服は乾かさないと駄目。乾かす手段なし
仕方ないので予備に持参してるアンダーウェアとジャケット、
肌着類渡して着替えるように言う。

嫁が警戒した顔するので言われる前にテントから出る。

心の中で

(糞女、心配しなきゃ良かった)

と毒づく、体力回復したらさっさとテントから出して駐車場まで返そうと決意。

テントから嫁が

「着替え終わりました。」

「ありがとうございます。」

「すみません。」

と言ってきた、それ聞いて『糞女』から『面倒くさい女』へと昇格。

着替えたけど寒いだろうから寝袋だして下半身いれさせて
スープとレトルトパスタ作って食べさせた。

すぐに体力回復しないだろうから小1時間ほど寝袋で寝ていいよと伝えて
俺は外で撮影再開。
撮影終わらせてテントに戻ると嫁熟睡してた。。

神経の図太い女だなと思った。
嫁起こしてこれから駐車場まで同行するけどそこから先は大丈夫だよね?
と確認すると驚きの言葉が・・・

彼氏?男子友達とここの景色見に来てケンカ、相手が切れて自分置いて帰った、
ここへは相手の車で来たので駐車場に着いても帰る足がない、
ちなみに住んでる街はここから車で2時間はゆうにかかる、
最寄りの駅も深夜早朝の便はない。。。

俺(ああ~ホントに面倒くさい)と心底思った。

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嫁「足がない」

俺「面倒くさい・・・」

から放置するわけにも行かず仕方なく送ることに
住んでる街が近いから乗せるのは別に問題ないのかもしれないが、
この時点で俺の中で嫁の印象は最悪。

そそくさとテントとカメラ撤収中も嫁は手伝わず。
駐車場への戻る道中も終始無言(俺が話しかけるなオーラ出してたのもある)
車のせるときも「ありがとう」もなければ「すみません」も言わない。

この女どんな教育うけてるんだ?こんな女なら彼氏?も切れるわと思いながら約2時間、互いにほぼ無言。
なにかの拍子に嫁がボソッと話し始めた。(うわ、ウザいと思ったけど聞くフリだけ、無言だけど)

嫁「5日前に彼氏との旅行用にカメラ買った(コンデジ)」

嫁「ネットで北海道の景色みてたら誰かが撮影したこの場所(出会った場所)の景色がキレイだった」

嫁「彼氏と相談して見に行こうと今日訪れた」

嫁「でも、目的地まで遠いし寒いしで彼氏が文句言い始めてケンカになった」

嫁「まさかケンカしても切れて自分置いて帰るとは思ってなかった」

嫁「どんどん暗くなるし寒いしどうしたらいいのか分からず来た道を戻った」

嫁「途中で俺さん見つけて助かったと思った」

という事をか細い声で時々、涙声で話していた。

その時、俺はコイツおろしたら山岡家かサンパチのどっちで飯くおうとか考えてた。

その後、また無言タイムで嫁の住む街に到着。
自宅に電話して両親に迎えに来てもらうよう伝えたら・・・

嫁「財布、電話など入れてるバッグが彼氏の車の中です・・」

俺おもわず

「自宅まで送れって???」

と声に出してしまった。

嫁「すみません、お願いします」

と今更しおらしくお願い。

もうとにかく嫁とサッサと別れたかったので嫁のナビで嫁自宅へ向かう。
女性にナビさせると目的地につかないとかあるけど嫁のナビは完璧だった。
ちゃんと建物や信号、曲がる順番とか運転側をまどわせる事は言わない。
ちょっとだけ見直した。

到着前に考えてたこと。
それは嫁に着せてるウェア類をどうやって回収しようかって事だった。
後日、洗濯して渡すので連絡先交換とかこの女とは絶対したくない!と…
なので、嫁に自宅に送ったらすぐにウェア類着替えて返して欲しいと伝えた。

嫁「ちゃんと洗濯して返します。」

俺「いえ、結構です。一般家庭の洗濯機だと逆に痛むので自分でやりますから」

嫁「いえ、でも・・・」

俺「気遣い無用です、はやく俺も帰りたいので」

と押し切った。

嫁「分かりました、自宅について着替えたら返すので少しだけ待っててください」

俺「分かりました」

そして、嫁到着。ここから俺の想像しなかった出来事が始まる。

負の連鎖が続くとか運の悪い日とかあるけど、この日は本当にそういう日だった。。。
嫁自宅前に到着、この女となんだかんだで5時間以上一緒にいてグッタリ。
あとはウェア返してもらって自宅へ帰るだけ、せっかくの撮影日がつまらん事になったなぁと。

嫁「ありがとうございました、すぐ着替えて来るので少し待っててください。」

俺「はい」

嫁、自宅玄関あけて中に入る

「◎○××○○ どこのどいつだ!」

という怒号が玄関越しに車内にいる俺にまで聞こえてきた。
そして玄関が開く、ものすごい勢いで車に向かってくるヒグマのような親父がそこにいた。

ヒグマのように筋骨隆々で骨格がごっついんだ、分かるかな?
豆タンクみたいな感じのおっさんが車に小走りに向かってくる。

後ろからギャン泣きの嫁が言葉にならない言葉で

「ち・ちがうよ~」

とか

「おとうさ~ん違うの」

とか言いながらついてくる。

えっ?と思ったときには親父が助手席のドアをものすごい勢いであけて乗り込んできた。

呆気にとられてると

親父「お前、ウチの娘に何やったんだ、おい!」

と首根っこ掴んできた。

おい!と同時に首根っこ掴まれて

「説明しろ!」

と揺さぶられる。

揺さぶられながら視界にはいる嫁を見ると母親らしき人の胸で号泣中!!!

頭に血がのぼる前に冷静になったのはハッキリと覚えてる。

俺(コイツ(嫁)ちゃんと事情説明してないな、それで格好みた親父がゲスな勘違いして暴発してるんだ)

と…とはいえ言われもなく頭揺さぶられて怒鳴られるのは腹に据えかねるので親父に言った。

俺「おたくの娘さんに事情聞いてください。」

親父「娘泣いてるだろうが!」

(それアンタが暴走してるからだろう)

俺「とにかく冷静になってください、娘さんに事情聞いて頂ければわかりますから」

ヒグマが少し興奮おさまったように

「ふーふー」

と鼻息が収まりつつあった。

お母さん爆弾投下

「あら?アンタ(嫁のこと)なんでこんな服きてるの?中は下着だけなの?どういうこと?」

「お前~ふざんけな!!」

「俺の娘に何しやがった!」

(なんなのこの家族、もうお前ら死ねよ)

嫁がようやくおちついたのか母親に事情説明したようで興奮してる親父を宥めてくれた。

(やっと帰れる、ホント帰りたい)

嫁と母親が興奮する親父を宥め、ようやく帰れると思ったのもつかの間。

親父「お前、ちょっと家に来て説明しろ!」

母親「そうね、外で大声だすのもご近所さんに迷惑だから家でお話聞かせてくれますか?」

(大声だしてるの親父だけじゃねえか)

俺「娘さん送り届けましたし、この後は娘さんに聞いてもらえますか?正直迷惑なので」

娘「・・・・・・・・シクシクと泣いてる」

親父「いいから来い!」(怒声)

娘こんなのだし、俺が説明するしか解放される道はないかと諦めて
ウンザリしつつ家の中へ。
応接間?みたいな部屋に通されて四人着席。

配置順  親父 母親
       机
     俺   娘

親父終始俺を睨みつけてくるけど、こっちはやましいこと一切してないので全く平気な顔

親父が嫁に何があったのか問いただすが、語尾が強くて
嫁ビビってまともに説明できない・・・

あ~こういう教育方針なんだと眺めてたら

親父「お前と娘との関係は?」

俺「今日はじめてお会いしました」

親父「はじめてでこんな時間まで娘連れまわして非常識だろうが!」

母親「どうして娘の服濡れていてブカブカの服着てるの?」

嫁「・・・・シクシク」

母親「ちゃんと言えないことしてたの?○○(嫁の名前)」

嫁「置き去りにされて・・・(泣)助けてもらった」

(コイツやっぱりバカ?でも、助けたことはちゃんと言えたからOKだな)

親父「ホントにそうなのか?コイツにそう言えと言われてないか?」

俺「・・・・・アホか」(小声)

親父「何!お前なんて言った?」

もうこの時点でこの娘と親父の相手するのウンザリだったので
自分の口で全部説明することにした

俺「こちらの娘さんがデートの途中で彼氏と○○○(地名)でケンカして置き去りにされて遭難してたんですよ」

俺「俺はそこに通りかかって、遭難しかけてる娘さんを保護してここまで連れて来たんです」

俺「服が濡れてるのは置き去りにされて雪の中歩いてたから濡れただけです」

俺「俺が保護して自分の替えの服に着替えさせ送ってきました」

俺「それだけです!納得していただけましたか?あとは娘さんに聞いてください」

一通りまくし立てたあと嫁をみると泣きながらコクコクと頷いてる

それを見て母親は納得したようで

「ありがとうございます」

とか

「ご迷惑おかけしました」

と頭下げてきた

とりあえず理解できたようで良かったと安心したのだが・・・

親父まだ睨みつけてきやがる

母親「お父さん失礼でしょう、俺さんが見つけて送ってくれなかったら今頃どうなってたか」

母親「ちゃんとお礼とさっきの行動謝罪して、俺さんのおかげよ、ほら」

嫁「・・・・」(まだ泣いてるいい加減うっとおしい)

俺「帰宅させてもらっていいですよね?あと嫁さんの着ている私の服持って帰りたいのですが」

母親「いえ、クリーニングに出してからお返ししますから」

俺「いえ、結構ですもう関わりたくないですから今服返して頂ければ大丈夫ですから」

母親「・・・・・・・・・・・・」

嫁「・・・・・・・・・・」

親父「・・・・・・・・・・」ものすごく睨みつけてくる

母親「そうですか・・では、いま着替えさせてお返しますので、○○(娘の名前)着替えて俺さんに服お返ししなさい」

嫁「うん・・」(まだ泣き声)

嫁は自分の部屋へ行くのに退出、母親も付きそう形で退出。
応接間には親父と俺の二人きりの状況になった。
ようやく終わった、帰れると思ったときに親父がひとこえ

親父「母さん、着替えのとき○○(娘)の体に傷ついてないか見とけ」(大声で)

この時点で親父まだ疑ってるし未だに俺に謝罪もお礼もなし

ここで俺も頭にきて

「自分の娘が言うことも信じらないのかよ?」

と発言。

親父「何こら!」(長州みたいだった)

顎に硬いものが当たった気がして倒れ込んだら、親父が
マウントポジションで俺に拳振り下ろしてきた。

たぶん最初に感じた顎の衝撃は正拳突き?
倒れた俺にマウントして顔に二発。
顔というより左まぶた周辺に二発。
さらにもう一発殴ろうとした時に嫁と母親登場。

母親「おとうさん何やってるの!やめて~」

嫁・・・・立ち尽くす。

母親が親父の右腕抑えて、嫁にも親父の腕抑えろと怒鳴って嫁参戦。

二人がかりで親父の右腕抑えてる間に俺脱出。
顎激痛、顔さわると血が流れてる・・・
もっと最悪なのは俺、歯を治療中で下の歯三本仮歯だったんだよね。
三本見事になくなってた、殴られた衝撃で折れて胃の中に入ったみたい・・・
殴られた箇所は痛いというより疼いてどんどん熱くなる感じ

俺ボーゼン。歯がないよ・・・・

母親「○○には傷なんかどこにもありません!俺さんが助けてくれなかったら死んでたかもしれないのになんで貴方はその人に暴力振るうのよ!」

と泣きながら親父の顔叩いてた。(それも暴力だと後日思った)

嫁ボーゼンと俺を見てる。

顔よりも顎がとにかく痛くて、この家から早く離れたいと立ち上がった。
ちょっとふらついたけど歩けるし意識もハッキリしてる。

「帰ります」と言いたいんだけど顎が痛いのと歯がないから空気は漏れるんだよね・・・
なのでほぼ無言で玄関に向かう。

母親と娘が後を追うようについてきて
母親はまぶたの出血がどうのこうの言って救急箱もってきたけど無視。

嫁は手に俺の服いれた紙袋もってた。
無言で嫁に手をだして紙袋掴んで玄関でる。

嫁と母親まだついてきて病院へとか手当だけでもと言ってくるけど
とにかくはやく立ち去りたかった。

母親が足早に自宅にもどってまたこちらに来た。
俺を殴った親父の名刺渡された。
知ってる会社のそこそこの地位の人間だった。

治療費も払うし警察に届け出だしても構わないと母親が言ってたけど、
そんなことより早く帰りたかったので曖昧に頷いて車に乗ってエンジンかけた。

エンジンかけて車出そうとしたら嫁が運転側の窓コンコンとノックした。

最後まで面倒くさい女と思いつつ窓さげると嫁が

「本当にごめんさない、助けてくれてありがとうございました」

と泣きながら言った。

こいつ最初から最後まで泣きっぱなしだなと、顎が痛いので会釈だけして車だした。

運転中はとにかく顎が痛くてもしかするとヒビはいった?とか心配だった。
自宅途中にあるコンビニのトイレの鏡で自分の顔みると
左まぶたは切れて血が出てたのが乾いて血がこびりついてる。
まぶた周辺も青タンできて腫れてきてるし 、顎はすでに紫色になって唇も切れてた。

コンビニ店員や客の視線が冷ややかで何も悪いことしてないのに妙に惨めな気分だった。
氷袋と冷ピタおおめに購入して明日は固形物食べれるか分からないから
スープ類買ってコンビニ出た。

ようやく自宅について顔洗うついでに服もぬいだら肩にも青タンできてた。
腫れた箇所に冷ピタ貼ってその上に氷をビニール袋に入れて充てる。
もう心身ともにグッタリでそのままベッドに寝転んだけど気が高ぶってるのか寝付けない。
親父の顔思い出してはムカついたり、嫁の曖昧な態度思い出しては
ムカついたりで結局、朝方まで寝れなかった。

翌朝、近くの病院で念のため診察うけて瞼、顎ともに打撲程度でヒビなどなし
使うか分からないけど診断書書いてもらって全治3週間のお墨付きもらった。

会社に電話いれて今日は体調不良で休むことを伝えて自宅に戻った。
とにかく休みたかったのでその日は携帯の電源オフにして
痛み止めの薬のんで湿布して寝た。

結局、会社は3日休んだ。
その間に吹っ飛んだ仮歯跡の治療した程度であとは自宅でひたすら休んでいた。
出勤したけど青タンと若干の腫れは残っていて会社の人には心配させてしまった。

ウチの会社には先々代から働いてる通称『長老』と呼ばれるベテランと
先代から働いてる総務経理のベテラン通称『トミさん』の二人がいる。
この二人がいてくれるお陰で現場の悩みは『長老』、経理の悩みは『トミさん』に頼る事が多い。
他の社員に相談できない事もこの二人にはアドバイス仰ぐことも多く
色んな意味で助けてもらってる人達です。

出勤したときに長老から

「若(俺の呼び名)ケンカしたのか?」

トミさん「若ちゃん(トミさんはこう呼ぶ)どうしたのケンカ?」

俺「いや、転んでしまって」

トミさん「若ちゃん休んでる間に仕事たまってるから頑張ってね」

とハッパかけられる。

こういう時は仕事でも忙しいほうが気持ちも切り替えできて仕事たまってる方が良かった。
その後、数日間は嫁一家の事は考えることもなく平穏に過ぎた。

ある日、現場から会社に戻ると

トミさん「若ちゃん宛に電話来てたよ、これ相手の電話番号」

メモにかかれた電話番号と相手の名字には心当たりなかったが
仕事関係の人かもしれないので電話した。

トミさんから渡された電話番号に電話してみた。
相手でない・・・・今日はあと何件か現場確認にいく予定があるので
電話あれば携帯教えて良いと伝えて現場に向かった。
仕事中は特に電話を気にすることもなく仕事して帰社、残務処理して自宅へ帰る。

家に帰宅してのんびり過ごしてると携帯が鳴った。知らない番号。
当時、携帯は2台もっていて一台は個人用、もう一台は仕事用、鳴ったのは仕事用携帯。
個人携帯なら登録してない番号からの電話は出ることないんだけど
仕事用の場合は出ることにしてる。

俺「もしもし、○○社の俺ですが、どちらさまでしょうか?」

相手「・・・・・・無言」

俺「あの、どちら様でしょうか?電話間違えてますか?この電話○○社の俺番号ですが。」

相手「あ・・あの・・・○○です、俺さんの電話でしょうか?」

女性の声だった。

仕事取引先に女性担当者はいない。
誰だろう?相手は俺を知ってるようだけど心あたりなし。

俺「はい、俺の電話で間違いないです。失礼ですがどちらの会社の○○さんでしょうか?」

相手「あの・・以前に○○○(撮影時)で助けてもらった○○(嫁名字)です。」

俺、困惑。
えっ!?なんで俺こいつに電話番号も勤め先も教えてない、なんでコイツ勤め先わかったの?
暫し、無言というか混乱、それと同時にアノ日の嫌な気分もぶり返して
急速に不機嫌になっていくのが自分でもわかった。

相手が嫁と分かったときゾォっとした。
なんでコイツ俺の会社調べて電話してくるんだ? ストーカー??メンヘラ??

