私が担当している部署のフルタイムパートの中から2人、リストラ候補を選んでくれと言われた

私はある会社の役職についていた。
ある日上司から呼ばれ、不景気で業務を多少縮小することになったので
私が担当している部署のフルタイムパートの中から2人、
リストラ候補を選んでくれと言われた。
まぁ言葉はもっと遠回しで柔らかかったけど。
その日から胃が痛くて痛くて。

20代後半から40代後半まで、
色んな年代の人が10人ほどいたが
自分が40代なこともあって、
再就職が難しい40代の人はなるべく避けてあげたい。
子供の大学進学費用やマイホームのローンの返済などを
背負ってる人も多いし。
20代の子も、シングルマザーで頑張ってる人は残してあげたい。
色んなことを考えると本当に胃が痛くなって、500円玉禿げも出来てしまった。
悩んでいたら上司から「あと一週間以内に決めて」と急かされるし。
とにかく私には荷が重かった。重かったけどやらなければならない。
一人は割と早いうちに決まってた。

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Aさんと言うまだ20代の既婚女性なんだけど、
ずっと体調悪いみたいで休みがちだったし、
出社してきても休憩室で休んでることも度々あって
たぶん本人も納得してくれるだろうと思った。
実際話をしたときも、自ら「いい機会だから体調を戻すことに専念します」って言って
私の立場を慮ってくれたりもして。
問題はもう一人を誰にするかだった。
能力はみんな大差ない。色々考えた挙句、決めたのはBさんって人。
Bさんは30代半ばの選択子梨(本人申告)で、Bさんがやってる仕事では必要ないが
ある資格を持ってる人なので、他の人に比べて再就職の道はあるだろうと思った。
又Bさんは自身のご両親と同居しているので、
たちまち生活に困ることは無いだろうと言うのも理由のひとつ。
もちろん実際どうなのかは分からないが、そういうところで判断していくしかなかったと思っている。
Bさんに告げた時、理由も聞いてこず、
ただ刺すような視線を寄越して一言も話さず部屋を出ていった。

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覚悟はしていたけど、その視線が心に突き刺さって
入社以来これほどしんどかったことはない。
ふたりに告げて、それから退職日の調整をすることになってたんだが
ふたりとも翌日から出社してこなかった。
まぁ本人たちからすれば、その気持ちは分からなくもない。

そして数日後、帰宅途中に横断歩道で信号待ちしていたら、
突然背中を押された。
一番前で待ってたから、つんのめるように車道に出て
幸い左折するつもりだった車でスピードを落としていたし、
ドライバーさんの反射神経が良かったのか急ブレーキで助かった。
心臓がバクバクして、背中の感触は残ってた。
そして後ろの方では大騒ぎになってて、女の人が取り押さえられていた。
突き飛ばすところを見ていたサラリーマンが数人で抑えつけていたのがAさんだった。
なんと表現していいのか分からない。あの時の感情。
たぶん警察に突き出したほうが良かったんだろうけど、なんか出来なかった。
仕事だったとは言え、今思えば感じる必要のない負い目をその時は感じてしまってた。
知り合いだからと説明して、お礼を言ってサラリーマンたちには手を離してもらった。
それから喫茶店に連れて行って、溜まってることがあるなら聞くよ?って言ったら
それから30分ぐらい愚痴を聞かされた。
遠方から嫁いできて、こっちの生活に慣れなくて、体調も悪くて・・・
それを夫に訴えても分かってくれないし、体調悪くても完璧な家事を求められるし・・・
会社に行ってる間は身体はしんどくても心は楽だったって。
最後のを聞いて「ねぇ、それって旦那さんが居ない方が
楽ってことなんじゃないの?」って聞いたら
ピタッと言葉が止まってしくしく泣きだした。
なので「20代なんて本当なら一番楽しくて幸せな時期じゃないの。
いくらでもやり直せる年代なのになにやってんのー。
家族を思いやれない男なんてこれからも変わることはないと思うよ?
一度地元に戻ってこれからのこと考えた方がいいと思うよー?」って言ったら
「考えてみます・・・」って。
それで別れたんだが、本音を言うと彼女を心配したわけじゃなくて
怖いから地元に戻ってほしかっただけ。遠くに行って欲しかっただけ。
以来何も起こらなかったから良かったけど、私の方がメンタルやられて
それからしばらくの間、会社に行くのが辛くてしょうがなかった。
たまたま・・・と言っていいのかどうか分からないけど、
義母が大怪我して足が不自由になったのを機に仕事を辞めることにした。
自分は専業主婦には向いていないと思ってきたけど
義母の介護と家事三昧の毎日は意外と自分に合ってたと驚いている。

ん~そんなきれいな事じゃなくて、なんかもうずっと恨まれるのが怖かったんだよ。
最初に上司の命令があってからずっと、それが一番怖かったな。
役職って言ったって係長に毛が生えた程度なのに、
そんな重責負わされても、とも思ったし。
BさんじゃなくてAさんだったから驚愕の方が大きくて
その瞬間は警察に突き出すことは頭になかったんだよね。
一見大人しそうな人がこう言うことをする恐ろしさにガクブルで。
ただ、とにかく落ち着け自分!落ち着け自分!って思ったのは覚えてる。
でも今思えば、話し合えたからあれで終わったんだろうと思うので
怖い中でよく頑張ったと自分を褒めたいw

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