プチだけど、友人だと思ってた相手の本音を知ったことが
自分にとって結構な修羅場だったのを思い出して書き捨て
私は30過ぎまで、かなり重症のお花畑だった。
10代でクリエイティブ系のとある職業を志し、
20代は夢のために使い切った。
友人たちが就職活動に奔走するのを横目に
華々しいドリームを語り、
自分は世界に羽ばたくんだと大言壮語して
マニアックな学校に通い、
親に金をせびったり借金したりして、
勉強のため海外にも行った。
そしてある日私は唐突に、
自分には才能がなく夢の職業は無理、と気付いた。
残ったのは、職歴なし資格なし30代で、
あるのは借金とマニアックな知識・技能だけの独身女
(しかもデブス)。
自分を客観視し、やばいやばいやばい!と
真っ青になって就職活動を開始したものの
当然まともな職は決まらず、一時は病みかけた。
しかし半ば惰性で何社も受け続けた日々の中で、
奇跡的に「面白そうな奴だ。うち来る?」
と言ってくれた会社があった。
飛びついて就職。
あとのない人間の必死さで恥も外聞も捨て、
周囲のあらゆる人に縋りついて
社会人の初歩の常識から教えを請い、
非常識さ加減を笑われつつも
奮闘の果てに試用期間を乗り切り、
何とか正社員としてやってく目処が立った。
そして以上の経緯の間、
何故か細々と続いていた高校時代からの彼氏に、
「やっと自立できた!私が馬鹿だった!
もう夢は見ない!借金も自分で返す!
家事もする!だから結婚して!」
と土下座の勢いで迫ったら、
「オッケー」と言ってくれた。
就職して半年で結婚。
それから数年の間に続けて子供がうまれ、
3人の子持ち(双子含む)になった。
産休をいただいて働き続け借金も返し切り、
夫の仕事も順調で、
今は兼業主婦として結構な幸せな生活をしている。
そして少し前に家を買ったことを
長い付き合いの友人にファミレスで言ったら、
グラタン皿(中身入り)をひっくり返されて罵倒された。
散々好き勝手して遊びまわってたくせにふざけるな、と。
友人の言では、彼女はずっと、
私の末路が悲惨なものになるはずだ、
と信じて付き合いを続けてきたそうだ。
夢が挫折して、
まともな仕事に就けず恋人に見捨てられ、
孤独で貧しい将来に怯えた私が自分を羨ましがり、
堅実な人生を歩んでこなかったことを
後悔することを予想してた、と。
それが30過ぎて急に就職したの結婚するのって、
どれだけ人生舐めてるんだ!と怒鳴られた。
……言っておくと、嫉妬ではありえない。
友人も子持ち共働き主婦。
素敵な旦那さんと子供がいて、家はとっくに購入済み。
何か私を妬むような要素は、本当にひとつもない。
それを言ったら、もっと凄い目つきで睨まれた。
自分は20代からコツコツ努力して手に入れた生活なのに、
その20代を極楽トンボで過ごした人間が
今さら同じ場所にこようとすることが許せない、
あんたなんかのたれ死ねばいいんだ、それが相応だ、と
吐き捨てるように言われた。
それっきり会っていないし、連絡もない。
長いこと、夢を語るたびに
笑顔で応援してくれた友達だった。
彼女と話すと、いつも心が軽くなった。
その彼女を思い出すたびに凹む。
凹んだ流れで、
何で私と結婚してくれたの?と夫に聞いたら、
「え?何で?ずっと付き合ってる彼女から
結婚しようって言われて、俺もそろそろかなー、
と思ってたし、断る理由がないじゃん」
と不思議そうに言われた。
10代でこの人と付き合えてなかったら、
私は友人が言った通りの未来を
迎えていたかもしれない。
デブス30代低収入借金付きの女と
結婚する男性は少ないと思うし、
そもそも夢を捨てて就職を考えたとき、
相談にのってくれたのがこの人だった。
この人が学歴をつけ安定した職について
キャリアアップした後も
低スペックな昔からの彼女をポイ捨てしなかったのは、
多分すごい幸運だった。
ここまでが前提。
強いて考えないようにしてるけど、
実はあの決別の時から時々、
本当は心の底から彼女の言う通り、
自分は夫に捨てられて職も見つからなくて
惨めにのたれじぬ方が、筋が通る気がしたりする。
夢を追った20代は、本当に本当に、楽しかった。輝いてた。
沢山お金使って、目指した分野のプロの人たちと交流して、
自分ももう業界の一員って気分で、
はしゃぎまわって偉そうな口きいて、
あの日々の代償が野垂れじになら、それも納得がいく、
むしろあのころに戻って、
夢を見続けて野垂れじにルートを
辿りたいとすら思う日がある。
夢を見ながら、しにたかった。
思い出すたび、そんな思いがよぎる。
だけど、そんな過去のことは何も知らずに、
お母さんお母さんってくっついてきてくれる
子供たちを見ると、この子たちの存在を
否定する人生なんかあり得ない!!!!
とも思う。
普段は考えないようにしてるけど、
夢と彼女と過ごした20代を思い出すたびに
むねがざわつくって言うか波立って、
その後は心がずしんと沈む。
もう一度だけ彼女に会って思い切り話してみたいな、
と思うけど、
多分、彼女と話す機会は、
もう今後永久にないんだろうなあ。