とにかく早く電話切ろうと思った

俺「ああ~、はい○○さんね、何か御用ですか?」

嫁「あの・・・あの、父が俺さんに怪我させて母と心配してたんですが連絡先分からずで」

俺「そうですよね、俺連絡先教えてないですから、でもなんで会社わかったの?」

嫁「あっ!車の中にジャケット置いてましたよね?それに会社名刺繍されてたのでダメもとで電話してみたんです」

このときの嫁の声は勝ち誇ってる気がした。
確かに送ったとき車の後部座席には仕事用の道具や仕事着積んでる。

(この女、バカなくせに目ざといな)

俺「なるほど、それで何か用ですか?私はもう関係ないのですから」

嫁「・・・はい、あの後母に助けてもらったことをちゃんと説明したんです、母がちゃんとお礼するべきだって」

嫁「それと母が父が俺さんを怪我させたこと謝りたいって」

俺「・・・・・・・・・・・・・」

嫁「それでお礼と謝罪を兼ねてお会いできないかと、その電話だったのですが」

俺「いえ、結構です。お礼と謝罪はこの電話で充分ですから」

嫁「あの、でも・・・」

俺「正直に言いますが、もう関わりたくないんです。たまたまあの場所であの状況だから助けただけです。」

俺「助けたのに殴られて気分よい訳ないでしょう?原因作った人達と会いたいと思いますか?」

俺「もう今後電話やめてください、連絡もやめてくださいね、お気持ちはわかりましたから」

嫁「・・・すみません、あの怪我の具合は??」

俺「もう大丈夫です、失礼しますね。」

電話切った後も気分が優れないというかモヤモヤした気分が続いたけど
それから飯くって寝た。

朝起きて身支度して会社へ会社から現場へ現場から会社へ会社から自宅へ。
この繰り返しが続く毎日で休みの日には日帰りで撮影に出かける。
充分楽しい日々を送ってると自分では思ってるんだけど、長老やトミさんからは
早くよい相手を見つけて結婚しなと軽口言われからかわれたりした。

数日後、会社へ俺宛にダンボール箱が届いた。
送り主は嫁だった、嫌な気分だったけど電話じゃない分だけマシだった。
何が入ってるか分からないので自宅で空けることにして持ち帰る。

なんというか嫁には不気味さを感じているので、荷物の中に
嫁の髪毛入ってないか?とか開けたらカミソリの歯が入ってないか?とか慎重に空けた。

中には封筒2通と絵葉書1通と何故か『安寧芋』が沢山はいっていた。。。。

なぜ安寧芋が入ってる?芋きらいじゃないけどダンボール一杯に芋??
とりあえず芋は先送りにして中に入っていた封筒を開けた。

1通には現金で20万円と母親からの謝罪の手紙。
この程度で許してもらえると思ってないがせめて治療費と
娘を助けて頂いたお礼として納めてください。
という意味の文章が書かれていた。

もう1通は嫁からの手紙でひたすらありがとうとごめんなさいが綴られていた。
俺が言うのも変だけど拙い文章でやっぱりバカなんだろうなぁ~と思った。

最後のハガキには嫁が撮影したあの場所の風景がプリントされていた。
嫁の字でハガキにこう書かれていた。

ハガキに嫁の字で

「あの場所で撮りました、キレイな場所ですよね。撮影邪魔してごめんなさい」

コンデジで撮影して
多分、構図とかそんな事考えずに撮った風景なんだろうなぁ~と思ったけど、
あの場所が好きなんだろうなとそこだけは理解できた。
とにかく、これであの家族に関わる必要がないというだけで安心した。

問題はこの大量の安寧芋をどうするか?
1人では食いきれない、おすそ分けするか・・明日会社に持っていっておすそ分けしよう。
でも、なんで安寧芋なの?美味しいけど物には加減ってもんがあるだろうに。
なんかそこら辺がズレてる家族だな~と。

翌日、自分に必要な分だけ残して残りは会社の人へ配った。
トミさんは殊更喜んでくれた、今度芋使った弁当をお礼に作ってくるとか言ってた。

それからは何事もなく平穏な日がすぎて冬から春、夏へと季節が変わった。

俺の趣味は前にも書いたけどカメラ、登山、ロードバイクで
夏はもっぱらロードバイクで出かけて出先で風景撮影したりするのが趣味だった。

もともとダイエット目的でロードバイク買ったけど、すっかりハマって
休みはロード乗って出かけるのが楽しくて仕方なかった。

人付き合いあまり良い方じゃないから、ロードのオフ会とかカメラのオフ会とか
参加しないし1人で気ままに活動するのが好きで趣味友もほとんどいない状態。
サークルとか参加すると気を使うことも多くて、楽しみたい趣味で
人付き合いに気を使うのがイヤだった。

よくパーツ購入するお店にチューブとタイヤ買いに出かけた。
ついでにトミさんの姪もロードに興味あるらしく連れていった、
この子は小学生の頃から知ってるから、感覚的には親戚の子みたいなもんで
たまに飯奢らされたりバレンタインには失敗した義理チョコもらったりするくらいには仲良かった。

自分の場合は自己流でロードやってるけど、初心者はやっぱり
サークルとか仲間いるほうがいいだろうな。
そう考えてトミさんの姪がロード買うなら、馴染みの店の
サークルにも参加したほうがいいよと勧めておいた。

数日後、トミさんの姪からロード買ったとメール来た。
2週間くらいで届くから初ロードのお供してくれとリクエスト、
どこかオススメある?と聞かれた。

なるべく初心者でも楽しめて、交通量の少ない場所でと言う事で
気晴らしによく走るコースに連れていくことにした。

トミさん姪はテンションあがってたけど、俺は内心

「筋肉痛と尻痛を味わうが良い!」

と楽しみにしてた。

当日、快晴ロード日和。
トミさん姪の初ロードはアンカーだった、女性が選ぶには
『渋い』選択だけどピンクとか白とか青ではなく黒系。
なんとなく男っぽい姪の性格にあってる気がした。

初ロードで死ぬーとか言ってたけど楽しんでるようでなにより
補給食やドリンク、サプリ類もちゃんと自分で調べて持参しているのには感心した。

折り返し地点の道の駅で昼食。
雑談しつつ近況報告しあったり最近は女性でもロードバイク乗る人増えてるとか
レーパンで下になにも履いてないのは抵抗があるのでお尻隠すのに
ランニング用短パンはいてるとか
ロードバイクにもっと慣れて走行距離のびたら遠出したいとか
俺が無口な分だけこの子はよく喋る、
なんとなくバランス取れてるなと思ったりした。

往復60キロ程度の初走行だけど元気はまだあるようで
もう少し走りたいというので遠回りして帰宅、解散。

それからたまに一緒に走ったり自分一人で走ったりしてその夏は過ぎた。
夏が過ぎて秋がきて、この時期は紅葉シーズンで
どの場所に言っても観光客や撮影目的の人で賑わう。
人混みが苦手なので有名な場所は避けて
マイナーな場所でひとりで撮影することのほうが多かった。
たまに熊さんと遭遇したりシカの親子撮影したりと秋も何事もなく過ぎていった。

秋が過ぎて冬がきた。
会社も何とか一年乗り切ってくれて、ささやかながら
皆で忘年会やって10日間ほどの冬休みに突入。

俺は特にすることもなく、毎年恒例の撮影に向けて
カメラ整備したり必要なもの買い足したりしてた。
師走の人出も苦手なので泊まり込み撮影の準備して3日から撮影場所へ出かけた。

例の場所ではなく別の場所でそれこそ人の来るような場所でなくて
3日間好きなだけ撮影して満足な休暇を過ごして仕事はじめた。
毎年いくあの場所は決まった期間内に撮影にいくので1月下旬から2月に行く予定。

冬になると現場仕事より書類仕事の方が多くなりデスクワークが増える。
普段、カラダ動かす人間が机仕事やると
ストレスがそれなりに溜まるもので息抜きに撮影にいく機会も増える。
ほぼ毎回の休みに撮影に出かけて、写真投稿サイトに写真投稿したり、
気に入らなければまた撮影に行ったり。

もうこの頃には嫁家族のことは頭から消えていて次の撮影を楽しみにしてた。

時はきた!

余談だが俺はプロレスや格闘技全般すき。札幌中島体育センターが
閉鎖されプロレス興行が少なくなったのがつくづく残念でならない。

ようやく1月下旬に突入して待望の撮影地にいく日が訪れた。
荷物パッキングしながら「昨年は酷い目にあったなぁ~」と思い出した。
今回は2泊3日で撮影するから予備食糧や着替えなど余分に詰めて撮影地に車で向かった。

駐車場に到着、駐車場に誰もおらず今回も撮影地独り占めで撮影できるのが嬉しい。
天気も荒れておらず気温もそこまで下がってない。
撮影地に到着していつものようにテント張って軽く食事とって寝袋に入って夜を待つ。

誰も来ない場所に1人でいると不安にもなるけど
シーンとして気が落ち着くのは俺だけだろうか??
一眠りして外に出る。
風もなく穏やかでさほど寒くもなく星もちゃんと出てる。
撮影開始。

撮影から1時間ほど経過してテントに入って休憩。

足音が聞こえる、たぶん他の撮影者が来たんだな~とさして気にせず
別の撮影者もテント張るようでテント広げる音など聞こえる、
撮影場所独り占め出来ないのは残念だけど仕方ない。

テントから出て撮影再開。
相手もこちらに気づいたようだけど真っ暗だから互いに顔分からず、なんとなく曖昧に会釈。
向こうも撮影はじめたようで一定の距離を保ちつつ撮影しては
テントに入りを繰り返していた。

撮影も一段落してそろそろ機材片付けて寝ることにした。
機材片付け始めると向こうも片付けはじめたよう、
ライト持参してるけど撮影してる人がいる時は点灯させない。
相手の撮影の邪魔になったりするから。

月を隠していた雲が晴れて月明りである程度周辺が見えるようになって気がついた。
女性?男性にしては小柄だな~
向こうもこちらに気がついたのか会釈してくる、こっちも釣られて会釈。
なんとなく気まずい、これが男性なら軽く会話くらいするんだけど
女性苦手だし昨年嫌なことあったのも思い出す。

さっさとテントに引っ込んでやり過ごすことにした。
向こうもテントに入った様子で何事もなく一日目は過ぎた。
朝はテントに荷物おいて別の場所へ徒歩で移動予定、
早朝の撮影も気分がいいもので冬の撮影は自分にとっては楽しい。

テントから出て別の場所へ移動。
昨夜の人はまだテントで寝てるみたいなので静かに移動する。
1キロほど歩いて撮影場所に到着、思う存分撮影してテントにもどる。

昨夜の人がテントから出てきて声をかけてきた。

謎「おはようございます。」

俺「おはようございます、女性でテント泊撮影なんて凄いですね」

謎「はい、初めてなんですけど思い切ってやってみました」

俺「そうですか。それじゃあ」

どうしても女性との会話は苦手、そそくさとテントに入り込み朝飯作って食べる。

朝飯たべて少し寝ることにして寝袋にはいりこむ。
テント泊での撮影で自堕落に過ごすのも好きで、夜までこんな感じで
寝袋に入り本読んだり撮影してりで過ごす。

昼頃に起きて外に出る。
昨夜の女性のテントまだあった。。。この人も連泊するつもり?
なんか気まずいんですけど。

またテントの中に引っ込んで文庫本読んで時間つぶす。
足あとがテントに近づいてくる。なに?
頼むから放おっておいて念じながら寝袋に潜り込む。

謎「あの~寝てますか?今日も泊まり込みですか?」

俺「・・・・無言」

謎「寝てるのかな?」

足音が遠のく

夕方に起きてテント内で晩飯を食う。
テントからちょっと顔だすと、やはり向こうにもテントがあるので
泊まり込み撮影のよう。

仕方ないと覚悟きめて撮影準備はじめる。
カメラだして設置して設定かえたりイジってると向こうもテントから出てきた。

お互い軽く会釈するけど顔は確認できず
互いに近寄ることもなく撮影準備すすめ暗くなるのを待つ。

向こうが近寄ってきた。
ちょっと嫌だ・・話しかけてきた。

謎「今日も泊まり込みなんですか?」

俺「あ~まぁ、そうです、そちらも?」

謎「はい」

俺「あ~そうですか」

いかんやはり会話が苦手だ。夜だから相手の顔みれないけどそのほうが今はいい。
なんとなく相手も空気読んだのか自分のカメラに戻っていった。
その後、数時間ほどお互い話すこともなく時間が経過して夜が空けてきた

カメラ片付けてテントで仮眠して日中に駐車場にもどればいいので、このあとは少し休むつもり。
向こうはテント片付けはじめたのでそのまま帰るようでちょっと安心した。

カメラ片付けてテント撤収した相手がまたこっちに歩いてきた。
夜が明けて相手の顔がわかるくらいの明るさの中でこっちに近づいてくる女

謎「私、帰りますね。お疲れ様でした」

俺「あっ、はい。お疲れ様でした。帰り気をつけて」

謎「はい、では」 ペコっと頭さげた

俺「・・・・・・・・・・・・・」

頭あげた女が話かけてきた

謎「あの、俺さんお久しぶりです。私○○です」

俺、固まる

こんな感じの女だっけ?もっとグズグズとした面倒くさい女だったはず、
こんなハキハキした受け答えするような女じゃないはず。
なんでここにいるんだ?
ホントにこえーよとか頭の中で色々考えるんだけど言葉がでない。

俺「あ・・・」まだ言葉がでない

女「黙っててごめんなさい。最初に分かったんですが撮影の邪魔になるし誤解されそうで」

誤解ってなんだよ??誤解とかどうでもいいけどお前怖いよ・・・・
と思ってもやっぱり言葉がでない

女「あの・・ここで会ったのはホントに偶然なんです。」

女「助けてもらってからカメラ趣味になって今年の冬はここで撮影したくて」

女「それで色々と準備して去年の俺さんみたいに泊まり込みで撮影しようと来たんです。」

女「だから、ホントに偶然なんです。でも。ホントにごめんなさい・・・また嫌な気分にさせてごめんなさい」

そう言ってまた頭さげた、その姿を見ながら俺は頭の中で色々と考えてた。

たぶんそうなんだろうな、絵葉書にここの風景使ってたの思い出した。
この場所が好きっていうのは本当なんだろうと理解できたけどこんな偶然はないよな。。。
でも、俺だってわかった後も言葉通り邪魔されもせず撮影できた。
嫁も自分の撮影に夢中でいたのは確かだった。
ホントに偶然なら俺がとやかく言うこともないな・・でも、やっぱり怖いわ。

女「だから、あのホントに偶然なので戻ってから連絡もしませんから・・」

俺、まだフリーズ状態だけど女が俺に気を使ってるのは理解できた。
この場所は誰のものでもないし誰が来てもいい場所で俺がどうこう言う権利もない。

好きな風景を撮影したい気持ちは理解できる。
そう思えばまだ怖いけど、偶然なんだと思えた。

俺「そう・・凄い偶然だけどわかりました。」

女「ごめんなさい」

俺「謝ることないですよ、別に何も迷惑うけてないし気にしないで」

女「はい、ありがとうございます」

女「あの・・これで最後ですから教えて欲しいことあるんですがいいでしょうか?」

俺「・・・・・・・・・・・・・」まだちょっと怖い

女「この風景を撮った人の作品なんですけど、こういう感じに撮影するにはどうしたらいいんでしょう?」

ああ~本当にこの人はここの風景好きなんだなと思えて自然に

「いいですよ。」

って応えてた。

女の顔がパァーっと明るくなって人懐っこい笑顔みせた。

あれ?こんな顔だったけ?もっと陰気でうっとおしい感じの女だったと
思うんだけど目の前にいる女は真逆だった。
よく考えたら最初の出会いのときの顔は涙と鼻水まじりの酷い顔だった。
自宅で見た顔も泣きっぱなしで酷い顔だったもんなぁ、普段はこんな感じなのかもな。

女が荷物からipad取り出して近づいてきた。ipadに保存してる景色を見せてくれた。

女「この風景なんですけどキレイですよね、私この景色が撮りたくてカメラはじめたんです」

嫁(女)がipadに保存してた画像はどれも素晴らしい作品だけど
PCで修正、加工する技術が必要。
おそらく嫁はそこら辺はまだわからないのだと思う。

俺「えっと、PCは持ってる?」

嫁「はい、ノートですけどあります。」

俺「撮ったデータはPCで編集、加工してますか?」

嫁「????」

やはり、そこでよく使われてるソフト名を数種類教えておいた。
嫁は携帯にメモしてたけど、以外とマメな性格なんだと思った。
携帯いじりながら嫁が思いついたように

嫁「あ!あの分からないことあったらメールで質問してもいいですか・・・その、メアド交換とか」

俺「ここ圏外」

嫁「・・・・・・・・・無言」

俺「教えたソフトの使い方はネットでも紹介してるから調べてみるといいですよ」

嫁「・・・・・・・はい、わかりました」

俺「じゃあ、この辺で俺仮眠するので」

拒絶したわけじゃないけど元カノの件があって以来、
女性にメアドや連絡先教えるのには抵抗があって
例えば同じ状況で嫁以外の女性からメアド聞かれてもやっぱり教えなかった。
でも、嫁にすれば拒絶された事に変わりはないんだよね。

嫁「・・・はい、色々ありがとうございました」

嫁「あともうひとつだけ教えて欲しいんですが、この風景は今この場所ですよね?」

嫁「これはどう撮影したんでしょう?ごめんなさい色々と質問して」

俺「どれ?」

嫁のipadに写る作品をのぞいた。

嫁のipadに写された作品をのぞいた。
過去に投稿サイトへ投稿した俺の作品だった!!

