前の職場の上司からストーカーにされていた嫁を助けてプロポーズした

俺:当時31歳。小さいけど自営しててフツメン。
嫁:当時誕生日前で21歳。身長高めの結構細身。美脚色白で可愛いと思う。どちらかというと地味子。
A子:俺と一緒に仕事してる後輩。25歳。嫁の幼馴染み。結構明るくて姉御肌。
B男:俺と一緒に仕事してる仲間で友人。31歳。

パッと見チャラそうで、よく狩野英孝に似てると言われてる。A子と恋仲。
Cさん:警察の人。理解のあるおじさん。
上司:嫁の以前働いていた所の上司。
44歳。ロ@コン野郎でヤンデレストーカー。

仕事が軌道に乗ってきて人手が欲しいと思っていた時、
A子が「幼馴染みに良い子がいる」と紹介してくれたのが出会い。
最初の印象は足の長い長身スレンダーな子だな、としか思っていなかった。
正直仕事が出来れば良かったし。

嫁は結構仕事に貢献してくれた。
元々医療事務で働いていたらしいんだが、結構黒い病院で働いていたらしく
倒産まではいかなかったらしいが警察が入っててん
やわんやした結果辞めたらしい。
その後は事務だとかパチ屋とか飲食店とかのバイトを掛け持ちしたりしながら
転々としていたと聞いた。
だからかは分からんが接客対応とか素晴らしかったし、
取引先とかにも好印象で頼れる存在になっていった。

仕事場にも業務内容にも慣れてきた頃、嫁の様子が少し変わってきた。
仕事中は問題なく働いてくれるんだけど、終了して帰宅する時間になると
なんだか落ち着きがなくなってるというか、
しきりに外を確認したり携帯を見ては顔を強張らせたり。
「彼氏でも待ってるのか?」と気楽に聞くと複雑そうな顔で否定はするんだけど、
それ以上は何も言わないし、プライベートの事まで首を突っ込んじゃいけないと思ってスルーしてた。
幼馴染みでもあるA子には何かしら言ってたらしくて、数日後位から2人一緒に帰宅するようになってた。

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それから暫くした日、仕事終わりにB男と飲んでた時
嫁の最近の様子についての話になった。

俺「最近嫁さん、帰り際になると様子が変になるよな」
B男「あれ、俺さん聞いてないんスか?」
俺「え?何をだ?」
B男「まぁ俺も直接本人から聞いた訳じゃないし、A子がなんとかしてやりたいって
言ってたのを聞いただけだから詳しくは知らないっすけど…」

話によると、どうやら嫁は以前働いていた所の上司にストーカーされていたようだった。
でも又聞きの又聞きになるし、詳しい話は分からなくて、その後はずっとモヤモヤしてた。

その飲みからまた数日して、
休憩時間に珈琲を飲んでいたらA子と嫁が話しているのを見つけた。
いつものほんわかした雰囲気じゃなかったから、
悪い気はしたけどこっそり聞き耳を立てた。
どうやらB男が言ってたストーカーとやらについてだった。

A子「あいつ警察に注意されてたんじゃなかったの?」
嫁「そう聞いてたんだけど…アドレスも変えてるのにメールとか着信とか凄くて…」

A子「もう一回警察に行って話してきた方がいいって!」
嫁「…でも、実害ないとか言われるかも。あんまり警察信用出来ない…」

A子「まぁ、注意だけってなるとね…。でも、嫁に何かあったら嫌だよ」

分からない事も出てきているけど、どうにも良い話じゃない。
でも深刻そうだったし、A子が言うように何かあったら大変だと思って、
無理やり話に混ざっていった。
最初は2人ともビックリしてたけど、A子が俺にも協力してもらえと嫁に助言してもらい、
半ば無理やりだが仕事終わりに嫁と飲みに行く事になった。

