今年中学生になった娘が、「はい。オヤジさん」と  バンダナで包まれた弁当箱を手渡した。

俺は高校までずっと都立で給食だったし、
大学も学食やらコンビニやらで済ませて来た。

母親の手作り弁当の記憶なんて、運動会か遠足、
それも遠すぎて覚えてない。

就職してからも社食が当たり前で妻も俺に弁当を作ったことはない。
俺自身も、弁当箱持って歩くのも荷物になるし
、弁当への思い入れも何もなかったある日、
今年中学生になった娘が、

「はい。オヤジさん」(娘は俺をこう呼ぶ)

と、バンダナで包まれた弁当箱を手渡してきた。
「なんじゃ?これ?」と俺が言うと

「だって、今日オヤジさんの誕生日じゃん」

と・・・。俺、絶句。

「何だ、お前弁当作ってくれたのかよ。」

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「食えるのか?」

恥ずかしさのあまり悪態をついてしまった。だが、娘は

「一生懸命、早起きして作ったよ」

と笑顔だった。素っ気無い顔しときながら、
気になって、弁当箱の中身を会社について確認したら、
ご飯には、鮭フレークでハートが描いてあった。

おかずはハンバーグとウインナーと、ベーコンポテト。
俺の好きなチーズも入っていた。 胸が詰まった。
2450グラムと小さく生まれてきた日のこと夜中熱を出して
夜間診療所に駆け込んだこと運動会の徒競走で転んだこと
父の胸に幼い日の娘の姿がよぎる。

あいつ、こんなに大きくなりやがって。

食べた弁当の味は、しょっぱい。勿論俺の涙の味だ。

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