また怖いと思った、こいつワザとやってるのか?ストーカーなの?
本気でそう思った。

でも、冷静に考えればHNで投稿してるし会社名や住所や年齢とか一切、
SNSに個人情報わかるような情報は記載してない。

性別 男

それ以外は何も記載されてないのが俺のプロフィールだから俺だと分からないはず。
単純に嫁が好きな作品のひとつが俺の撮った風景なんだろう。

俺「あ~これね、確かにこの場所からの撮影だね」

どうしよう、俺のだと黙ってたほうがいいのか?それとも俺の撮った風景と言えばいいのか?
単純に自分の撮った作品を好きと言ってもらえるのは嬉しかった。

俺「これ・・・俺が撮ったやつだな。これ見つけたの投稿サイトの○○○でしょう?」

嫁「え~!!」

嫁声うるさかった。

嫁「これ俺さんの作品ですか!すごい去年みつけて景色みたくなったきっかけはこの作品だったんですよ!」

俺「・・・・・・・・・・無言」

嫁「すごい!自分の好きな作品の撮影した人に聞けるなんて凄いですよね??」

嫁大興奮、う~んこの人ほんとに最初の頃と今とではキャラ全然違うなぁ。
あのときのクソ生意気でうっとおしい人とホントに同じ人?
なんというかキャラが明るい。

俺「そんな騒ぐほどのものじゃないよ、でもありがとう」

ちょっと照れた。

嫁「いえ凄いです、私じゃ同じ場所にいてもこんな風に撮れません、凄いです」

俺なにも考えず思わず 。

俺「まだ時間ある?」

嫁「????」

俺「時間あるならこの時の設定とか教えますか?良ければだけど」

嫁「いいんですか!迷惑じゃないですか?」

俺「いいですよ、設定なんてそんな時間かかるわけじゃないし」

という流れになっていた、嫁も驚いてたけど俺が一番ビックリしてた。
なんで俺、嫁相手にこんな事言ったんだ??
その時の気持ちは自分の作品好きだと言ってくれる人が
目の前にいて舞い上がってたんだと思う。
だから深く考えず教えるなんて口から言葉が出たんだろうな。

嫁はパッキングしたリュックから再びカメラ道具だしてセットし始めた。
俺も自分のカメラだしてセットする

互いにカメラをセットして嫁に俺のカメラの設定おしえる。
嫁のカメラはキャノン、俺のカメラはペンタックスだけど
設定操作に違いはあれど設定数値は参考になるはず。

設定数値おしえて撮影のときに気をつけた事やここの風景撮るときに
俺が気をつけることとか時間にして30分程度だろうけど嫁に伝えた。

嫁はそのひとつずつに

「はい」

を繰り返しながら自分のカメラに設定反映させていた。

この時には嫁との過去とか頭になくて
同じ趣味の同好の人との会話みたいで俺も特に意識することなかった。
一通り教えてもう会話のネタもなくなった。

俺「じゃあ、この辺で。俺もそろそろ仮眠しますね。」

嫁「・・あ!はい、疲れてるのに教えて頂いてありがとうございました。」

嫁「この設定参考に色々と自分で試せばいつか私もこの風景撮れますかね?」

俺「俺のよりもっといいのが撮れると思いますよ。」

嫁「頑張りますよ~」

軽くガッツポーズしてた。

俺「じゃあ、そろそろこの辺で」

ちょっと変な間があいてから嫁が

嫁「あの、やっぱりメアド交換お願いできますか?」

嫁「カメラのこと教えて欲しいんです、迷惑にならないよう気をつけますから」

俺「・・・・・・・・・・無言」

やっぱり連絡先教えるのは抵抗がある、それが嫁だろうが他の女性だろうが。

嫁「やっぱり駄目ですよね?」

無言の俺からメアド交換は無理と判断したらしい。

でも、嫁は最初の頃と違ったなかなかタフな人だったと知る、
というか本当に最初の頃と今の嫁、どっちが本当の嫁なんだ?

嫁「メアド交換無理なんですね、了解です。」

嫁「あ!たとえば今日みたいに撮影場所で偶然会えたら質問してもいいですか?」

この人めげない、くじけない。
なんというか申し訳気持ちになってきたけどやっぱり連絡先交換は怖い。
でも、こうやって会ったのも何かの『縁』みたいなもんだよね、
死んだ両親や爺ちゃんにも「人との縁は大事にしろ」って言われて育った俺は嫁にこう言った。

俺「縁があればどこかでまた会うかもしれないですね、その時はどうぞ」

嫁「縁・・・ですか??」

俺「はい、縁があればまた会えるかと」

嫁「・・・・・・・・・・・」

嫁「なんかそういうのいいですね~」

破顔一笑 このときの顔は今でも覚えてる。
この人は泣き顔はブッサイクだけど笑顔が似合う人だと思った。

嫁「私、次に会えた時にはもっと上達してますからまた色々教えてください。」

嫁「縁があれば会えますもんね」

俺「ええ~縁があれば」

嫁「ぷっwww」

嫁吹き出した、何かが彼女のツボにはまったらしい。
なんとなく俺も嫁への警戒心が薄れてちょっと聞いてみた。

俺「そういえば、あのとき○○さん置いて帰った彼氏?はどうなったの?」

嫁「あ~事情わかった父に呼び出されてました」

俺「あ~~~~~」

色々と想像する。

嫁「え~~~~~」

俺の想像に同意したんだと思う。

俺「色々と大変だったね、親父さん相手ならね」

嫁「はい、父は私のことになると過剰に反応しちゃって。。普段はあんな感じではないんですけど」

俺「やっぱり殴ってた?」

冗談気味に聞いてみた。

嫁「・・・・・はい、泣いてましたね元カレ・・」

気まずそうに返答。

俺「そりゃあそうだw」

嫁「父にも怒られました。あんなヒョロい男と付き合うお前も悪いって」

嫁「あいつと較べて前の奴は誤解で殴ったけど泣きも喚きもせず骨あったなとか言って母に怒られてました」

俺「あ~~~」

ちょっと微妙な笑い、やっぱりあの親父は変な人と納得した。

そんな会話も終わってそろそろ休みたくなったので嫁に

「そろそろ仮眠します」

と告げた。

嫁「あ!はい、ホントにありがとうございました。私も帰りますね。」

俺「それでは帰り気をつけてください。」

嫁「はい、ありがとうございました。」

ペコっと頭さげてからカメラをリュックに詰め込んで帰り支度はじめた。
カメラ、食糧、テントなど装備重量はたぶん10キロから20キロ内くらいだから
嫁はそれを担いで雪の中1時間弱も徒歩でここまで来て、
これから帰るのだから根性あるなぁと思った。

リュックを担いでからこっち向いて

嫁「それでは帰ります、ありがとうございました。また縁があれば」

と笑いながら言った。

俺「はい、気をつけて」

そして嫁は帰っていった、俺はそのまま寝袋に潜り込んで2時間程度仮眠してから帰った。
それから冬の間に何度か撮影に出かけたが嫁に会うことはなかった。

そして、冬が過ぎて春がきた、この年はうちの会社では
3年ぶりに新入社員が入社して新人教育やいつもの仕事で忙しい年になった。
トミさんの姪は専門学校卒業して地元の企業でOLしてるらしい。
長老は最近腰が痛いらしく現場より新人教育がメインになりつつあった。

夏はいつものよう休みにロードバイク乗って出かけて風景撮影するのを楽しんでいた。
この年からブルペという時間設定内に決められた距離を走破する競技を
初めてよりロードにハマるようになった。
ブルペにハマると荷物を如何に少なくするか考えるようなった、
今までは一眼カメラをバックパックに入れてたけどやはり重い。

ブルペ用にコンデジかミラーレスカメラ購入しようと9月頃に
カメラショップへ興味のある機種の実物を見にいった。
カメラコーナーは圧倒的に中年率が高い、あまり若い人はいないのが特徴なのかもしれない。
興味ある機種を実際に触ってカタログ数値をみてまた触るを繰り返して
候補を2つに絞った。あとは値段との相談でどちらか購入しようと思った。

購入カメラを2つに絞ってからカメラショップを出て近くのスタバで休憩することにした。
休日のスタバは若い男女と声の大きいオバちゃん率が高いと思う、
中年のオッサン一人での休日スタバは隅っこがベストポジションだと常々思ってる。

スタバでカフェモカ飲みながら購入検討中の2台について価格コムのレビュー読んで情報あつめた。
軽さではやはりコンデジ、レンズ交換して自分の思う撮影するならミラーレス
値段はコンデジがやや安いくらい。結局ミラーレスに決めた。

スタバでボーッとしてると

「若ちゃん!」

と声をかけられた、声の主はトミさんの姪だった。

姪「若ちゃん何やってるの?スタバいるなんて珍しいね」

俺「おう、久しぶり。OLはどうよ、ちゃんとやってるか?」

姪「うん、まだ大丈夫、お局さんグループもないしね。」

俺「ふーん」

姪が対面に座った、まだ話し足りないらしい。コイツはいつも
自分のペースで行動するけど不思議と苦手ではない。

姪「若ちゃん最近はロード乗ってるの?オバちゃんが最近若ちゃん忙しいって言ってたけど」

俺「忙しいけど休みはあるからね、最近はブルペにはまってるよ」

姪「マジで!凄いね」

俺「そんな事ないぞ、ブルペ参加者は若い人よりオッサン率高いし女性でも参加してるぞ」

姪「へぇ~そうなんだ、私でもできる?」

俺「慣れればいけるんじゃない?でも好きでなければ辛いだけだろうな。」

姪「そっかぁ~」

姪は誰かと待ち合わせがあるらしく、少し話した後で席を離れた。

俺も先ほどのカメラショップに戻り購入を決めたミラーレスカメラを購入した。
ついでにそれを入れる小さいバッグも買うつもりでバッグ展示コーナーへ足をむけた。
カメラバッグ全体に言えることだけど質実剛健なデザインばかりで
もう少し洒落っ気のあるものないかと物色していた。

なんとなく気になるバッグが下段に陳列されていたので中腰に屈んで手にとって見ていた。

「こんにちわ!」

後ろから声をかけられた。

「ん??」

と振り向いた。

ふりかえると声の主は・・・

新入社員のO君だった。我が社期待の新人君で社員にも現場の人達にも受けがいい。
学生時代は野球部で長身で鍛えられたスッとした爽やか君で
出入り業者の受付さんにも人気らしい。
ちなみにトミさんは密かにO君と姪はいいカップルになるんじゃない?と以前言ってた。
確かに二人が付き合えばお似合いかもしれないなど考えつつ

俺「おう、O君か、君もカメラやるの?」

O君「いえ、僕はやらないんですけど今日は従姉妹の付き添いなんですよ」

俺「へぇ~従姉妹さんカメラ趣味なんだ」

O君「結構、本格的にやるらしいですよ」

俺「へぇ~そうなんだ」

O君「俺さんもカメラ趣味ですもんね。気が合うかもしれませんよ。」

O君「従姉妹から見ても結構美人ですから紹介しましょうか?」

俺「いやいいよw」

O君「そうですか?従姉妹フリーですから興味あればいつでもどうぞw。俺さん硬派ですもんね」

俺・・・・お前も女の一面を垣間見たら
そんな事言えなくなるぞと思いつつ愛想笑いでその場をごまかした。

O君「それじゃあ、そろそろ俺行きますね。」

俺「おう」

結局、買いたいバッグはないのでカメラだけ購入して帰宅した。

それから色んな場所で撮影したけど写真投稿サイトへはアップせずデータだけが溜まっていった。
単に忙しくて編集する時間なかっただけなのだが、久々にログインしてみた。
投稿した過去の作品へいくつか新規コメントがついてたけど
特に気もせずお礼だけ書き込んでログアウトした。

こうして秋は過ぎて冬がきた。
嫁と初めて会ってから2年が経過していた。

冬が到来すれば年末までに片付けないといけない仕事が溜まるのでより忙しくなる。
12月にかけてはとにかく忙しかった。3人採用した新入社員も
全員無事やめることなく働いてるのがなによりだった。
決して多くはないけど昨年度より少しだけボーナス支給額出せたのも
会社にとっては嬉しい事だった。
死んだ親父に社員への感謝は絶対忘れるなと言われてたから
少ないけど昨年より支給額多かったのはなんとなく自分の自信にも繋がった。

正月休みはいつも通り1人正月で今回の休みでは撮影に出かけなかった。
ゆっくりとゴロゴロと過ごしていた。俺にとっての冬の撮影本番は
1月下旬から2月にかけてだからこの時期は特に撮影意欲もあまりなかった。

1月下旬に入り天候も落ち着いてきたのでいつもの場所へ撮影いく準備始めた。
今回は有給もとって4泊5日で予定組んだ。
この頃にタイムラプス撮影というのを始めたので
出来るだけ長い期間あの場所に滞在して撮影したかった。

カメラとテント、着替え、食糧などリュックに詰め込み車であの場所へ向かう。
ちなみにこの年に撮影用に車購入したんだけど雪の走破性考えた結果、
撮影用にジムニー購入した。

仕事おわってから出発したので当然、到着は夜。
駐車場に車とめてリュック担いで徒歩1時間、見慣れた光景だけど気分のおちつく場所に到着。
何年間も通ってるけどホントにこの場所が好きで、ここで撮影するために
1年間仕事してるのかもしれないと思う。
1年頑張って数日だけ気に入った場所で好きなだけ撮影するのが俺の最大の楽しみ。
その日は仕事明けな事もありテント張って食事とって寝袋にはいり寝た。

翌朝、快晴。この場所が好きな理由のひとつにここから更に奥に入ると
川が流れていてその川にシカがよく出る。親子連れや子シカが多く
気づかれないように撮影もやるのが楽しい。
夜の撮影まで時間タップリあるので奥にはいってシカ撮影を試みることにした。

非常食とジェットボイルと水1.5リットルとカメラ機材をリュックにつめて出発。
往復2時間、撮影で3時間くらい予定して戻ってくるのが晩7時位か。。
こうしてシカ撮影に出発した。

勇んで出発したシカ撮影だけど結果は惨敗、3時間近く粘ったけどシカ現れず。
周囲の景色撮影しながらシカ待つが今日は駄目な日らしい。残念ながら撤収。

メインイベントは夜の撮影なのでテントまで戻る。
テントに戻りアンダーウェアを履き替えて仮眠をとる。
2時間くらい寝れば9時位だから撮影にはちょうどよい時間。
予定とおり9時過ぎに起きて飯を食う、テントから出ると満点の星空で
俺以外には誰もいない最高の条件。
思う存分、好きだけ撮影して2日目終了、寝袋に入り込んで寝る。

3泊目の朝、快晴今日もシカ撮影に出発。
今回は親子連れのシカが撮影できた、川の水で流れてくる何かを食べている。
川周辺の土が凍らないので餌を取りやすいのかもしれない、
周辺の木もシカが食べて木の皮が剥がれているのがおおい。

