登場人物
・私
・私の彼氏:明
・明の元彼女:由美
ある日、明から切羽詰った声で
「緊急の用事で出かけないといけないけど事情で
留守番が必要だから来て欲しい。
二日ほどでいいから泊まって、大学へもウチから通って欲しい。
誰か来たら、自分は明の彼女で明は用事で出かけてるって言って追い返して」
と頼まれた。
よくわからなかったけど、明の部屋には映画のDVDがたくさんあって
いくらでも観ていいと言われたので単純に喜んで引き受けた。
夕方から留守番をはじめ、DVDを2本ほど見終わった夜八時過ぎくらいに
ドアを叩くというか殴りつけるようなすごい音が聞こえ
「オルァ開けろ、いるのわかってんだよ出てこいや」
と怒鳴り声がした。
どうしようかと思ったけど、明のアパートは玄関ドアの真横に小窓がついてて
明かりがついてるのがバレバレなので居留守を使うわけにもいかないし、
応対しなきゃ留守番の意味がないし、何より返事しなかったら
ドアが破られそうな勢いだったから
(玄関ドアは、民家の勝手口によくあるアルミ製のやわなドアだったので、
蹴られるたびにどんどん凹んできてた)
怖かったけど
「あ、明はいません…」
と返事した。
「あぁ?女声使ってんじゃねえぞテメここ開けろや!」
とまた怒鳴られたので、ドア横の小窓をちょっとだけ開けて
「ほんとに明はいません…」
と言ったらすごい勢いで手がのびてきて、
あぶなく髪をつかまれるとこだった。
外から男は激怒ってる顔でA4サイズくらいの小窓に片腕と顔を突っ込んできて
わけわからないことを叫ぶので怖くて、警察に通報するとか頭が回らず
とりあえず物陰に隠れて明に電話したら
「マジ?!じゃあすぐ裏から逃げて、今大学にいるから部室に来て」
と言われた。
でも、裏から逃げろと言われてもそこは3階。隣に逃げようにも
ベランダじゃなく窓しかないので伝って逃げることもできない。
半泣きでうろたえてたら、急になにやら外で物音がして、
侵入しかけてた男がひきずり出され、野太い声で
「さっきからうるせえんじゃこのクソガキが」
と聞こえ、誰かが走っていく音が聞こえて急に静かになった。