4人の若者の集団が後ろを付かず離れず付いて来る。

今から15年ほど前にイギリス留学をした時の話です。

渡英して数日、私は大学が始まるまでの時間で
1人で地図を頼りに街を探索していました。

今考えると英語もおぼつかないのに
1人で軽率だと思うけど、念願の留学で
憧れの英国だったので興奮していました。

歩いて歩いて地図で道を調べたり寄り道したり、
黙々と時間も忘れて歩き続けました。
そして段々と日が暮れて、あっという間に辺りは暗闇。

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夕闇の中、危ないかも、早く大通りに出なきゃと
歩き続けていると、10mくらい後ろに4人くらいの若者の集団が
歩いているのに気がつきました。
彼らはずっと私の後ろを付かず離れず付いて来る。
早歩きをしても道を渡って反対側の歩道に行っても
付いて来る。時々こっちを煽る様な言葉を投げかけて来る。
私は怖くて心臓は喉までせり上がり、体は震え上がっていました。

黙々と懸命に明るい方へと歩いていると
後ろから車が来て私の横にピタッと止まり、

「ヤオイ!!ヤオイ!!ソーリーソーリー」

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と明るい声で話しかけられた。
やおい?!っとビックリしつつよく見ると、
それはブラック・キャブ(イギリスの特別な免許のいる
堅実なちょい高めのタクシー)で、
顔を出した運転手さんは身振りで乗れ乗れと言っている。
ブラック・キャブの知識はあったし、
私はとにかくその場を離れたくて渡りに船と乗り込んだ

走り出すとキャブの運転手さんが笑いおながら、
「君、日本人だろ?少し前に君と男の子達の横を1回すれ違ったんだ。
それ見て危ない感じがするなと戻って来てたんだよ。」
と説明してくれた。
“ヤオイ”は“やよい”と発音したつもりで、
友人の日本人女性の名前であり、
それを友達のフリをするために使ったという事だった。

運転手さんはフラット(アパート)に1本で
帰れる路線の駅まで送ってくれて、運賃を渡そうとしたら

「客を乗せたんじゃない、友達を乗せたんだ。日本人は友達だよ」

と断られた。
あの時は十分なお礼も出来ないまま別れてしまったけど、
今元気に生きてられるのもあの運転手さんのおかげだと思っています。
運転手さん、本当にありがとうございました。
夕闇に響く「ヤオイ!」の言葉は、私にとって「姫!」と同意語です。

そうでしょう?とても格好良く頼もしかったです。
恥ずかしくて書かなかったけど、車内で
「この辺は夜歩いちゃいけないよ、
特に君みたいなキュートな子はね」
という台詞まで…。緊張を和らげようとしてくれたんだと思うけど、
正にナイトの様でした。

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