撮影終了でテントに戻りまた仮眠、起きてから撮影準備して撮影開始。
今回はタイムラプス撮影もするので楽しみ、一定の位置に
カメラ固定するので手持ち無沙汰ではあるけど
お菓子食ったり珈琲飲んだりして一人の時間楽しんでた。

暫くすると足音が聞こえてきた。
確実にこの場所に近づいてくる足音、他の撮影者かぁ~1人の時間も終了、
残念と思いながらちょっとだけ去年の嫁との会話思い出した。

俺「縁があれば」

連絡先も交換せずこの1年互いに連絡もしていない、二人の共通点は
ここだけなんだよな~と考えたりしながら足音の主が到着するのを待っていた。

足音が近づき、足音の主は俺と反対側へ荷物おいてテント張り出した。
前にも書いたけど誰かが撮影中はライト照らさないのが夜景撮りの鉄則だと俺は思ってる。
テント張りに苦戦してるのか相手はテントまだ張れてない様子だった、
そこで撮影一時中断して相手に聞こえるように伝えた。

俺「撮影中断したのでライト点けてOKですよ~」

カメラの撮影とめる。

相手がライト点けた。。。

相手がライトを点けてテント設営してる間、俺はテントで休憩することにした。
テントで珈琲飲んで休憩することにして小1時間ほど寝袋に入って仮眠、起きて外にでると身を刺すような寒さで急いで上着を重ね着する。
撮影再開するけど寒いので短時間でカメラ撤収。こうして3日めが終了した。

4日め、昼頃に目覚めて飯を食いシカ撮影の準備をする、起きた時間が遅いので
向こうについてもそんなに撮影時間とれないけど行く。
テントから出ると昨日、到着した人もタイミングよくテントから出てきた。

俺「こんにちは」軽く会釈

相手もこっち見てる、近づいてくる。俺この時点でなんとなく予感した。

嫁「俺さんですよね?? ○○です。」

やっぱりそうだった。

この時は前回のように怖いとか猜疑心とかなくて古い友人に会うとか
懐かしい気持ちの方が大きかったと思う。

俺「あ~○○さん、お久しぶりです。カメラ続けてたんですね」

前よりも普通に会話できる。

嫁「もちろん続けてましたよ!今年もここに来るって決めてカメラ続けてました」

なんとなく俺と似てるなぁ~と二人共この場所が好きなのは共通してると思った。

嫁「俺さんいつからここに来てたんですが?」

俺「今回は4泊5日で今日が最終日ですね、明日帰ります。」

嫁「そうなんですか~私は2泊3日だから今日は一緒ですね。」

俺「そうですね、あれから色々撮影行ったんですか?」

嫁「はい!○○とか○○とか××にも行ってきましたよ」

嫁の口からでる地名は有名な撮影スポットばかりで
この1年間で如何に嫁がカメラにはまってるかを証明していた。

嫁「俺さん毎年、撮影に来るって言ってたので今回もいるかな?とちょっと期待してました」

嫁「冬の撮影だと時期限られてくるから同じ場所なら会えるかもしれないですよねw」

嫁はすっかりカメラ女子になってました、天候読んで行動するとか大したもんだ。

嫁「そういえば覚えてますか?」

俺「???」

嫁「縁があれば会えるって去年いいましたよね。」

俺「あ~はいはい、言いましたね。」

嫁「縁がありましたね」ニカッと笑った。

嫁「俺さん4泊もして日中はどうしてるんですか?テントで寝て過ごしてるの?」

俺「いや、この奥でシカ撮影に行ったりして今回も日中はずっとシカ撮影に行ってます。」

嫁がくいつく

「シカですか!この奥にはシカ撮影できる場所あるんですか!」

嫁のアグレッシブさも昨年から成長してるようでした、
カメラ始めると大胆になる人おおい気がするけどどうだろう?

俺「ええ、この先1時間くらい歩きますけどシカ撮影できる場所あるんですよ、今日もこれから行きます」

嫁「私もいいですか!すぐ準備しますから!すぐなんでちょっとだけ待っててください。」

俺「え!いや構わないけど大丈夫?」

嫁「大丈夫です、迷惑かけませんから」

俺「あ、じゃあ待ちますから準備どうぞ」

嫁「了解です、すぐ準備しますから」

嫁の準備は早かった、ものの数分でリュックに機材詰め込んで準備してきた。
俺は念のため非常食と水追加してリュックに詰め込んだ。

俺「じゃあ行きますか?」

嫁「はい!シカですよ~シカ撮影ですよ~」テンション高い!

嫁と共にシカの出る川原まで1時間ほど歩いて行く、天気も良いので気分もよい。

嫁は動物関係の撮影はやったことがなく思いがけずシカ撮影できて
ラッキーだと喜んでいる、この1年で色んな所に撮影行ったけど
カメラは面白いし難しい、でもそれが楽しいと言ってた。
男女とわずカメラはじめると同じなんだなぁと聞いていた。

嫁はよくしゃべった、今回の準備で追加した装備の話、毎回撮影に出るたびに
父親を宥める必要があるとか、母親は私がカメラはじめて行動的になったから
応援してくれるとか、嫁にとってはカメラはじめたのは良い事だったらしい。

嫁は俺のことは詳しくは聞いてこない。あえて聞かないようにしてるのかもしれないけど。
なんとなく俺が会話下手なの察しているんだと思う。

嫁「そういえば俺さん最近は作品投稿してないですよね?」

俺「うん、昨年は忙しくて撮影だけで編集とか手付かずなんだよね」

嫁「そうそう、編集といえば」

というように嫁の会話は途切れることなく続く

1時間の徒歩があっという間に終了し撮影場所へ到着。
嫁には川原に近づかないこと、物音や声は出来るだけ立てないようすること、
シカが現れない場合もあるから過度に期待しないように伝えておいた。

今回は嫁が初の動物撮影なので、ここ数日俺が撮影につかっている場所を
嫁に譲った、撮りやすい場所。
俺は嫁から少し離れて撮影場所にカメラ設置。
嫁から設定数値参考にしたいと質問されたので教えて
あとは各自それぞれの場所でシカでるまで待機した。

待つこと30分くらいだろうか?昨日撮影したシカの親子が出てきた。
嫁には事前に撮影対象でシカ親子でるから撮れるかもと伝えておいたけど
嫁はすばやくカメラに近寄って撮影開始。
俺も嫁が撮影開始したのを確認してから撮影開始。

時間にして10分もないけどシカ親子の撮影に成功。
その後はシカ1頭撮影してタイムリミット、嫁に撤収伝えてテント場所へもどることにした。

撮影成功した嫁は行きと同じくテンションが高く喜んでいた。
そんな嫁みてシカ出てきてよかったなぁと俺も喜んだ。

テントに戻って解散して各自テントに入る、いつもこの後は仮眠して飯食ってから撮影する。
嫁も同じようでテントで休んでから夜撮影すると言ってた。
嫁からの提案で仮眠後の晩飯を一緒に食べようと誘われた。

俺「晩飯っていってもインスタントものばかりだけど・・」

嫁「私もですけどせっかくだし一緒に食べるほうが楽しいですよ~」

いえ、逆に緊張します。。。

それでも断る理由もないのでOKして仮眠とることにした。
小1時間ほど寝てテントから出るけど嫁はまだ外にはいないのでまたテントに入った。

それから暫くして嫁がテントに近づいてきて

「俺さん起きてますか?」

と言ってきたので

「起きてます」

と返答。

テントから出るとテント前で嫁がニコニコしながら食糧とストーブもって立っていた。
ホントに最初の頃の嫁は誰だったんだ?と思うほど嫁は違ってみえる。

少し風が強くなってきたので調理の火力調整が難しくなりそう、
各自がテントで自分の食事とればいいんだけど嫁がそれはイヤだと言う。

ちょっと手間だけど雪洞ほって中で食べる?と嫁に聞くと
やはりニカッと笑ってそうしようと快諾。

イザという時のために装備は万端なので折りたたみスコップでテントの横に
1メートル程度の竪穴を掘ってそこで座る場所も作って二人で雪洞に入り込む。
頭には風あたるけど体には風あたらないので調理しやすい。

嫁もインスタント類で俺は棒ラーメンと乾燥野菜。
ジェットボイルで湯を沸かすと嫁が

「お~お湯出来るの早い」

と驚いてた。ちょっと量がたりないのでもう1品追加することにした。

俺「もう1品食べるけど食べますか?」

嫁「あ~いいですね~何たべますか?」

乾燥野菜がまだ残っているので非常食のスパム刻んで野菜炒めにすること決定。
俺作るからとスパム出して乾燥野菜と一緒に炒める、嫁はジェットボイルで
お湯わかしてインスタントの卵スープ準備してスパムの野菜炒めと
卵スープの2品を二人で食べた。

食事も終えて片付けた後は撮影開始、残念なのが風が強くなっているので
雲の流れも早く星撮影にはちょっと厳しい状況。
翌朝まで時間はあるのでテントで休憩とりつつ撮影することにした。

嫁は休憩せず外で撮影するらしい、
こちらと適度な距離感保ってくれるので自分のペースで撮影できる。
休憩してテントから出ると嫁はまだ撮影中、俺の姿確認するとこちらに近づいてきた。

嫁「駄目ですね~雲の流れが早くて星隠れちゃいます・・」

俺「やっぱりそうなんだ、昨日までは天候良かったんだけどね。」

嫁「せっかく撮影に来たのになぁ・・・」

と残念そう。

俺「まぁ、こういう日もあるよ。テントで少し休憩して時間経ってから再開してみれば?」

嫁「そうですね。。そうしようかな体も冷えたし」

そして嫁は自分のテントに戻っていった。

俺は星撮影は充分満喫したので別の撮影することにした、
小型のLEDライトを幾つか持参したので嫁が休憩している間に
ライトをテントにむけて暗闇にテントが浮かび上がるようなイメージの撮影を始めた。
これなら天候に左右されないし雲がかかって暗くなるほうがよりテントが照明で浮かび上がる。
色んな位置から撮影してると嫁がテントから出てきた。

嫁「俺さん何してるんですか?え~なにそれ」

嫁「テントに照明あてて撮影してるんですか?」

俺「そう、うまく行くか分からないけどアウトドアメーカーのカタログにこんな感じのあるからイメージはそれ」

嫁「すごい。。。やっぱり俺さん凄いですね。」

俺「いやそんなことないから」

嫁が遠巻きに眺めてるのが気になるので嫁に

「嫁さんもやってみる?」

と促した。

嫁「いいんですか!やってみたいです」

とテントにカメラ撮りにいって戻ってきた。

今度は設定とか教えずに嫁の好きなように撮影してみてと伝えて
暫し嫁の撮影を眺めることにした。
嫁はカメラもって移動繰り返しながらいくつか撮影しては首かしげてる。

俺「どうしたの?うまく撮れない?」

嫁「う~ん上手くいかないですね~見てもらえますか?」

嫁の撮影した画像を嫁のカメラで確認するけど見づらい・・・
すると嫁がSDカードをipadに取り込めば見れますかね?と言った、
リサイズすれば見れるかもしれない。
そう伝えると嫁はカメラとipadを持参して俺のテントに来た。

嫁がipadにデータ読み込ませてる間、俺は珈琲のむ準備してた。
なんとなく緊張する。決して広いとは言えないテントで嫁と二人かぁ。。。

嫁「読み込みできました!これです」

とipadを俺に渡す。

ipad で見た限りでは嫁は露出やシャッタースピードなどまだ手探り状態のようで
普段はプログラムモードで撮影してるんだろうなと推測した。
そこで俺ならこう撮るという感じで教えて嫁も分からないこと質問する、
俺答えるという感じでテントで過ごした。

なんというか嫁といるのが居心地よいと感じる自分がいた。
最初の嫁ではなく今の嫁に対してだけど趣味が同じで好きな被写体も一緒だと
異性でも意気投合するんだなと認識できた。

嫁のリアクションも素直で教え甲斐があるのも理由のひとつだと思う。
風はドンドン強くなるので今日はもう撮影無理かもしれないなぁと考えてると嫁が話しだした。

嫁「あの・・俺さんにはホントに感謝してます。あの時助けてもらったのに失礼な態度でホントにすみませんでした。」

嫁「あの頃は就職活動も上手く行かなくて好きでもない人と付き合ってワガママな事言って嫌な人間でした。」

嫁「元カレも私のワガママに付き合わせてホント迷惑かけたと思います。。父にも殴られたし」

嫁「俺さんは助けくれたのに失礼な態度とって私がちゃんとしないから父が誤解して俺さんに怪我させて」

嫁「俺さんが帰った翌日に母に助けて頂いたことちゃんと説明したら怒られました。」

嫁「いますぐ俺さんに謝らなといけないから電話番号おしえなさいって」

嫁「連絡手段なにもないって言ったらアンタそんな常識ない子だったの!って更に怒られて」

俺「・・・・無言」

俺「いや、その事は本当にもういいよ。2年前の話だよw」

そうなんだよ。遭難した嫁を見つけたとき俺は30歳、嫁は21歳、今は俺32歳、嫁23歳になってた。
その間で会ったのはたったの3日間、互いに連絡先の交換もしてないけど
今こうして一緒に出会った場所にいる。

すごい不思議で凄い縁だと思った。

俺・嫁「なんか不思議な縁だね~ですね」

会話がダブった。

二人して笑いあった。
こういう風に女性と笑い合うのは久しぶりで嫁の笑い顔はいいなぁと思った。

しばらく笑ったあと嫁が言う。

嫁「父が・・ああいう人ですけど本当は涙もろくて情の厚い人なんです。」

嫁「誤解して殴ったこと反省してるんですが意地っ張りで私と母が謝罪しろって言っても全然駄目で」

嫁「俺さんにお詫び送ったときに封筒にお金入れたのも父なんです。」

俺「もういいよ、ホントに終わったことだし。殴られた怪我も大事に至らなかったし気にしないで」

といいつつも金包むより手紙一通でも謝罪するほうがいいのにとも思った。

なんとなく嫁の親父は情が厚くて単細胞なんだと思えば
今までの嫌な気分も無くなって行く気がした。

俺「親父さんには気にしてないですって伝えておいて」

嫁「あ!もし気にしてるとか伝えれば器の小さい男だな、とか悪態つくと思います・・・・」

やはり嫁親父とは分かり合えないと確信した。
外の天気はますます荒れて風がドンドン強くなる、
テントを風が叩いて結構テントが左右に揺れる。
そろそろお開きにするかという時間になったので嫁にそろそろ休みますか?と伝えた。

嫁「え!ここですか?」

俺「違う違う、君も自分のテントで休みなさいという事」

どんだけ飛躍するんだよと俺狼狽。

嫁「そうですよねw」

俺「当たり前ですよ」

そして嫁も自分のテントに戻っていった。嫁との会話でなんとなく
ホッコリした気持ちで寝袋に入った。

どのくらい寝ただろうか?外で嫁が俺に呼びかけている。
風が更に強くなったようでテントが揺れていた。

俺「はい、どうしたの?」

嫁「俺さ~ん、どうしよう・・・」ちょっと焦ってる感じ?

寝袋から出てテントの外に出ると強風だった。嫁が立っていた。

俺「どうしたの?」

嫁「テントが。。。私のテント」

と嫁が指差す方向を見ると嫁のテントのフライシートがない!

嫁「風で持って行かれました・・・」

???? だってペグで固定してたんじゃないの?と確認すると

嫁「はい、付属のペグで雪に打ち込みました」

と言う。

ああ~なるほど、付属ペグ雪に打っても固定力弱いの
初心者の人だから分からないわな。納得

とりあえずこの状態では嫁のテント使い物にならないのは分かった。
さてどうしようか・・・・相変わらず風強い。

フライテントが吹っ飛んで嫁のテント本体だけではこの風では心もとないのは確実。
夜明けまでまだ時間あるし今日は駐車場まで歩いて帰る、
場合によっては強風の中あるく必要があるから睡眠とって体力回復させておく必要がある。
そうなると解決方法はひとつしかないんだけど、、
口に出すのに勇気がいるというか誤解されないかな?