周りに気を配りながら申し訳なさそうに話してくれた内容は結構凄かった。
以前の職場の上司は嫁に好意を持ち、
最初は話とか飲み会で一緒に飲むとかくらいだったらしい。
けど何処でそうなったのか、上司は嫁と結婚すると信じてやまなくなって
勝手に職場に「交際している」と公言。
交際なんてしてない嫁は全力で否定したが、
噂はどんどん広がり「嫁が照れているだけ」という感じになったそうだ。
働き難くなった嫁は自主退社したが、
そこから上司は調子に乗り出したのかストーカー行為を開始。

家の前に来るまで待機、携帯に着信やメール、嫁の新しい職場に凸。
それも全て「教えていないのに」だ。
どうやって調べているか分からないが、
嫁の事を知り尽くしていると言わんばかりに嫁の前に現れる。
着信に至っては、履歴の最後が2時間前だったりする勢い。

その上、どうやって誑かしたか分からないが嫁の母親に取り入ったらしく、
帰宅すると嫁の部屋に上司が入って待ってる、という事もあったそうだ。
あまりの恐さに一人暮らしを決意、誰にも言わず引越しして、この会社に就職。
だが、先日から引越し先にも現れるようになった上司。
何処にいても視線を感じる気がしてしまい、仕事している時くらいしか心が落ち着かないんだそうだ。

嫁「もしこの会社にもあの人が来てしまったら申し訳ないです。
もしそうなったら被害が出る前に辞めさせて下さい」

そう言って涙を堪えてた嫁の姿を見て、見た事もないその上司に腹が立った。
今思えばこの頃には嫁が気になっていたのかもしれないが、当時は分からなかった。

その話を聞いてから、俺は自分に出来る事をした。
俺名義で会社から近い所に住む場所を探し、
そこに迷惑がかかると頑なに首を振る嫁を半ば無理やり住ませた。

住所変更はまだするなと強く話し、
暫く自分の家には帰らないよう伝えた。
行き帰りやどこか外出する時は、俺やA子、B男に声を掛け、
1人では行動しないようにさせた。
携帯も番号やアドレスを変えさせ、
上司に繋がっていそうな人には教えないようにした。
一緒に警察に行き、前に相談した事、現在の様子について話してきた。
そこで話を聞いてくれたCさんが良い人で、
何かあったら連絡してくれと言ってくれた。

又、気分転換も込めて美容室に行く事も勧めた。
当時の嫁は綺麗な黒髪を背中まで伸ばしていたが、
髪型が変われば少しは目くらましになるんじゃないかとも思ったからだ。
焦げ茶色でボブカットされて戻ってきた嫁は恥ずかしそうに
「何だか頭が軽くて落ち着かない」と言っていたが、
個人的には結構似合ってると思った。

ちょっと反れるが、美容室に行った時やその他の時に俺が疑問に思った事がある。
うまく言えないが嫁は「自分の欲」というものがほとんどない。
というか「自分」というものが少な過ぎる気がした。
美容室に行ってどんな髪型にしたいと聞かれても「特にない」、
服とか買う時も「特にない」。
好きな食べ物を聞いても「しいてあげるならジャガイモ?」と、
何故か疑問形付きだし食材。

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付き合っていく中で分かったんだが、
嫁は両親から酷い虐待を受けて育ってきたACだった。
ケア・テイカー(世話役)っていうタイプのACらしい。
ググってたら該当するものが多くて納得した。
どう考えても逃げた方がいい状況なのに逃げずに我慢してたのも、
顔色を必要以上に窺うのも、
すぐに謝ってくるのも嫁がACだったから。
当時は何でそこまで我慢したりするのか理解出来なくて、喧嘩はしなかったがモヤモヤした。

暫くの間、俺名義のアパートで一人暮らしする嫁と、
会社に寝泊まりする回数が増えていった俺。
傍から見たら謎の関係だったんだろうけど、
俺としては守れる可能性が高いこの方法に満足してた。
飲みに誘う事も増えたし、嫁の表情も穏やかになっていくのが分かったから。
お礼と称して嫁のご飯を御馳走になる事も増えた。
結構飯ウマで、俺は完全に胃袋を掴まれた。
その時点で完全に嫁の事が好きになってたよ。

