長い長い愚痴になります。
俺が幼い頃、父は数々の粗相を働きついに母に見捨てられ、
俺は母に連れられて家を出ました。
浮気、ギャンブル、暴力、不潔、家事育児不協力。
最初からそうだったわけではないそうですが。
母は日頃から父を悪の見本市だと言って、
「お前はああはならないでくれ」と言い聞かせ、俺を育てました。
生活は大変でしたが、俺も父の醜態を見て育っており、
子供心ながらに自分の生活と父の醜態を比較しながら、
善きように、より善きようにと心がけて生きるようになりました。
それまでが大変ひどい生活だった反動やトラウマもあるのでしょう、
いつしか俺の夢は「温かい家庭を作ること」になって行きました。
父とは正反対の男になることでそれは実現できるものと信じていました。
当時はこの言葉はありませんでしたが、
俺は人よりだいぶ早目に「婚活」を始めました。
もちろんこの時点でまだこどもなので、ここで言う婚活とは、
将来の結婚に向けて経験と自分磨きを重ねる、と言う意味です。
高校生の頃は失敗しました。
紳士的であろうとするあまり、
今で言う所の「中二病」と周囲からは扱われていました。
紳士と言う言葉を履き違えていた面がありました。
大学生活のある頃です。
先輩に話があると呼ばれたファミレスで説教をされることになります。
言われて見れば納得の話でした。
その頃の俺の口から出る言葉の大半は、
温かい家庭を築く、とにかく早く結婚をしたいんだ、
と俺にしてみれば将来の夢の話をしていたつもりが
他人から見れば「大学に嫁探しにきた男」のように見えたと言います。
それに、この頃にようやく自覚することになるのですが、
どうやら俺は周囲の人間に比べ、基本的な容姿がひどくまずいのだと。
そのような男に、この上女好きというイメージがつけば夢にとっても致命的だと、
いろいろな先輩や同期にアドバイスに従い、
女性関係は自然な流れにまかせることにし、
今は現実的な基盤を固めるために努力することにしました。
元々無理していい大学に入ったのはそのためでした。
甲斐あってか、なんとか悪くない就職口をまずは獲得しました。
生活が軌道に乗った頃、俺は本格的な婚活を始めることになります。
まずい容姿はある程度身嗜みでカバーすることができる、
と言う助言に従い人一倍気遣いました。
また魅力ある人間になるべく、
多くの趣味を見つけて知識と感性を養うことを覚えました。
しかし、恋敗れる原因のほとんどは容姿を指したものでした。
相手から直接言われたこともあります。
しかし当時の同僚からは「ある年齢を越えたら
最低限清潔にしていれば容姿は関係ない。むしろこれからが勝負だろ」と励まされ、
これが長らく俺を支える言葉になりました。同僚や先輩には今でも感謝をしています。
確かに、年齢も30を数える頃には話す相手の
俺に対する当たり方に変化が現れたように思います。
若い頃ではあからさまに「これはない」という態度をとられることが多かったのが、
この頃ではまずはキチンと話をしてくれる。
しかし今度は別の問題が姿を現しました。
「経験のなさ」でした。
ある見合いの相手にハッキリと言われました。
「そんな年齢になるまで交際の経験すらないのは、
何かしら問題があるからなのでは?」
またあるときは、どうやってそこまで調べ上げたのかはわかりませんが、
当時の俺でさえ完全に不明だった父の居場所を探りあてて、調べられ、
「あの親の子はちょっと」と言われたこともありました。
端的に言って、折れました。
俺はあらゆる友人に泣き付き、(容姿以外の)俺の問題とは何だ、
俺の自覚のない何かがあるのでは?
父のDNAからは逃げられないのか?と荒れました。
友人たちはまるで口を揃えたように、
俺の人間性に問題を感じたことはない。
特殊なトラウマや、夢を抱えたやつではあるが、決して悪いやつじゃない。
と励ましてくれました。
とは言え、先の二つの欠点は最早自力ではどうにもならないことでした。
その内、「婚活」と言う言葉は一般的となり、多くの人が幸せを求めていると知りました。
同時に、俺は父の存在や母の願いに縛られすぎではないのかと思うようになりました。
確かに幸せになることは、俺自身の願い・夢でしたが、
その背景に父の醜態や、母の言葉が強くこびりついていたのも事実です。
俺は俺自身が幸せになるのは、俺自身とその家族に
なってくれるはずのまだ見ない奥さんのためだと改めて認識しました。
それからしばらく、婚活は続けましたが、無理をすることや、
肩肘張ることをやめた結果、
気楽に臨むことができるようになったと思います。
結果は奮いませんでしたけどね。
時間が経って、昨日のことになります。
職場で上司と雑談していたときのことです。
この上司とは付き合いが長く、年齢もそう遠くないことから、
昔からよくして貰っています。
なので、雑談にもよく俺の婚活の話が登場します。
いつものようにそう言った話をしていると、
俺がもうずっと相談所に通い婚活をしていると知った
今年入ったばかりの新入社員の女の子がこう言ったのです。
「まあ、歳と顔考えろって話ですよね」
上司は無言でその子を連れどこかへ行ってしまいました。
許可を得て、俺は数日の有給を取得し今に至ります。
多くの人に気を使わせてしまい申し訳なく思います。
そして、奇しくも約1週間程後に俺は45歳の誕生日を迎えます。
この書き込みをもって、俺の長い婚活と夢を終わりにします。
新しい生き方を見つけたいと思います。
思ったよりもずっと長い文になってしまいました。
読んで頂いた方も、そうでない方もありがとうございました。