俺「あのテントじゃ寝れないよね?」

嫁「はい、風が入るし寒くて無理です。」

俺「だよね~、非常時だから俺のテントで寝ますか?」

嫁「え!」

嫁固まる そりゃあそうだよね。。。

嫁「俺さんは何処で寝るんですか?」

う~んどうしよう。。と考えつつ解決策を2つ提示した

俺「さっき食事で掘った雪洞に寝袋もっていって寝るよ幸い風は避けられるし俺の寝袋温かいから」

俺「雪洞にはいって上から嫁さんのテント被せれば風よけにもなるし」

嫁「駄目です!それなら私がそうしますよ。」

いやいや嫁じゃ無理だから・・・

俺「無理だよ、明日帰るのに少しでも寝ないと、体力は俺のほうがあるから俺雪洞の中で寝るよ」

嫁「駄目ですって」

俺「しかし。。。」

嫁「せまいけど俺さんのテントで一緒でいいじゃないですか!」

それは嫌だー!!俺が寝れなくなる。

押し問答の末、俺のテントで一緒に寝ることになりました。
嫁結構親父さんの影響強いようでした。もちろん別々の寝袋だけどね。

俺のテントに自分の荷物、嫁の荷物まで入れると狭すぎるので
荷物は雪洞にいれて雪よけに嫁のテントを被せて置くことにする。
とりあえず嫁を先にテントにいれて荷物の移動と嫁テントを雪洞にかぶせる作業する。

作業おわってテントに入ると嫁が

「お疲れ様でした、ホントごめんなさい」

と言ってきた。

「大丈夫だよ」

と伝えて自分の寝袋に潜り込む。

嫁も寝袋に潜り込んで互いにテント側を向いて寝る。風が強く緊張してなかなか寝つけない。
明日は天候回復したら嫁のフライシート探さないとなぁと考えていた。
嫁とひとつのテントで過ごすという状況に最初は緊張していたが
嫁も俺も日中はシカ撮影、夜も撮影と動いていたおかげか
睡魔が来て何事もなく二人共就寝、翌朝を迎えた。

早朝まだ寝てる嫁を起こさないようにそっとテントから外に出る。
風はあるけど昨夜より静かなのでこれなら帰宅時は問題ないと一安心した。

嫁が寝てる間に昨夜飛んでいったフライシート回収にと
嫁がテント張っていた場所から更に奥の林に入って捜索。
風で飛ばされてもたぶん林のどこかで引っかかってるだろうと予測したけどビンゴだった。
10分程度の捜索でフライシート回収してテントに戻る。

嫁はまだ寝てるようなので雪洞に入り自分の荷物から携帯食と
ジェットボイル取り出して軽くつまみ珈琲のむ。

時折風が強くなるのでフライシートと嫁テントを雪洞にいれてから
テントにそっと戻る、嫁熟睡中で気付かず。
俺も自分の寝袋に入り込み二度寝する。しばらくして嫁に起こされる。

嫁「俺さんいつまで寝てるんですか?そろそろ起きて下さい。」

俺「はい」

二度寝のほうが寝起き眠いのは俺だけではないはず。

嫁「まず昨日飛ばされたフライシート探さないと駄目ですよね、見つかるかな?」

俺「見つけて雪洞にいれてあるよ」

嫁「え!」

俺「朝早くに目が冷めたから嫁さん寝てる間に散歩がてら見つけて回収してきた」

嫁、テントからでて雪洞を確認。

嫁「ホントだ!俺さんありがとうございます。」

俺まだ寝ぼけ中でのっそりとテントから外へ出る。

嫁「俺さん、私のテント探すのに早起きして探してくれたんですか?」

俺「いや、たまたま早起きしてついでだから」

嫁じっと俺見てる。

その時の俺は4泊5日風呂なし髭剃りせず、帽子の下は寝癖で爆発、脂ぎった髪の毛だった。
街中でこの容貌だったら不潔と言われると自分でも思う。

嫁「俺さんはいつも私が困ってると助けてくれます」

その言葉はこの姿の俺は言われるのが恥ずかしかった。

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俺「ホントたまたまだから気にしないで直ぐに見つかったしね」

嫁「はい、でもありがとうございます。」

それよりも腹減ったので食事たべようと嫁に言うと嫁が作ると言う。
それではお願いしますと伝え、俺は顔吹きシートで顔を拭きテントに残した水で歯磨きをする。
嫁は残り物のインスタントや材料使って朝食つくり、
上機嫌らしく鼻歌も聞こえてくるが残念ながら俺には分からない。

嫁「俺さんご飯できましたよ~」

俺「いま行きます」

雪洞に入ると嫁ニコニコしてる、朝からテンション高いなぁと思いつつ嫁の作った朝食を見る。

インスタントのパスタにレトルトのジャコ飯、インスタントのスープと
ドライフルーツ盛り合わせ、そして嫁が家で作って持参していたパウンドケーキの残り。
和洋折衷、どれが主食でどれがおかずなのか悩む高カロリー炭水化物メニューが並んでいた。
後に判明するが嫁ががっつり飯食う派の人だった。

嫁「俺さんどうぞ!」

俺「いっ・・いただきます」

やはりお残しは許しませんでぇ~だよな。

食べ慣れてるインスタント食品も二人で食べると美味しいですね~と
言いながら嫁の食欲は止まらない。俺よりもペース早く消化していく。。

最後のデザートのドライフルーツ盛り合わせは帰りの非常食にと言い訳して保存することにした。
この時点で風はあるものの天候は崩れていないので
順調にいけば昼頃には駐車場につくはずと嫁に伝えた。

嫁「シカ撮影は無理ですかね?」

俺「う~ん、天気が落ち着いてれば出来るかもしれないけど、天候崩れたら帰るときヤバイから」

嫁「そうですよね。。残念だけど仕方ないですね」

俺「まぁ、次の機会に取っておけばいいよ」

特に意味もなく言っただけだった。

この言葉に嫁が食いつく。

嫁「次っていつくらいですか?また俺さんも一緒に撮影付き合ってくれるんですか?」

嫁「次一緒なら連絡先交換したほうが良くないですか?日程とか時間とか相談必要じゃないですか?」

嫁、怒涛の押し切りで攻撃してくる。

俺「えっと、嫁さん撮影のときは俺いたほうがいいですか?」

嫁「はい、もちろんです」

俺「場所はここがいいですか?」

嫁「ここ私にとっては凄く大事な場所なのでここがいいです」

俺「え~っと来年とか?」

嫁「待てません!」

確信した、嫁には親父の遺伝子が受け継がれていると。

嫁「駄目ですか?また撮影できる期間でここで撮影できないですか?」

俺「・・・・・・・無言」

正直、嫁と撮影するのは楽しいけど
偶然あって同じ場所で泊まり込み撮影するのと、約束して泊まり込み撮影は
意味合いが違うような気がしないでもない。形を替えたお泊り旅行みたいじゃないか・・・
それをする関係なのだろうか?

それが当たり前の関係になると言う事は俺にとっては重要なことで・・・
悩む、すぐには回答できない。

俺「ごめん、すぐには答えられないからちょっと時間ください、帰るまでの間で回答するから」

嫁「・・・そうですよね、ごめんさない。つい俺さんに甘えてしまって。回答はいつでもいいですよ」

ちょっと変な間が生まれてしまった。
その後は朝食片付けてテントや機材を片付けパッキングして帰り支度を互いにはじめた

パッキング終わって駐車場に向かって歩きだす。二人共微妙な空気で朝ほど会話も弾まない。

駐車場に着くまでに次の撮影とかメアド交換とかどうするか
答え出さないと嫁に失礼だよな。

つくづく自分は女性に関してはヘタれだと思う。嫁が好意もってるのか?
純粋にカメラ好きで俺といるのか?
その辺の境界線がわからないし踏み込む度胸もない。

でも嫁といる時間が居心地よくなってるのも事実なんだよ。
そんな事考えながら駐車場まで歩く。

嫁「撮影いいですよ、また今度でいいですから」

俺「まだ考えてます。」

嫁「何を?」

俺「撮影のこと」

嫁「それだけ?」

俺「・・・・・・・無言」

嫁「いい天気になったね」

俺「うん・・・」

嫁「月は見えないけど空はキレイですね~」

(なんのこっちゃ?)

会話してもしなくても嫁といる時間は心地よい、嫁もそうなら嬉しいな。素直にそう思う。
口下手というのはイザという時、どう伝えればいいのか分からないことがおおい。

駐車場についた。ヘタれなりに嫁に伝えるか。それで駄目なら仕方ないな。腹くくった。

駐車場についてあとは互いに帰宅するだけ。嫁も何となく手持ち無沙汰な感じ
縁があって再会できたのだから次は自分が縁をつなげる番と腹くくる。

俺「ちょっと待ってくれますか?」

嫁「はい?」

車の中に置いてる仕事服から名刺取り出し裏に自分の携帯番号とメアド書き込む。

俺「あの、これオレ個人の連絡先です。次の撮影OKならいつでも連絡ください。返信は必ずするので」

嫁「いいんですか・・・私邪魔じゃないですか?撮影とか」

俺「こちらこそ嫁さん迷惑でなければ連絡ください」

嫁名刺受け取ってくれた。

嫁「じゃあ、私の連絡先も教えますね。ちょっと待って下さい。」

嫁も車に戻っていく。

prpprpr・・・携帯が鳴った。

俺「もしもし?俺ですけど」

嫁「これが私の連絡先ですよ~えへへ」

嫁、車から電話してきた。

俺「はい」

嫁「宜しくお願いします」

俺「こちらこそ宜しくお願いします」

ヘタレには電話番号交換が精一杯だった。。。

その後、連絡先交換した俺と嫁の間が急速に進展した・・・・という流れにならなかった。
俺メール苦手だしメールのきっかけないとメールできないタイプ
嫁は俺からのメール待ってる、きっと忙しいんだなと気遣うタイプ

連絡先交換して俺から連絡することなかった。
早朝出勤、深夜帰宅で家にいる時間帯だと嫁は休んでる。
メールで気の利いたことも送れない、ヘタれにはメールのハードルが高かった。

連絡先交換から1週間くらい経過して嫁から週末に電話きた。俺すぐにとる。

嫁「もしもし俺さんですか?○○です。」

俺「はい、お久しぶりです」(俺は浮かれてた)

嫁「あの、いつ撮影にいくんでしょうか?忙しいなら忙しいって言ってくれればいいのに」(若干怒り気味)

俺「すみません、電話しようとしたんですけど早朝出勤、深夜帰宅で電話かけるタイミングが」

嫁「メールという便利なものがあります」

俺「おっしゃる通りです、すみません」

嫁は怒ると怖いと、このときに認識した。

嫁「今日はおやすみなんですか?ご自宅ですか?」

俺「ええ~、久しぶりに休みで洗濯してました。」

嫁「俺さん一人暮らしですか?」

俺「そうです。実家住まいだけど両親は他界してるので」

嫁「あ!ごめんなさい」

俺「いえいえ、もう何年も前ですから」

ーーーーーーー沈黙ーーーーーーー

嫁「今日はこれからご予定ありますか?」

嫁「今日はこれからご予定ありますか?」

俺「いえないですよ、洗濯したらフリーです」

嫁「じゃあ、買い物一緒にいきませんか?そのときに撮影の打ち合わせできますか?」

俺「大丈夫です、じゃあ時間決めて待ち合わせしますか?何時頃がいいですか?」

嫁「じゃあ、時間決めたらまた電話するのでそれでもいいです?」

俺「OKです。」

その後、数分もせず嫁から電話きた。
午後3時頃にとあるアウトドアショップに行きたいとの事。

俺「じゃあ、店の駐車場で待ち合わせでOKですか?」

嫁「・・・・迷惑でなければ迎えとかお願いしてもいいですか?」

俺の脳裏に、今日は週末>週末は休み>休みは自宅に親父いるはず、が鮮やかに浮かび上がる。

俺「・・・・・無言」

嫁「私、俺さんがなに考えてる分かりますよw。父のことでしょう?」

俺「あはははは。まぁ確かに」(乾いた笑いしかでない)

嫁「さっき俺さんと買い物行くって両親に言ったんですよ」

俺「・・・・・・無言」

嫁「そしたら父が買い物終わったら俺さんウチに呼んでご飯食べようって」

あの親父と飯を食う???飯なんか喉通るわけない、無理、絶対無理。

無言でいる俺を察した嫁が、無理なら断りますか?と助け舟だしてくれた。
けど、嫁と今後さらに親しくなるのに親父の存在をスルーはできない。

週末の嫁との楽しい時間が罰ゲーム開始までのカウントダウンみたいになってきた。

嫁との買い物後に嫁宅でご飯を一緒。。ハードルが高い。
普段から1人で飯食ってるから家族の団欒とか忘れてるところあるし
気の利いた会話できないし、嫁父なら気に入らなければ
茶碗投げつけてくるかもしれないし、でも食事頂くことにした。

『嫁父と俺』書かせて頂きます。

2時半くらいに記憶を頼りに嫁自宅前に到着、嫁に電話する、嫁玄関から出てくる。
ご家族と一緒に・・・・聞いてないよ。。。慌てて車から降りて外にでる。

嫁「こんにちは。すみません迎えお願いしちゃって。」嫁は元気だ

嫁母「ご無沙汰してます、その節は娘助けて頂いてありがとうございました。お元気でしたか?」にこやか

俺「はい、こちらこそ過分な贈り物いただき返礼もせず失礼いたしました。」

嫁父腕組みして無言・・・・怖い・・・やはりヒグマのような威圧感醸し出してる。

俺、嫁父に向かって会釈。

「その節はお騒がせいたしました。」

嫁父「おう」

怖いよ。。。現場仕事にでると口や手の荒い人達も多くて慣れてるつもりだけど嫁父は別格。
怖さの次元が違う。

俺「今日は晩御飯にお招きいただきありがとうございます。」会釈

嫁母「何にもないけどゆっくりしていってね」

嫁母は終始にこやかで笑顔が嫁とそっくり。

嫁父「お前、一人暮らしか?」終始腕組み

俺「はい、そうです」

嫁父「・・・・・・無言」終始睨む、怖い。

嫁「俺さんそろそろ行かないと」嫁の助け舟がありがたかった。

嫁「じゃあ、行ってくるね」

嫁と俺、車にのって自宅前から脱出成功!

嫁と車で嫁自宅脱出後に俺おもわず

「こえぇ~」

と口にだした。嫁吹き出す!

嫁「俺さん上出来だと思いますよ、前に私捨てた元カレなんか玄関で挨拶しなかったら怒鳴られました」

嫁「俺さんはやっぱり社会人だし責任ある立場の人だからしっかりしてますよね」

あれで上出来なのか?腕組みして終始睨んできたぞ。
発した言葉は「おう」と「お前一人暮らしか」だけ。
なにも悪いことしてないのに冷や汗が背中に流れるのが分かった。

目的のアウトドアショップに到着。
嫁の目的はシェラフの下見と、新しいスノーシューの購入。
前回のでスノーシュー壊れたらしい。

嫁物色中、俺物色中、当初から俺たちは買い物するとき別行動することが多い。
目当てのものがあればお互いに意見するというのは今も変わらない。

嫁「俺さん、これどうですか?」女性用の小ぶりのスノーシュー

俺「うん、いいんじゃないですか、値段も手頃だし」

嫁「でも、プラスチックなのに1万超えるんですね。結構高い」

俺「アウトドア用品は結構するからね」

嫁「じゃあ、これとジェットボイル買います、俺さんの見てて便利だなぁと思ってたんです」

俺「ジェットボイルはこっちだね」

嫁「あれ?結構しますねw」

俺「うん、それなりにするんだよ」

嫁「う~ん、予算が」

俺「中古でよければ俺の予備あげようか?、スペアでもうひとつあるから」

嫁「いいんですか?だって高いじゃないですか、タダという訳には」

俺「いいですよ。良ければどうぞ」

嫁「じゃあ、今度なにか奢りますありがとうございます、えへへ、お揃いですねw」

萌えってこういう事なんだと実感した瞬間だった。

目的の物購入したから真っ直ぐに嫁自宅へ行けばいいのだが
時間まだ早いので近くのカフェへ。
知り合いの方が施工したカフェで、俺には場違いなオシャレ空間。

嫁は喜んで店内のアクセサリー見て回ってる。
席についてオーダーで嫁のおもしろい面が見れた。

俺「珈琲」

嫁「私は抹茶ラテ」

嫁「俺さんは何処にいても珈琲注文する人でしょう?」

俺「良く分かるね」

嫁「珈琲好きなんですか?」

俺「まぁ、そうだけど何処のお店でも飲めるし当たりハズレ少ないから」

嫁「駄目ですよw、旅行とか特別な日は普段と違うもの試してみると楽しいですよ~」

そういうものかな?男女の感覚の違い?

嫁「ウチの父はあんな外見ですけど旅行先では色んなことにトライするんですよ」

俺「それは意外だね。へぇ~」

嫁「私と母の直感ですけど父と俺さん気が合うはずです。何となくですけど」

誤解で殴る相手と、殴られて歯三本飛ばされた人間が
意気投合するという世界はどこにあるのだろう?