数か月が経ち、職場に凸や着信等がなく落ち着いた日々を過ごしていた。
嫁も俺も皆も、逃げれて良かったねっていう和やかな雰囲気だった。
その頃は嫁も俺に好意を持ってくれてたみたいで、
交際はしてなかったけどいわゆる「友達以上恋人未満」みたいな感じだった。
因みに決して手は出してない。
出したくなかった訳じゃないけど、まだ若干ながらも
男に対する恐怖感があるのを知ってたから出せなかった。

そんなある日、2日間の休みにA子と少し遠くのショッピングモールへ
出掛けて来ると嫁が言ってきた。
1人じゃないしあれから数か月も間が空いていて
気が緩んでしまった俺は快く承諾してしまった。
今思えばあの時止めるか俺も同伴すればよかった、と思ってる。
たまたまか狙っていたのか、結果としてはその時に事件が起きてしまった。

急ぎではない仕事をB男と事務所で一緒にやっていたら、会社の方に電話が。
取ってみると慌てた様子のA子が何やらパニック状態で話してきた。
嫁に何かあったと瞬時に把握した俺は携帯ですぐ掛け直す事を伝え、
俺の反応と漏れていたA子の声に察したB男と一緒に車に乗り込み
ショッピングモールに向かった。

B男に運転してもらい、俺はA子に電話して少し落ち着くように諭しながら内容を聞いた。
ショッピングモールに着いて色々見て回った2人は、お茶をした後トイレに。
トイレの外で待っているという嫁に謝り用を足しに中に入ったら、数分後に嫁からメールが。
内容を見るとひらがなで「あいつがいたにげる(あいつがいた、逃げる)」とあったそうだ。

急いでトイレから出ると待っていた辺りに嫁は居なく、
周りを見渡してもそれらしき姿は見えない。
それで電話してきたと必死に話す。
何度も謝るA子を落ち着かせてすぐ合流する事を伝え、すぐにCさんに連絡を取った。
すぐに人手を連れて来てくれると言ってもらい、ショッピングモールに着いてA子と合流。
少ししてからCさんと警察の人と合流し、辺りを探す事に。

探しまわっていた時に変な人を見たという人を発見し、
話を聞くと間違いなく嫁と上司と思わしき男だった。
走って逃げる嫁と、その後を追いかけるような男がいた、と。
向かっていった先を聞くと、偶然なのかその方向には駐車場へと続く道だった。
嫁はこのショッピングモールは初めていくと言っていたから
本当に偶然だったんだろうが、
人気のない方に進んでいた事を知った俺は目の前が真っ暗になった。

急いでCさんや警察の人達に伝え駐車場に向かい辺りを探すと、
奥の方で警察が叫んでいる声と車のエンジン音が聞こえた。
そっちへ走っていくと、後部座席に横たわっている嫁と
罵倒する言葉を繰り返す男がいた。
そして警察が止めるのを他所に車を出し、駐車場を後に。
目の前で繰り広げられている状況に、俺は間抜けながら呆然としてしまった。
情けない話だが、何も行動出来ず車が出て行くのを見てしまっていた。

バタバタする現場の中Cさんが指示をしながら俺に近付き、
この後は警察が何としてでも捕まえて保護すると伝えられ、
警察署で待つ事になった。
何も出来ない惨めさと段々募ってくる苛立ちに混乱する俺をA子やB男が宥めてくれた。
どうして何も出来なかったのかと自分を責めたよ。

暫くして、正直何時間経ったか分からないんだが。
上司の男を捕まえ、嫁を保護したとの連絡が入った。
凄く嬉しかったし安堵したんだが、その後に続いた言葉に俺は愕然とした。
嫁は負傷して病院に運ばれていた。
暴行しようとした上司に抵抗して、左目や腕を切られたり殴られたりしたそうだ。

