障害者の知人が火かき棒持って大暴れしていた

俺の故郷は田んぼばっかりのまさに田舎ってとこだったんだが
近所のお寺に住み込みで手伝いしてるオッサンがいたんだ
生まれつきの知的障害があってあんまり会話は成立しないけど
いつもニコニコして寺の掃除とかしていた

俺ら子供連中はそのオッサンの背が
小学校高学年くらいしかないから
「子供+オッサン」で失礼だけど
「こどっさん」と呼んでた
俺と友達何人かでよくからかったりして遊んだりしたけど
基本的にはみんな、
こどっさんのことは別に嫌いじゃなかった

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冬になりかけぐらいのある日、
こどっさんが寺の外にいるのを見かけた
その様子が普通じゃなかった

手にはいつも境内で焚き火をしたりするときに使う
火かき棒持って顔を真っ赤にして走り回っているが
声をかけても全然聞こえてない

俺らは、もともとおかしかったこどっさんが
ついにトチ狂ったと驚いて、家に走って帰り
「こどっさんがおかしゅうなった!」
と報告して何人もの大人がこどっさんを追いかけて
それに俺らが走ってついていくという形になった

ついにこどっさんを発見したけど、
こどっさんは血走った目で取り乱していて要領を得ないし、
すばしっこく動いて大人にも捕まえきれない

そのうち集落のはずれに停まっていた
白いバンの窓ガラスを火かき棒で叩き割った

「キャー!」
という悲鳴が響き渡って、
俺もついにこどっさんが
この村からいなくなってしまうんかなとか
妙に他人事みたいに考えてた

でも白いバンの様子がおかしい
中から誰も出てこないし
エンジンをかけて移動しようとしているし
それをこどっさんが棒でガンガン叩きまくっているし
バンの中からはキャーキャー悲鳴が上っている

追いかけていた大人集団にいた
ウチのはす向かいのお爺さんが突然
「C実(俺の同級生の女子)か?!」
と声を荒げた

何を言ってるんだろう?と
みんなが思っているとバンの中から
「お爺ぢゃーーーん!」
とまさにC実の声で叫んだ

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なんとC実が拉致されるところだった

大人全員でバンから大学生数人を引きずり出して
駐在さんを呼んで一件落着

C実は衣服が少し乱れていたけど
他には何もされていなかったし
何より顔をグシャグシャにして泣きまくっていた

後で住職が落ち着いたこどっさんから聞き出した話では
寺の掃除をしていたら、
C実の悲鳴みたいなのとドヤドヤ騒ぐ音が聞こえたから
棒を持って寺を飛び出したということだった

俺が何より驚いたのが
天然のアホで俺ら子供の区別もつかないと
思い込んでいたこどっさんが、
声だけ聴いて誰かこの集落の子供に
危険が迫ったのを察知して武器を取り
あんなに必死に走り回って探してくれていたことだった

事件後一番ブチ切れたのはC実のおじいちゃんで
戦争行った時に使ってた刀を家から持ち出して
「お前ら全員たたっきってやる!」
と大暴れしていたのを
C実のお父さんに羽交い絞めで止められていた

こどっさんはそれからもニコニコしながら
寺の手伝いしてたけど
俺らちょっとこどっさんを尊敬するようになった

一昨年、病院で亡くなられたこどっさんを思い出しつつ
投稿してみた

こどっさんありがとう
C実は今では俺の…

嫁とかだったらよかったんだが、
都心に進学して銀行員と結婚したよ
こどっさんありがとう

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