嫁は俺と嫁父は気が合うはずと言ってるが多分ムリ、なんというか会話の糸口みつけられない。
何か言って爆発されたらたまったもんじゃない。
でも、あの父からこの娘よく生まれて育ったなぁ・・

カフェではとりとめもない会話で肝心の撮影日の話は全然しなかった。
それよりも会わないでいた間、お互い何してたかとか
今更だけど趣味はとかそんな他愛もない話ばかりしてた。

嫁「そろそろ帰りますか?準備できてると思いますから」

俺「そうですね・・・帰りますか」

気が重いけど嫁にすれば失礼な話だよな

嫁「大丈夫ですよ、父が何か言っても私と母は俺さんの味方ですからw」

女性二人に守られる32歳独身男も情けないものがあるが、いざとなったらそうしようと決めた。
自宅のまでの道は、赤点とって母親に怒られると沈んで帰る
子供みたいな気持ちだったけど、嫁は変に自信ありげだった。

「大丈夫、大丈夫w」

嫁宅に到着、自宅前に駐車させてもらい嫁の後ろから玄関に入る。

嫁「ただいま~」

母「おかえりなさい、目当てのもの買えたの?」

嫁「俺さんとお揃いだよ。」

俺冷や汗が流れる。

母「あらあらw、良かったわね」

いまだにあらあらと笑う人を初めてみた気がする。

嫁「じゃあ、私荷物おいてくるので、俺さんは・・居間で待っててください」

俺「そうなるよね・・・そうですよね・・・」

母「ちょうどお父さんもお風呂あがって居間にいるけど」
「大丈夫今日は何もしないって約束してるから」(小声)

なるほど、嫁のイタズラっぽい茶目っ気はお母さん譲りなんだな、ちょっとほっこりした。

居間に入ると親父さんがソファに座って新聞読んでた。
なぜか作務衣みたいなの着てた。
妙に似合っていて頑固職人って感じだった。

親父、新聞読む手をとめて俺のほう見てまた新聞に視線戻す。

俺「遅くなりました、ただいま戻りました。」

親父「嫁は?」

俺「いま自分の部屋に戻られてます」

親父「ふーん」

親父 ぶっ!とデカイ屁をこく・・・台所から母親が

「ちょっとお父さんお客さん来てるのに無作法でしょう!」

と怒る。

親父「自分の家で何しようが俺の勝手だ、なぁ?」

と俺に話しかける。

俺「あはは、そうですね・・・」 

とにかく何が着火点で爆発するか分からない人だから、無難に切り抜けることしか考えてない俺。

母「用意できたわよ、じゃあ並べるから俺さん嫁呼んで来てくれる?」

俺「はい」

俺、嫁の部屋知らない ・・・・ 会ってまだ4回目、
まだ正式に付き合ってもいないのに外堀が埋まって行く気がする。

居間を抜けて廊下で

「嫁さん~ご飯ですよ~」

と何処にいるかわからない嫁に向かって話す。
それがおかしいのか母親の笑う声が聞こえてくる、親父の声は聞こえない。

嫁が二階から降りてくる。

嫁「俺さんごめんなさいおまたせしました。」

嫁「父と話ました?」

俺「親父さんオナラしてたね・・・・」

嫁「また?ホントに無作法でごめんなさい」

ちょくちょく嫁の会話には年に似合わない言葉使いが聞かれるけど
母親の使う言葉と同じだから母親の教育なんだね。
尚更、最初のころの生意気な嫁と今の嫁のギャップの差は凄いと思った。

嫁と一緒に食卓につくと。そこは明らかに4人で食う量じゃない大量の食材が並んでいた。
満漢全席でもやるのか?というほど食材が並ぶ。

俺「すっ・・すごい」

母「今日は俺さん来てくださるから頑張ったのよ~、ねぇお父さん」

嫁が度々語尾伸ばすのは間違いなくお母さんの影響だと理解した。

親父「さっさと食うぞ」

嫁「わー今日凄いね、俺さん苦手なものありますか?」

俺「いや、大丈夫です。」

席順位置関係    親父
        嫁    母
          俺

やめてーーーホント勘弁してください。
親父の対面で飯食う勇気ない、でも皆すでに着席中。
もうなるようになれと着席、改めて料理みる、なんというか見事な料理だった。
俺はグルメでもなんでもないけど、盛り付けとか彩りとか、使われている小鉢や器とか
なんというか全てがバランスよく配置されて見るだけでも感心する食卓だった。

嫁「俺さんどうしたの?」

俺「いや、こんな凄い食卓初めてで見とれてしまって」

親父「食うぞ」

俺、着席。

全員で「いただきます」

長い晩餐がはじまった。

食事が始まると母親が親父さんの皿へ料理をとりわけ
嫁が俺の皿へ料理をとりわけてくれた。
それが凄く自然でこの家庭は躾や教育はちゃんとされてるんだなと感心した。

俺の家は母親が早いときに他界して、親父と親父側の祖父母で暮らしていて
親父は爺さんから会社引き継いでずっと忙しい人だったから俺の躾は祖父母が見てくれた。

昔かたぎの祖父母だから言葉使いや目上の人への礼儀とか教えられて育ったか
躾というか礼儀作法しっかりしてる人みると無条件に好感もつ癖がある、
嫁家庭は正にそれだった。

賑やかという訳じゃないけどさりげない会話や気配りとか当初よりも寛いで食事することができた。
親父さんは無言で食べて時たま俺を見てるようだった。

親父「お前あれだな、魚の食べ方わかってる奴だな」

俺「???」

今食べてるヤマベとニジマスの餡掛けで無作法あったかな?

親父「食べ物はしっかり食べるのが食べる人間の努めだよな」

俺「????」

嫁と母は笑ってる。

嫁・母「どう美味しい?」

俺「美味しいです、普段外食や適当な材料で作って済ますのでホントに美味しいです」

事実、どの料理も上手い。

母「そのヤマベとかお父さんが釣って冷凍したものだけどお口にあう?」

俺「魚好きですよ、肉より魚のほうが好きです」

親父「お前、釣りするのか?」

俺「釣りというほどじゃないですけど秋鮭釣りは友人とかと行きます」

あれだけの量もそれなりに食えたのは味付けや一品の量が適切なんだと思う。
お吸いものは柔麺で魚のすり身で麺をつくり魚で出汁とって作るという手の懲りようだった。

食事もあらかた終わって嫁母からの質問タイムが始まった。
まぁ、お約束の仕事や家族構成や趣味とか嫁と出会ったときとかそんな会話だった。
とりあえず無難にこなせたと思うが嫁は緊張する俺がおかしいのかクスクス笑ってた。

食事も終わりなんとか切り抜けたな~安堵してる俺。

母「お腹いっぱいになりました?遠慮しないでね」

俺「もうお腹いっぱいです、全部美味しかったですホントにありがとうございます」

母「良かったね、お父さんw頑張った甲斐あったじゃないw」

?????????

お父さんが頑張った?????何を????

母「今日の料理全部お父さんが作ったのよ、美味しかったでしょうw」

(うそ~ん)

母「嫁からね俺さんは一人暮らしでいつも忙しいから食事に呼んでいい?って聞かれたときね」

母「お父さんが俺が作るってw。今日の料理全部おとうさんです」

俺放心、あのね男料理じゃないんだよ。
煮付けとかの人参も細工されてるし栗の渋皮煮まで出るんだぜ!
魚料理も吸い物も焼き物も揚げ物も極めつけがご飯は5缶の握りだんだから。
これ全部親父さんが作ったって・・・
親父さん会社員なのは名刺もらって知ってる、料理人じゃない。

もう俺、立ちあがって親父さんに頭さげたよ。

俺「お休み中にお時間割いて食事作って頂き招いてくださりありがとうございました。」

親父「おう」これだけ・・・

嫁と母はそんな俺たち二人をニコニコ眺めてる。
相変わらず怖い親父さんだけど何となく憎めない親父だなと俺の中で意識が変わった。
食後は嫁が俺に珈琲いれてくれて持ってきてくれた。

珈琲カップが無骨だけど素朴な素焼きでちょと赤みがかってるのが気になって

俺「この珈琲カップいいですね。なんか惹かれます」

と言った。

嫁と母ふたりともちょっと驚いたような表情見せたので俺なんか変なこと言ったかな?と思い
会話を変えるつもりで違う話題振ったんだけど・・・

俺「今日の料理で使われてた器いい器ですね、魚に使ったのは備前焼ですか?」

俺「揚げ物と焼き物は冷めないように蓋つきの織部ですよね?」

二人が更に驚きの表情になる。

突然、親父

「おい!お前器わかるのか?器興味あるのか?」

と食いついてきた。

親父は食後ソファでTV見てて歓談には参加してなかったけど聞き耳立ててたらしい。
それで俺が珈琲カップや器のこと言い出したら急に食卓にもどってきた。

俺なにか逆鱗に触れることやっちゃったのか?
嫁にヘルプと嫁みたら母親と台所に引っ込んでる。
食卓に親父と俺、親父は怒ってるのかなんなのか分からないから迂闊に話できない。

親父「お前、器に興味あるのか?備前とか織部とか言ってたけど」

俺、祖父母に育てられたようなもんで祖母の趣味が器つくりで
家には電動ロクロの小さいのがあって、小さいころは祖母の膝のうえで土こねて遊んでた。
どの器がよいとかそんな事はわからないけど備前焼や織部くらいの
有名な器の特徴はなんとなく分かる程度。
仕事柄、店舗デザイナーと知り合いも居て、お店で使う調度品カタログとか
見る機会も多いから曖昧だけど、そういうのを目にする機会がある。

そんな話を親父さんにした、今までと違うのは親父さんがちゃんと話聞いてたことかな。

親父「そうか、お前は器にも興味あるのか?今日の器はどれが良かった?」

と聞いてきた。

俺、最初に食卓に招かれてすぐに目についた織部焼きの小皿と親父に説明した。

親父、洗い物中の母親からさっき俺が言った器もってきた。

「これか?」

と聞くので

「そうだ」

と答える。

「この器の何が良かった?」

と聞かれたので

「器が織部の椿文大鉢で中に梅のシャーベット1点だけ添えられていて色が気に入りました。」

と答えた。親父がいきなり俺の肩を叩き出した、バッシンバッシン叩いてくる。
俺やっぱり逆鱗に触れたらしい、殴られるとか想像してると。。。

母「お父さん良かったね、初めてお父さんと趣味があう人ウチに来たじゃない」

と言う。

親父「おう、お前あれだな食事もちゃんと出来て細かい所を見れる奴だな」

と言いながらまだバッシンバッシン叩いてくる。

痛いからもう辞めてくれよ・・・嫁台所でクスクス笑ってる。
そこからが長かった・・・親父さん離してくれないんだ。

ちなみに織部焼以外の備前焼や珈琲カップも親父さん作だった。
料理が好きでそのうち自分の料理を飾る器も自分で作るようになったらしい、
嫁宅の食器の殆どが親父作だって。

粗暴というか無骨だけどこういう人は嫌いじゃない、
自分の手で何か作る人は無条件で好感もつのが俺。
そこから暫く親父さんの器への情熱というか執念をご拝聴した。
親父さんは調子にのってくると肩バッシンバッシン叩いてくるけど、
まぁ親しみの表現なんだろうと思うことにした。
ひとしきり器の話を拝聴した後に親父さんがちょっと来いよと例の居間へ案内した。

2年前に親父さんに殴られた居間に通されて親父さんとふたりっきり、
前と違うのは親父さんはもう睨んでないこと。
嫁が二人分の珈琲を親父さん作の珈琲カップに入れてもってきてくれた。

親父「嫁、お前ちょっと席外しなさい。俺くんと話あるから」

俺くん?俺くん?親父さんさっきまで『お前』って呼んでたのに。
これはちょっとただ事ならないと背筋のばした。

親父「俺くん、最初に会ったとき君の話も聞かず大変失礼なことした。 誤解とはいえ一方的に殴り怪我もさせてしまった。申し訳ありませんでした。」

と親父さんが頭下げた。

俺の中では今日の食事のことで、親父さんへは何のわだかまりもない。
むしろ面白い人だなと興味が湧いてきている。

俺「いえ、もうそのことは終わったことですし気にしてませんので」

俺「今日は本当に招待してくださりありがとうございました」

と頭下げると母親が入ってきた。

母「なにやってるのあなた達w」

それで終了だった。その後は親父さんと母、嫁交えて穏やかに話が進み
嫁を捨てた元カレ呼びつけた親父さんのお仕置きに軽くドン引きして、
自分も気をつけようと再認識したり
親父さんは嫁にはてんで甘くて本当に可愛がってるのが垣間見えたり
久々の家族の団欒?を味わった。

それそろ良い時間になったので嫁両親に挨拶して玄関でようとすると
親父さんが呼び止めて紙袋を渡してきた。

親父「大したもんじゃないけど良ければ使え」

親父さん作の珈琲カップセットだった。

親父「またいつでも来い、また上手いもん食わせてやる」

なんかジーンと来た、嫁の両親はやっぱり嫁の言うとおり良い人達だった(殴る点は除く)

こうして嫁父とのセカンド・コンタクトは予想外の嬉しい方向で終えることができた。
玄関で嫁家族に挨拶して玄関でると嫁が追いかけてきた。

嫁「俺さん帰りますか?」

もうすでに深夜零時まわっていた、嫁と合流してから10時間近く経っている。

俺「帰ろうと思います」

まだ嫁と話したいけど流石にね。

嫁「ちょっと待っててください」

玄関に戻る。

嫁「あと2時間は私大丈夫ですよ~、父が許可くれました」

俺「???親父さんが??」

嫁「はい、俺さんなら大丈夫だから良いってw」

嫁「俺さん父に気に入られた初めての男性ですよw」

俺「なんかありがたいですね・・・」

嫁「あと2時間しかありません、どこ行きますか?」

俺「嫁さんが良ければドライブは?」

嫁「いいですね~」

嫁が俺の助手席にのるとき玄関あけてご両親が顔出した。

俺は外に出て

「2時までには必ずお返しします」

と言って軽く会釈した。嫁は窓あけて

「ちょっと出かけてくるね」

と手を振ってた。

体全体が高揚する感じというのかどこかフワフワする感じと言えばいいのかな?
久々に感じるドキドキとでも言えばいいのか。

嫁は暗い車中でみるとキレイな横顔がより引き立つ
外灯とか対向車のライトとかで一瞬、浮かび上がる嫁の顔が凄く印象的だった。

嫁を乗せて他愛もない話をしながら特に目的地もなく車を走らせた。

嫁と車内で他愛もない話して子供時代とか嫁の得意料理とか
週末に洗濯するなら私やりますよとか
嫁は時に大胆でドキッとする発言を天然でかましてくる。
裏表ない計算しない人なんだと思う、元カノは途中から違ってしまった、
俺が変わったのか、元カノが変わったのか、それはもうどうでもいい事だし
嫁も過去に干渉してこない人だった。

話疲れてコンビニでお茶買ってまたドライブしながら車中でまた話す。
田舎だから景色のキレイな場所なんてないし仮にあっても
同じように車が集まるのは容易に想像できる。
嫁も俺もそういう点は無頓着だから車でグルグルとドライブするのも楽しかった。

約束の2時まであと30分くらいなので嫁自宅方面へ車を運転する。
嫁が黙り込む、疲れてるのかな?と嫁の方みると嫁が俺の顔じっと見てた。
嫁の目はお母さん譲りの目尻が少し下がってる感じなんだけど
大きい目なので凄く印象的な目を持ってる。
なんとなく気恥ずかしいので運転に集中するんだけど嫁はこっち見てる。

嫁「今日はお疲れ様でした。」

俺「いえいえ、こちらこそ招待してくれてありがとう、凄い楽しかったよ」

嫁「俺さんと父は意気投合するって言ったでしょう?当たりましたねw」

俺「まだ怖いけどね、当たりだね。俺、君の親父さんみたいな人好きだよ」

嫁「私には言わないのに??」

嫁はホントに突然驚きの事を言う。

心臓がバクバクして顔が熱くなるのが自分でもわかった、嫁はまだ俺をみてる。
事故らないように気をつけないと。。。

どう考えても嫁は待ってる、俺が行動するのを。
俺も男だしかも自分もいい人だと思ってる女性から
脈ありな行動されて動かないヘタレじゃない!