どうやって病院に行ったか分からないが、病室に着き包帯だらけの嫁を見た時は泣いてしまった。
俺が付いていたらこうはならなかったかもしれないと後悔した。
面会してもいい事になり、嫁の隣に座った時はまともに顔が見れなかった。
そんな俺に嫁は「ごめんなさい。そして有難うございます」という言葉を言った。
何で謝るのか、何でお礼を言われるのか分からなかった俺はパニックになった。

俺「俺は嫁さんを守れなかった。謝るのは俺の方だよ」
嫁「そんな事ないです。俺さんは私に沢山沢山良くしてくれました。沢山沢山助けてくれました」
俺「でも、君はこうして怪我をしてしまった」
嫁「俺さんが、戦う事を教えてくれたんです。それに1人じゃないって教えてくれました」
嫁「殴られて車に乗せられた時、私はもうダメなんだって、逃げられないんだって思いました」
嫁「でも俺さんの声が聞こえたんです。来て、くれたんですよね?」
俺「…あぁ。でも、俺は何も出来なかった」
嫁「それだけで、勇気が、力が出たんです。どうしても俺さんや皆の所に戻りたいって思ったんです」
嫁「でも、迷惑掛けてしまった…。だから、ごめんなさい…」

泣きながらも笑顔でそう言ってくれた嫁に涙が止まらなかった。
もうこれ以上傷ついてほしくないって思った。
もしこの先に何かあったら、今度こそは守ろうって思ったんだ。

毎日嫁のお見舞いに行き、退院した日に告白。
そして短いかもしれんがその半年後に結婚した。
プロポーズした時は泣いて喜んでくれた。

その後というか、現状。
逮捕された上司の男は傷害罪や銃刀法違反、
警察にも手を出したらしくて公務執行妨害など色々付いてお縄。
家宅捜査したら壁や机の上に大量の嫁の隠し撮りがあったらしい。
確認する為に行ったんだが、俺やA子、B男と一緒にいた時の写真もあったから吃驚した。
結構周りに気を張ってたんだが、どうやって撮ってたんだか。

で、執行猶予だか金を積んだんだか分からんが、
一旦釈放って事になり警戒してた。
そしたら先日Cさんから連絡があって、交通事故で死んだらしい。
それが以前嫁が一人暮らししてた場所の近くって聞いたから、
まだ狙ってたんだと恐ろしくなった。
詳しい話は嫁にはしてないが、死んだって事だけ伝えたら安心してた。

嫁は怪我も治り、少しずつ前向きになっている。
切られた左目も傷跡が残る事なく回復したが、
1mm横にそれてたら失明していたらしい。

腕とかに若干切り傷の跡が残ってしまったのが悔しいが、
本人はあまり気にしていないようだ。
「私よくヘマして怪我しちゃいますから」って笑ってた。
だからって料理中に足に包丁落として切ったのはヘマと片付けたくない…。
嫁よ、もう少し気を付けてくれ…本当に焦ったんだからな。

あの事件が解決して結婚してから、俺達は引っ越した。
あまり触れてなかったが、前も今も何故かずっと敬語でさん付けされている。

嫁は職場を辞め、自宅近くの飲食店でバイトをしている。
俺の会社も人が増えたというのもあるが、
元々あまり身体が強い方ではない嫁。
本当は専業主婦になってほしかったが、
「俺さんだけに負担を掛けたくない」という事だったので転職した。
昼間の時間帯だから、帰ったら嫁が居て飯が出てくるという幸せが嬉しい。
家事は分担してる。嫁に頼りっきりは悪いからな。

纏めようとしたがうまく纏まらなくてスマン。
内容が内容だし、ネタだと思う人はそれでも構わない。
俺もこんな漫画みたいな展開になると、あの頃は思わなかったからな。
今日は嫁の代わりにご飯を作る予定だ。
嫁みたいにうまくは作れないがな。

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