ラーメン屋が潰れた話を書く
コロナが流行る前、近所におっさんビジネスマン御用達の
ラーメン屋があった
そのじいさん店主が急逝した
もうあのラーメンは食えないのか…と寂しくなったが、
なんと息子が継ぐらしい
半年の改装期間を経てついに二代目ラーメン屋がオープン
早速入ったらオーガニックやら健康志向にかぶれてて唖然とした
飴色だった木目のカウンターは
カフェテラスにあるような真っ白いテーブル席に
「チャーシュー麺880円」
って手書きのメニューは
「豆と蕪のコンソメ仕立て麺※女性にも大人気!」
みたいなのに変更
チャーシュー麺ひとつ頼んだら、
薫製ポークのなんちゃらみたいな注文が通った
前は男性スタッフが多かったけど半分以上が若い女性スタッフになっていた
ものすごく場違い感があって居心地が悪かった
待つ間同じように縮こまるサラリーマンや、
店に入ってぎょっとして出ていくサラリーマンを何人か見送った
で、いざ出されたチャーシュー麺には
正体不明の葉っぱが浮かんでいた
先代が使っていた使い込まれた器ではなく真っ白い器に、
パクチーとかそれ系の腹も膨れない香草がたっぷり浮かんでいた
噛めば噛むほど苦いし土臭いし筋は残るし、
悪いけど追加のメンマを食べた後の皿に引き上げた
そのメンマも潰した豆腐に刻まれたメンマが混ざって
、更にオリーブぶっかけた白和え?になってた
これもぬるぬるして不味かった
なによりスープがクッッッソ不味い
白いテーブルでぎゅうぎゅうに背中を丸めたスーツのおっさん達が、
土臭い、草むしり後の空気を噛んでるよう、
と言ってて深く同意した
塩気も出汁もコクもない浮いてた香草の味そのもののスープを
飲む気にはなれなかった
薄いカッスカスのチャーシューと麺を流すように食べて会計
確か1200円くらいだった
二代目の店は近所でも不味いラーメンだと噂が流れ、
元々通っていたビジネスマン達はどんどん離れていった
かと言って店の周りはカラオケ店と飲み屋と
会社事務所しかないような場所
オーガニック志向の女性客が埃っぽい
路地裏にわざわざ来るはずもなく、
まもなく二代目の店は閉店した
表向きは感染症流行による臨時休業、
からの経営難で店を畳む、と言う感じ
しかしコロナが来なくても同じだったと思う
最近になってぼんやり聞いたのが、
二代目はラーメン屋なんか継ぐつもりはなかった
しかしジムで知り合った年上の女性にコロッとやられ、
どうにか結婚してもらおうとあれこれ貢ぎ
彼女の「将来自分の店を持ちたい」
の夢を叶えるため、なら俺がラーメン屋を継いで
将来二人の店にしよう!となったらしい
蓋を開ければ嫁にデレデレで、
二人の店どころか完全にオーガニック志向の
嫁のための店になってたと
店を畳んだあと即離婚された言うところまでは聞いたが、
二代目がそのあとどうなったかは分からないらしい
店はシャッターが降りた状態でずっとそのまま
が、嫁さんは離婚したあとも普通に前のジムに通っているらしい
それもすごいなと思った
美味いラーメン屋が潰れて残念なのと同時に、
あの土臭い香草は何だったのかだけ気になる