俺「嫁さん・・・」

嫁「はい」嫁ずっと視線そらさない

口の中が乾く、今までの恋愛や告白の中で今が一番緊張してる。

今、嫁に告白してもきっと嫁はOKしてくれる! と思う。それはお互い望んでることだから。
でも、今告白したらきっと二人共、ご両親との門限破ることになる・・・・
それは俺を受け入れてくれたご両親に対して裏切りになるんじゃないかと頭に浮かんだ。
特に嫁父は約束破る人間は受け入れないと思う。

残りあと15分程度しかない、告白したら絶対二人共門限やぶる。
親父や母親が怖いんじゃないなくて受け入れてくれた人達の信用裏切るのが怖い
じゃあ、一番大事な嫁の気持ちは??

もう運転しながら色んなこと考えてるんだけど嫁はずっと俺の顔みてるんだ。

俺「嫁さん・・・・・」

嫁「はい」

俺「今日は送ります、ご両親と約束しましたから。」

嫁「・・・・・・・・・・・」

俺「俺、嫁さんとお付き合いするならご両親を裏切ることもできません」

嫁「それって??」

俺「今日は送りますけど場を改めて俺の話聞いてください。」

嫁「はい・・・・・・」

俺「嫁さんとはまだ会って4回程度です。まだまだお互い知る時間必要だと思います。」

嫁「・・・・・・・・・・・・・・」

俺「俺も自分の気持ちちゃんと確認して嫁さんと向き合いたいです。」

俺「嫁さんも自分の気持ち確認してみてください」

嫁「・・・・・・・・・・・・・・」

俺「今日は送ってご両親との約束守りますので」

嫁「はい」

俺「もっと嫁さんの事知る時間をもう少しだけください」

俺「お願いします。」

嫁「はいw」 嫁笑ってくれた

嫁「そういう人で良かったです、そういう人だから父も母も俺さん家に呼んだと思います」

嫁「もちろん私もですよ~」 

俺、顔まっか、嫁に冷やかされるけどホントに真っ赤

2時5分前に自宅到着。嫁玄関にいく。
親父さん待ってた!こえーーーやっぱりちゃんと時間前に返してよかった俺すごくGJ!

車から出て親父さんに会釈すると親父さん家に入っていった。
嫁は車の見送りで運転側の外にいる。
コンコンと運転席の窓を嫁が叩く、以前と一緒だけど今度は笑ってるなぁとか思った。

嫁「前と違って今は笑ってお見送りですよ~」

とニカッと笑った、同じこと考えてんだ。

そして小声で

「バカ」

と言った。

萌え死ぬってこういう事なんですね・・・・・
こうして嫁宅での食事は終わって嫁と俺と嫁父の距離は少し縮まった。
帰宅してからも興奮冷めやらずという感じで寝つけなくて結局5時位に寝ることになった。
昼頃におきて嫁からメールが届いていて返信したり、午後から書類仕事すこしやったりして過ごした。

それからは特に目新しい事もなくて嫁とは俺の仕事終わる時間が不定期なので会えないけど
毎日、少しだけどメールやりとりするくらいにはなっていった。

結局、嫁と約束した撮影はすぐに行けなくて嫁と相談して3月の頭に2泊3日くらいでと決まった。
撮影よりも嫁といる時間が取れるという事が素直に嬉しくて
たぶんお互いに待ち遠しい日々だったと思う。

でも、気になることがひとつ。
嫁は撮影旅行俺といくのを両親から許可もらってるのだろうか?
それ以前の2回は偶然だったけど、嫁の親父の性格考えると
お互いに見知った間柄で内緒はまずい気がする。

それとなく嫁に過去の撮影旅行で俺に会ったこと伝えてる?と確認した。

嫁「伝えてませんよ、父絶対許可しないですからね」

俺「ですよね~」

俺「ちなみに今回の撮影旅行はどうなんだろう?」

嫁「撮影行くのは知ってますよ。俺さんと一緒は伝えてないです。」

俺「あ~~~~なるほど」

嫁「マズイですかね?」

俺「う~ん」

親父さんから許可とるにしても俺と嫁はまだ曖昧な関係だし、
そんな関係で旅行は許さないよね。
じゃあ、旅行前に嫁に告白してから親父さんに?それも何か慌ただしい感じだな・・

撮影旅行までまだ日数あるけど親父さんから許可もらわないと騙してることになる。
嫁は気にするなというが一度でも受け入れてくれた嫁両親を騙すのは俺が嫌だ。

撮影数日前に嫁の買い物一緒にする約束したので、そのときに親父さんに許可もらうしかないな。
もし駄目なら嫁には悪いけど許可でるまで撮影旅行はお預けするしかない。

嫁に親父さんに許可もらうと伝えて買い物終わりに嫁宅にお邪魔することした。

嫁「絶対無理ですよ、俺さん殴られますよ」

俺「そうだよね。そうだと思うけど騙して嫁さんと二人で行くのは俺無理だから」

嫁「そこまでしなくても」

俺「いや、やっぱり親父さんから許可もらえるか俺が聞くよ」

俺「今回、殴られても止めないでいいから、親父さんが怒るのは仕方ないし」

嫁「・・・・でも・・・・じゃあ、撮影旅行諦めますよ。また今度で」

俺「でも、又今度のときも親父さんの許可必要でしょう?」

嫁「はい・・・無理しないでくださいね」

『嫁父と俺 パート3』スタートです。

買い物が終わって昼過ぎに嫁宅にお邪魔する。もう冷や汗流れっぱなしの俺。
嫁も緊張気味で母親が二人共どうしたの?と怪訝そう。
親父さんは居間にいるそうでちょっとご挨拶してきますと居間へ向かう・・・

コンコンとノックすると

「おう、入れ」

と親父さん。

親父「おう久しぶりだな、晩飯食ってくか?」

と上機嫌、でも手にゴルフクラブ持ってる・・・

俺「ご無沙汰してます。今日は親父さんにお話があってお邪魔しました。」

親父「ああ~何よ。」

ゴルフクラブしごいてるーーーーこえーーーー

俺「嫁さんの旅行の件なんですが・・・」

親父の目が変わったのがわかった、絶対これ殴られるなぁと覚悟した。

俺「その旅行ですが俺も一緒に行くことになってます。」

親父「聞いてないぞ。そんな話」

俺「はい、嫁さんも言いづらかったらしく今日、親父さんに許可頂きたく来ました」

親父「駄目だそんなもん!」

俺「はい、怒るのも当然だと思います。」

親父「そうだろう?お前だってそのくらい分かるよな。」

親父「お前だから殴らんけど他の奴なら殴ってるぞ」やっぱり殴るんだ・・・

親父「そもそも理解できないけどよ、カメラで撮影するのに泊まりこみで撮影する意味あるのか?」

親父「お前は男だけど嫁は女だからよ、一人で泊まり込みなんて許可したくないんだよ」

親父「それが男と二人でなんて心配に決まってるだろう?」

親父「親なんてそんなもんだ、少なくともウチはそうだ」

俺「はい、そのとおりです。」

親父「親バカかもしれんが嫁は贔屓目にみても器量いいと思ってる」

親父「変な虫つかないか心配するのは分かるだろう?」

俺「はい・・・」

親父「まぁ、お前はよ、こうやって筋通そうとしてるし今までのクソ野郎達よりマシだよ」

親父「でもよ、嫁入り前の女と泊まり旅行させてくださいって言われて素直にOKできるか?」

親父「俺らはよ、嫁どこに出しても恥ずかしくない教育してきた自慢の娘なんだわ」

親父「お前も嫁と、そのなんだ旅行か?いくつもりならそれなりの段階?ってあるんじゃないか?」

親父さんの言葉は全て正論で反論もまったくできないものだった。
仮に俺に娘がいて同じこと言われたら同じこと相手に言うと思う、殴りはしないけど。

親父「ぶっちゃけ、お前は嫁のことどう考えてるのよ?」

親父「俺から見れば嫁はお前のこと好きだと思うぞ?」

親父「お前はどうなのよ?」

嫁に言う前に親父に告白しなきゃいけないとは予想してなかった。
しかし、これは言わないとならないよな・・・

俺「嫁さんにはまだハッキリと伝えてませんけど俺も好きです」

親父「なんで嫁に言ってないんだ?」

俺「ヘタレというか・・・そのチャンスにビビってしまいまして」

親父「チャンスってなんだよ!お前なんか嫁にやったのか?」

俺「いえやってません。というかまだ数回しかお会いしてませんから」

親父「そんなものなの?」拍子抜けしたらしい

親父「まぁ、アイツも俺のせいか男運ないから遊び慣れしてないけど」

親父「お前もたいがい遊び慣れてないよな」

俺「すみません・・・」

親父「んで、今度の旅行で打ち明けるつもりだったのか?」

俺「そこまでは・・・撮影ありきの旅行なので」

親父「お前、ウチの嫁弄ぶつもりなの?」すっげえ睨む

俺「いえ真剣なお付き合いしたいと思ってます。」

親父「俺にいってどうするんだよ、嫁に言えよ」

親父「旅行はダメだ、だけど撮影に二人で行くのは許してやる」

俺「へっ???」

親父「だからよ、その日に泊まり込みで旅行は駄目だけど撮影はOKしてやるよ」

親父「ちゃんと日帰りで帰ってこいよ」

俺ポカーン、親父さんは居間でて廊下から嫁に声かけてる
嫁、居間に入ってきて俺の顔みてホッとした顔する、殴られてると思ってたらしい。

親父さん、俺、嫁の三人着席。
そこへ母親が4人分の珈琲と茶菓子もって参戦。

母「おとうさん話し合いは終わったの?」

親父「話にもならないよ、なぁ?」と俺をみる

俺「はい・・・」

母「え~じゃあ、嫁と俺さんの結婚駄目って言ったの??」

嫁、驚いた表情で俺をみる、目がウルウルしてるけど。母親の勘違い発言だから

親父「ばか、結婚の毛の字もでてないよ、それ以前の話だ」

母「どういうこと?」

親父「こいつらまだお互いに好きとか言ってないんだってよ、いい年こいて笑っちゃうよな」

俺・嫁ともに顔真っ赤か・・・互いに非常に肩身が狭い。

親父「それで今度泊まり旅行行きたいとか抜かすからよ、ダメだって言ったのよ」

母「あら~そうなの。。いいじゃない旅行くらい許してあげれば」

親父「駄目に決まってんだろう、恋人でもないのに旅行とかふざんなって」

親父「でも、まぁこうやって素直に言ってきたからよ、旅行は駄目でも日帰りならOKしてやった」

嫁「お父さんいいの?俺さんと出かけても」

親父「仕方ないだろうお前も行きたがってるし、コイツならまだ安心できるからよ」

親父「ただし日帰りだぞ、約束やぶったらお前ら二人分かってるよな」

俺、タマヒュンした。

親父「お前、今日暇なのか?」

俺「はい、予定ないです」

親父「知り合いの窯場へ窯出しに行くけど付き合え」

俺「・・・・・はい」嫁今日の予定は未定になっちゃったよ。。

親父さんと俺で親父さん知り合いの窯場へ行くことになった。

母「○○さんのところ?私も久しぶりに行こうかしら?」

母「おとうさん、この間作ってた皿の受取に行くなら私もみたいな」

親父「おう、じゃあ母さんも行くか」

嫁「私もいく」

親父「なんだコイツとそんなに一緒にいたいのか?」

親父「母さんよぁ、どんなに可愛がっても娘は他の男にいっちゃうんだな、男親は寂しいもんだよ」

俺・嫁ともに顔真っ赤アゲイン

母「あらあらw、いいじゃないお父さんには私がいるんだから充分でしょう?」

親父「おう」ちょっと照れてる

ということで泊まりは駄目だが日帰りならOKの許可もらって嫁と撮影に行くことになった。

窯場での出来事はとにかく和気あいあいだった、親父さんは
俺が思ってたより俺のこと認めてくれていたらしい。
夜は嫁宅で親父さんの料理を頂き食後は親父さんと出来上がった器の話して
今度俺も一緒にやろうと誘ってもらえた。

帰り際に嫁母が

「俺さんいつでも遊びにきてね、みんな貴方のこと大歓迎だから、ねっお父さんw」

って言うと

親父「おう、いつでもこい、今度は陶芸一緒にやるぞ」

と言ってくれた。嫁はそれがとても嬉しかったと後日、俺に伝えてきた。

帰宅後は嫁と暫くメールして撮影の荷物や親父さんとの会話など色々と質問された。
肝心な部分は教えずにいたけど、嫁は俺と親父さんが
仲良くしてるので安心したとメールしてきた。

とりあえず撮影日を短縮して撮影予定も練り直して寝ることにした。

嫁父の許可を得て嫁と日帰りで撮影に行けることになり3月頭にいつも場所へ出発した。
今回はできるだけ早く到着して長く滞在したいという嫁の希望で早朝出発となった。
朝4時に嫁宅へ嫁迎えに行き出発。

今回は撮影地まで片道2時間くらいかかるので嫁の体力が心配だが嫁本人は大丈夫と言ってる。
もし途中で疲れが見えるようなら撤収という事で撮影地へと向かう、
天候は晴れ、早朝なので空気も澄み渡り気持ちのよい朝。

嫁は朝から元気で久しぶりの撮影が楽しみなのと車内でずっと言ってた。
いつもの場所まで駐車場から1時間で到着、休憩を取りシカの撮影場所まで
更に1時間で到着、3月に入ると雪の量も2月より少なくなっているが、所々ベタ雪で重い。

8時半まわったくらいで撮影場所に到着。予定より少し早いくらいの
ペースなので休憩用のテントをひとつ張る。
今回は泊りはないので休憩テントひとつに昼用の食事と
万が一の場合を考えた非常食を少々用意した程度の軽装備。

テント張ってカメラ設置してあとはシカが出るまで待つだけなので
まったりとしてる。嫁はお湯沸かして珈琲用意してくれている。
動物撮影だからあまり匂い出るのは好ましくないけど今日はいいかと嫁から珈琲をもらう。

嫁「シカ出るかなぁ?」

俺「出るといいねぇ~せっかく来たんだから」

嫁「ねぇ~シカ可愛いよね、子鹿とか可愛すぎる」

その後、俺がシカは農家や林業にとっては獣害対象で定期的に数減らすため
駆除される対象だとか鹿肉は赤身で焼くとパサパサした食感とか言って嫁に怒られる。

嫁にとっては待ち望んだ撮影だったが最後までシカが現れることなくタイムアップ。
かなり不満だったようでもう少し粘りたいと言ってたが、帰る時間を逆算すると
そろそろ帰らないとマズイので帰り準備を始める。

テント撤収中に嫁に背後から雪玉ぶつけられる。結構、本気な勢いだった。
最初は笑って流してたけど雪玉ぶつけるのが途絶えないので振り返る。

嫁「私とお父さんとの約束どっちが大事なの??」

と雪玉ぶつけてくる。

これはアレだな、結婚すると夫が必ず嫁に言われる『私と仕事どっちが大事』と
同じ類いだなと真剣な嫁をよそにちょっと面白かった。
が、嫁にはちっとも面白いことではなくこの後、嫁は無言となる。。。
やっちゃったかな?と思ったときは既に遅し、休憩場所までの1時間、嫁は無言を貫きとおす。

嫁は普段は朗らかで気遣い上手で天然な人だけど、怒ると親父さんの遺伝子が
目を覚ますのか怖い、親父さんが威圧する怖さなら嫁は静かなる怖さだ。どっちも俺は怖い。

休憩場所について俺はリュックを降ろして休憩するんだけど嫁は休憩しようとしない。

俺「休憩しないの?」

嫁「しないです」

俺「まだあと1時間はかかるから休憩しよう」

嫁「いいです。」

俺「・・・・・・・」

俺、珈琲の準備する。

俺「さっき嫁さん作ってくれたから今度は俺作るね」

嫁「・・・・・・・」

俺「少し休んだほうがいいよ?」

嫁「・・・・・・・」

嫁「俺さんは私よりも父との約束の方が大事ですか?」

あれ?まだそこに拘るんだ?

嫁「私達は成人して働いてるし自由にしてもいいんじゃないですか?」

嫁「父のことは私も好きだし尊敬してるけど何でも父のいいなりはイヤです」

以前、嫁が遭難したとき嫁と父親の関係がギクシャクして
嫁も変に意地はってる時期があったと嫁母から聞いたことあったけど、これがそうなのかな?

