学生時代のアパートの隣に嫁が住んでいた。ある日、男の怒鳴り声とガタンガタン音がし始めた

学生時代、一人暮らししているアパートの隣の部屋に嫁は住んでた
隣に綺麗なお姉さんが住んでるってだけでドキドキする毎日
たまに廊下やベランダで挨拶するだけでその日一日ハッピーな気分だった
後からわかった事だが、嫁は父親からの暴力がひどく、
母親にコッソリ部屋を借りてもらって隠れるように住んでいた

ある日、いつも静かな嫁の部屋からちょっと大きめの話し声が
最初は普通だったけど何かを言い争うような感じになって、
その内男の怒鳴り声とガタンガタン音がし始めた

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良くないと思いつつベランダから身を乗り出して部屋を見る
カーテンは開いていて、うずくまった嫁と
その嫁に蹴りを入れ続ける男が見えた
慌てて玄関に回ってチャイムを鳴らすが出てくる気配はなく、
怒鳴り声と物音が徐々にエスカレート
警察に電話しつつベランダから様子を見ると髪の毛を掴んで顔を上げさせ、
ビンタをしていた
顔は腫れて、口から血も出ている。それをそのまま警察に報告

警察が到着するまでどれくらいかかるかわからないが、
見た感じ嫁はグッタリしててまずいと思った
ベランダの縁を乗り越えて嫁宅のベランダへ侵入、
窓越しに男へ暴力をやめるよう訴えた
男は俺の姿を見るとさらにキレて窓を開けて文句を言ってくる、ひどく酒臭い
警察を呼んだから大人しく待ってるように伝えると俺に殴りかかってきた
これでかっこ良く返り討ちにできればヒーローだったんだろうけど、
俺はケンカなんかしたことない

ひぃ!痛い!とか言いながら逃げまわってかっこ悪いなんてレベルじゃなかった
数発殴られたところまでは覚えてるけど、気が付いたら警官が数人周りに立っていた
2年後、かっこ悪い貧弱ヒーローは生意気にも
悲劇のヒロインと一緒にやっすい結婚式場に立っていた

暴力父とはその事件のあとも3回モメたが、
俺の最強必殺技「音速110番」で撃退
計4回の警察沙汰で前歯の欠損、手首の骨折、
おびただしい量の鼻血、無数のアザ、すり傷と
それなりにダメージを負ったが最初の事件以降は嫁は
ノーダメージで守り抜いたので少しはホメてもらいたい

嫁は小さい頃からの暴力でトラウマと言うのかPTSDと言うのか、
半分壊れてるような状態だった
ちょっと頭を掻こうと手を上に上げるだけでビクっとするようなそんな感じの
かたや俺は嫁に会うまで女性とまともに接した事がない小心者

最初の報告で暴力をやめるよう訴えた、
と言っても実際は水晶占いの占い師みたいに手を微妙に前に出しながら

「あ、えと、その、やめ、や、やめた方が、そのあのえっと」

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みたいにビックビクな小者丸出し男
そんな俺がスマートに口説けるはずもなく、
嫁も嫁で当時は普通じゃなかったから進展も何もなく数週間が過ぎた

でもある日、帰宅するとアパートの廊下に嫁が立っていた
俺の帰りを待っていたらしく、
話を聞くと嫁の母が父に暴力を振るわれて怪我をしたから
実家に様子を見に戻りたい

でも父が怖いから行けない、
他に相談できる人がいないから一緒に行って欲しい、と
嫁母は頭に包帯巻くほどだったので、アパートへ連れて行こうとしたが、
もっとひどい目に合うから、と拒否

ヘタレな上に学生だった自分にはどうする事もできず、
嫁と一緒にアパートへ戻った
この一件から嫁とちょこちょこ話すようになった

しばらく経って、やはり怪我をした嫁母の様子を見に一緒に実家へ
俺が来た事で嫁父は逆上してしまい、
前歯とお別れする事になった
嫁父は警察にお泊り、嫁母は入院、泣きながら俺に謝る嫁、
泣きながら大丈夫だと言う俺
嫁はボコボコにされただけの俺を頼もしいと言ってくれて、
前歯と一緒に童貞ともお別れする事になった

その後、時間をかけて嫁母を説得して離婚させる事に成功
それまでに骨折したり鼻の穴からではなく、
鼻の横の辺りから血が出てくるという珍しい鼻血を出したりもしたが
無事に嫁父と縁を切った

すでに就職していた俺は安月給ながらも
男手のいなくなった嫁と嫁母を養うためにプロポーズ
就職したてで金が無いため二人だけのやっすい式を挙げ、
見違えるように明るくなった嫁と嫁母と新しい生活を始めた

と、こんな感じで再来月には結婚10周年を迎える
思ったより長くなってしまい申し訳ない、以上です

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