I’ll Kill You!

娘と飲んでいたら、

「ねぇお父さん。私ずっとお父さんのこと殺したかったんだよ。
知ってた?」

って囁かれたのが修羅場。
それまで最近のニュースだとか
お互いの趣味の話とか普通の会話だったから思わずびびった。

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何が怖いって、殺すなんて物騒なこと言ってるのに、
娘は冷静でむしろ微笑んでさえいたってこと。
ニコニコしてる娘が急に薄気味悪くなって、
一応なんでそんなことを言うのか聞いてみたんだよ。
そしたら、「お母さんに酷いことしたから」って言われた。

身に覚えがなくて正直困惑した。
確かに結婚当初は色々あったが、
今はむしろ夫婦仲は良好で、
そう頻繁にという訳ではないが食事や旅行に行ったりもする。
戸惑いが顔に出たんだろうな。
ニコニコしたままの娘が「酷いこと」の内容を話し出した。

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「お父さんの実家に帰る時、お母さんと私を山中に置き去りにした」
「連絡手段はないし、お金もないから徒歩で街まで降りなくちゃいけなかった」
「お母さんが嫌だって言ってるのに×××した」
「私が隣に寝ていたのに×××を無理強いしてた」
「お母さん泣いてた」

話すほどに娘は生き生きとしてくるし、
なんで娘がそんなこと知ってんのか分からなくてさ
、頭がおかしくなりそうだった。
だって娘、その時1歳かそこらなんだよ。憶えている筈がない。
俺だって言われて思い出したくらいだし。
でも、憶えてるよって笑うんだよ。
姉貴が不妊で子供が欲しいっていうから、
次女を養子に出そうとしたのも憶えてた。
親父が会食の際に娘を泥棒呼ばわりしたのも憶えてた。
俺がうっかり持ち帰った薬を次女が誤飲して死にかけたのも、
タバコで火傷させたのも全部。
最初、嫁が娘に愚痴ってたのかなって思ったんだけど、
嫁がその場にいなかった時のエピソードも出してきたから、
本当に記憶があるんだろうな。

怖いし気持ち悪いしで黙っていたら、
「私、見ているからね」
「お父さんのこと、ずーっと見てるから」
って追撃されて、それでお開きになった。
今は当直を入れまくったり、休みの日も外出して極力家にいないようにしてる。
情けない話だが娘が怖い。

そんな昔のことを今更言われたって困る。
確かに俺は屑だっただろうが、今は嫁とうまくやれているし、
子供だって2人育てたんだから上々だろ?
結果良ければ全て良しって言うし。
娘の粘着具合が怖いよ。

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