嫁「俺さんが両親と仲良いのは嬉しい、特に父と仲良くしてくれるのは嬉しいけど」

嫁「私もっと俺さんとの時間欲しいです」

嫁、涙目。遭難したとき親父さんに殴られたとき嫁の泣き顔は
ブッサイクだと思った。今の嫁の泣き顔はキツイなぁ。。
すごい泣かせてる事に罪悪感を感じてしまう。

俺「ごめん。俺も嫁さんとの時間ほしい」

嫁「・・・・・・・・・」もう泣き状態

俺「えっと、だから今、一緒にここで話しませんか?」

嫁「・・・・なにを?」

俺「前に気持ち確認してからと言ったけど覚えてますか?」

嫁、うなずく

俺「だから今、時間くれますか?」

嫁、こっちに来る
嫁、俺のとなりに座って顔の涙を手で拭いてる

嫁「いまこっち見なさいでくださいよ、私ひどい顔してるから」

俺「最初に会ったときの顔みてるから平気w」

嫁、腹にグーパン軽くしてくる。

嫁「よっし!OKです。」とこっちを向く

目が赤いけど嫁の目はやっぱり特徴的な目で印象に残る。
俺の視線が嫁の目とあってやっぱりドキドキしてくる。

俺「嫁さん・・・・」

嫁「はい」

俺「以前、伝えたように気持ち固まったのでお話します」

嫁「はい」

俺「2年ちょっと前にここで変な出会いから始まって今、同じ場所に二人でいるのは凄い縁だと俺は思います。」

嫁「はい」

俺「素直にいいますが正直、最初や電話もらった時、よい感情ありませんでした。」

嫁「ごめんなさい・・・」

俺「でも、2回、3回と会うたびに嫁さんとの時間が楽しいと思う自分がいて」

俺「それからは嫁さんとずっといたいと思う自分に気づきました」

嫁「・・・・無言」

俺「つまり・・俺は嫁さんが好きです。大好きです。」

嫁の反応がない・・・・

ずっと俺みてる。そのうち嫁の大きな目から涙ポロポロ流れてきて

嫁「わたしも、わたしも俺さん大好き」

嫁「私だけ空回りしてるのか不安な日もあって、でも俺さんいつも優しくて」

嫁「俺さんに好きって言われて幸せです。」

それで嫁自分の涙ふきとってニカっと泣き笑いの表情で

嫁「私でいいんですか?ホントにいいんですか?」

俺「お願いします。嫁さんずっと俺と居て下さい」

嫁「それはプロポーズですか?」

大きな目を見開いて聞き返してきた。

嫁「会ってまだ期間も短いし私泣き虫だしヤキモチ焼だし・・・」

好きからプロポーズは正直、勢いもあったと思う。
でも、嫁が泣き虫なのもヤキモチ焼もとっくに知ってる。
期間が長ければ分かりあえるのか?
それなら俺はとっくに元カノと分かり合えてたはず。
嫁とはホントに短い期間だけど俺は嫁の仕草や表情、気遣いの心とかその全てが好きだ。
本当に分かり合える人なら期間なんて関係なく分かり合えると思える相手が嫁だ。

俺「嫁さん、俺達は長い付き合いじゃないけど、その代わり深い付き合いだと思ってる」

俺「だから嫁さんが好きです。俺と結婚してください。」

嫁、固まる、俺弱気になる。

俺「あっ、もちろん結婚については考えてからのへn・・・」

嫁「私も大好き!」

嫁が抱きついてきた!いや抱きついてきたではなくアレはタックルだった。
反動で俺後ろに倒れて嫁が覆いかぶさる格好になった。

嫁の手が首にまきついて嫁の顔は俺の耳側にあった。
ちょうど嫁の声が俺の耳元で聞こえる感じ。

嫁「私も俺さん大好き、俺さんのお嫁になります」

涙声で言ってくれた。

俺、嫁の肩に手をまわして抱き合う形になって暫し無言。

嫁が上体おこしてようやく二人共たちあがった。
なんとも照れくさくて顔見るのが恥ずかしいけど嬉しい気持ちで満たされてた。

なんとなく視線があって嫁が目をつぶった。
俺なんのためらいもなく嫁とキスした、時間にして数秒、数十秒?
キス終わると二人とも顔真っ赤で大いに照れた。

2年前に遭難した嫁を助けた場所で今、嫁にプロポーズして
そして嫁がOKだしてくれた。そして嫁とキスしてる。
ホントに偶然が重なった縁が繋がったんだと思う。

帰り道中に嫁が驚きの発言をした。

嫁「俺さん」

俺「はい?」

嫁「わたし初めてでしたよw」

俺「???」

嫁「初めてのキスの相手は俺さんですよ~」

俺「え~~~」

つまりそういうことだ。

これが『嫁と俺、俺のプロポーズ』でした。

嫁に好きと告白してプロポーズOKもらってからも二人の間は良好だった。
以前より変わった点は、週末に嫁が炊事洗濯すると言って
ウチに来る機会が増えたことで、嫁両親にも特に何も言われず
二人なりの時間を重ねていったこと。

嫁との関係も良好で、プロポーズもOKしてくれたけど
ご両親には付き合ってると報告しただけで、まだ伏せていた。
冬から春へ季節が変わり俺もそろそろ身を固めようと思い始めた。

もう一度、嫁に気持ち確認すると怒られた。

「何度も聞かなくても変わらないから」

と、確かにそんな嫁がますます好きになった。

嫁に近い週末、自宅へご両親に挨拶にいきたいと伝えるようお願いした。

嫁「いよいよですか?」

俺「うん」

嫁「ドキドキしますね」

俺「親父さん怖い・・・・」

嫁「今更??」

俺「大丈夫、ちゃんとお願いする」

俺「都合の良い日を聞いてもらえる?俺が両親に話あるって」

嫁「わかりました、ドキドキするね」

嫁は気楽だった。
俺は慣れたとはいえ親父さんから怒鳴られるのは間違いないとびびってた。
すぐに嫁から電話がかかってきた。

嫁「伝えたよ、あのね・・明日来いってお父さんが」

俺「明日??気持ちの準備が」

嫁「なんか苦虫噛み潰してる顔?だったよ」

俺「こえーよ」

嫁「お母さんはね明日の料理盛大にしないとって買い出し行ったよw」

俺「ありがたい話だね」

明日、訪問する時間確認して急いで床屋で髪の毛切って
スーツ引っ張り出して靴が古ぼけてたので靴買いに行って
嫁家へのお土産とか買いに行って慌ただしくその日が過ぎた。

翌日、今までの人生で一番緊張して迎えた朝だった。
嫁ご両親が昼頃に待ってるということでスーツを着て身支度整えお土産もって家を出た。

運転中からのどが渇いてお茶のみつつ嫁宅へ向かう。
嫁宅到着、何度もお邪魔してるけど今回は緊張の度合いが違う。。

チャイムを鳴らすと普段よりちょっとオシャレ?した嫁が笑顔で迎えてくれた。
遅れて母親が迎えてくれた、母親もちょと小奇麗な感じの服装で
否が応でも今日が何の日か嫁家族も分かってるようだった。

俺「今日はお時間割いて頂きありがとうございます。」

嫁母「な~にそんな改まっちゃって、スーツ姿も悪くないわねw」

嫁「ねっ、似合うって言ったとおりでしょうw」

俺の緊張とはまったく関係なくこの母娘はいつもマイペースだ。

俺「あの親父さんは・・・」

嫁母「それがねぇ、今朝になってから窯場行くとか言い出してw」

俺「ご不在ですか?」

嫁「ううん、いるよ。私とお母さんで居間に押し込めてる」

俺「あっ、そうなんだ」

俺「それではお父さんとお母さんにお話があるので宜しいでしょうか?」

嫁母「いよいよね。ドキドキするわw」

この嫁母はどんな時もいつもマイペースで、この人だから
親父さんと上手くいってるんだとホント思う。

嫁母「おとうさん、俺君よ~」

嫁母に先導され居間に入る、当たり前だけど親父さんいた。
普段と違いスーツ姿の俺を睨んでフーっとため息ついたのが今も記憶に残ってる。

親父さん= 嫁母
俺   = 嫁

という感じで向かい合って着席、俺が持参した手土産を渡そうとすると親父さん

親父「何だそれ?」

俺「つまらないものですけどお茶菓子です」

嫁母「そんな気をつかわないでいいよのw」

親父「けっ」

俺、嫁、嫁母 VS 親父の雰囲気になってきた。

親父「んで、今日は何のようだ?スーツ似合わないな」

嫁・母「似合ってるじゃないw」

親父「けっ」

親父「だからなんだよ改まってよ」

俺「はい、娘さんとおつ・とと・・・・お付き合いさせて頂いてます」

親父「知ってるよ、だからなんだよ。」

俺「はい、お付き合いしていますが嫁さんにプロポーズしてOK頂きました。」

俺「今日はご両親にその報告と嫁さんとの結婚を許して頂きに来ました。」

俺「・・・・・・未熟者ですがお嫁さん幸せにしますので結婚させてください」

俺、立ち上がってご両親に頭さげた。
隣りにいた嫁も立ち上がって俺の手をにぎって頭さげた・・・

沈黙が続く・・・・生きた心地がしない。

沈黙が続くなか親父さんが口火をきった。

親父「まっ、二人共座れ」

俺・嫁着席。

親父「嫁、お前はこいつでいいのか?」

嫁母「お父さん俺君に失礼でしょう。」

親父「嫁に聞いてる」

嫁「はい、私は俺さんの嫁になります」

母親、涙腺崩壊。

親父「お前は?嫁でいいのか?」

俺「はい、嫁さんと結婚させてください」

親父「幸せにできるのか?」

俺「贅沢はさせられないけど幸せにします」

親父沈黙。嫁・母涙腺崩壊中。
すすり泣きと鼻水すする音が聞こえる。

親父「お前の幸せって何だよ?言ってみろ」

俺の欲しい幸せは・・・俺の欲しい幸せは・・

俺「俺の幸せは嫁と子供と楽しく生きていくことです」

親父「それがお前の幸せか?」

俺「はい」

嫁・母大号泣、つられて俺も涙目。

親父さん目を瞑って思案中??

親父「俺、嫁が生まれたときは絶対幸せにしてやるって思ってよぉ」

親父「母ちゃんと一緒に一所懸命に働いて子育てしたよ、だから嫁の婿も簡単に認めるつもりもなかったしよぉ」

親父「変な男は絶対許さないつもりで嫁には嫁にふさわしい婿探して結婚させるつもりだったのによぉ・・・」

ちょっと沈黙してお母さんの肩たたいてから

親父「母さんやっぱり俺たちの嫁だよな。。。嫁にふさわしい婿自分で捕まえてきたよ。」

親父「仕方ないよな、仕方ないよな。嫁が選んだのコイツなんだから文句つけようないもんな」

俺もうこの辺で号泣寸前。
嫁母は親父さんの手にぎってウンウンいって、嫁はもうずっと泣いてる。

親父さん俺をみて

親父「ふつつかな娘ですが一所懸命育てました、どうぞ宜しくお願いします」

って頭さげた。俺もう号泣と鼻水で過呼吸ってくらい息苦しい。

俺「あり・・あり・・ありがとうございます」

って言うのが精一杯だった。

その後、4人ひとしきり号泣タイム。

ひとしきり号泣タイムが嫁母、親父さん、俺の順でおちついても嫁は泣きやまない。
嫁母がもう泣き止みなさい、おとうさん結婚ゆるしてくれたよって言っても泣きやまない。

俺、持参したハンカチ嫁に渡して涙ふくように伝えて泣き止むの待つ。
皆、目が真っ赤かで特に嫁はすごかった。
嫁母がちょっと洗面所に嫁つれていくと二人退席した。
居間には泣きはらした顔の俺と親父さん二人、気まずい。

親父「まっ、ウチの娘ああいう泣き虫だけど宜しく頼むわ、もうお前に任せた」

俺「ありがとうございます」

この頃には親父さん元にもどりつつあって

親父「んで、もう嫁とやっちゃったのか?」

俺「いえやってません」

親父「なんだやってねぇの?」

俺「はい・・・・」

親父「まぁ二人共分別ある大人でもう結婚許したんだからいいけどよ~」

親父「結婚式で嫁の腹に子供とか勘弁してくれよw」

親父「すぐに爺ちゃん婆ちゃんって呼ばれるのも嫌だしよ、楽しみは先のほうがいいから」

俺「分かりました」

嫁・母 居間にイン

その後は4人で楽しく話して無事終了、親父さん許可の元で嫁が家に初めて泊まりにきた。
けど・・・・・結婚前はと嫁と約束したのでまな板の上の鯉状態の夜だった。

結婚許可もらって嫁が最初に俺の両親と親戚の墓参りして
報告したいと言うので次の週休み二人で墓参り行った。
嫁は墓への供え物とホウキとバケツと雑巾をホームセンターで購入してきた。

両親と親戚が眠る墓に到着した嫁はまず墓の掃除はじめた。。。
俺も手伝うよって言ったんだけど、これが私のご両親への
挨拶代わりだからって笑って掃除してくれた。
ホントにこの嫁さんと出会えてありがたいなぁと
嫁とそのご両親と俺の先祖へ感謝の気持ちだった。
掃除終わった墓に供え物おいて二人で両親へ結婚の報告した。

結婚するよ!と会社の人に報告したら、社員は驚き長老とトミさんは号泣してくれた。
その後、会社の人達の音頭で嫁お披露目会のようなものが行われ
若い社員から冷やかされまくった。
トミさんと長老は両親他界後の親代わりみたい人達だったから
二人とも嫁を気に入ってくれて何よりだった。

結婚式は俺が親族いない事もあるので身内
(嫁ご両親と直近の親戚、親代わりとして長老とトミさんと長年お世話になってる取引先の社長ご夫婦)
で行われた。

二次会は嫁友達や俺の友人、会社の人間とか参加して祝ってくれた。
結婚式はとくに出来事はなくて嫁が相変わらず泣き虫で親父さんも泣いたりとそのくらいだった。

新婚旅行は嫁の希望で翌年の2月まで延期だった。
仕事も忙しいのもあったし出来るだけ嫁の希望汲んで旅行しようと思ってたから。

その後は平穏で穏やかな日々で、俺は充分幸せで、嫁も事あるごとに

「幸せですね~」

と言ってくれた。

嫁との初は大変だった。。
やっぱり嫁が初めてだから馴染むまで(どこかは聞かないで)
3日に渡るトライで夫婦になった。
自分の嫁のこと書くのは気恥ずかしいので掻い摘みで許してくれ。

嫁は着痩せするタイプで胸はEだ、お椀型のそれは見事なものをお持ちです。
最初の1年は真っ暗にしないと無理で今もほぼそうです。

これで勘弁してください。

ここまでの出来事が8年前のことで今、俺は38歳を迎える、嫁は29歳になった。

親父さんは相変わらずだけど、偶に出来た器お土産に持ってきてくれたり
魚持ってきたりして遊びに来る。
俺達夫婦も月1ペースで嫁自宅で飯食ったりしてよい関係だと思う。

結婚して6年目で俺達もご両親もそろそろ孫をと熱望したのだが
なかなか授からず嫁は悩んでる事も多かった。

これの書き込み始めたきっかけが、俺達夫婦に待望の赤ちゃんを授かったと
嫁から報告があり、有頂天気分でつい書き込んだのがこのグダグダ投稿の始まりだった。

適当なところで終わればと思ってたけど④のお陰でなんとか最後まで書ききれました。
長文でなかには不快な思いした人もいると思いますが
初ベビーで浮かれたバカ夫の行いと笑ってお許しください。

数日前に嫁ご両親に妊娠報告に行ったら親父さんお母さんはもう完全に浮かれていた。
この世に生まれる我が子を喜んでくれるご両親には感謝しかない。

嫁は出産前、出産後も大変な時期を過ごす事が多くなるけど嫁とご両親に約束した、

俺「俺の幸せは嫁と子供と楽しく生きていくことです」

を死ぬまで守るため、新パパは頑張ります。

最後までお読み頂きありがとうございました。
④、感想の全てが励みとなり無事完走となりました。

『遭難した女を見捨てたら結婚した』これで終わりです!

『トミさん姪』と『新入社員O君』の近況について

姪ちゃんとO君は会社の嫁ちゃんお披露目会で幹事役をやった縁で付き合うことになり
O君、三回振られて四回目で姪ちゃんからOK頂き交際、3年前にご結婚されました。
今もO君はウチの社員としてバリバリ働いています。姪ちゃんは現在、専業主婦です。

姪ちゃん妊娠6ヶ月でウチの嫁が2ヶ月です。同じ年ということもあり二人は親友になりました。
姪ちゃんと嫁で二人の子が将来結婚したら私達家族だねぇ~とか今から言ってます。

もしそんな奇跡が起きたなら何十年後かに書き込みするのもいいかな?とか思ってます。
皆様にも数多くの幸せが訪れること願ってます。そ

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