転勤族にしてしまった息子には友達がほとんどできなかった。
いじめられていたわけではなかったけど、
行く先々で友達ができては引っ越しの繰り返しで交友関係がリセットされてきた。
今でこそSNSで物理的に離れても繋がる関係はあるけど、当時はない。
一度だけ、強く引っ越しに反対したことがあった。
小学3年のとき。初めて親友と呼べるくらいに仲良くなって、
うちにも何度か遊びに来てくれた友達がいた時。それでも引っ越しはした。
その後、息子は自分から友達を作るのをやめた。
息子は成長して高校、大学へ行ったが、友人関係はすべて淡白だった。
部活もサークルもやらなかったし、休日に友人と街中に遊びに行くこともなかった。
俺の知ってる限りでは女の子との付き合いもない。
学校以外では基本は家にいて本を読んでいた。
大学を卒業して息子はニートになった。
就活の際、大学は地元国立大なので、
毎回書類審査と筆記はパスしているけど、面接に行くと毎回落とされてきた模様。
それでも地道に努力はして、昨年25歳で、地方公務員の内定がでた。
だけど就職と同時に息子は家を出た。
俺と妻の知らない間にバイトして金を貯めていたらしい。
引越し先は教えてくれなかった。
引っ越しが終わって「あなた達との縁はこれまでです。」と突然の敬語調に俺らオドオドしてた。
息子は口下手なので、この日のために書いたであろう手紙を朗読して渡してくれた。
言い分をまとめると
・ろくな人生じゃなかった、ろくな青春じゃなかった
・友達はいない、彼女もいない、職もつくのに苦労した。
全ては人とまともに話せないせい
・それはなぜ?転勤族で交友関係をうまく築けなかったから。
自分は人との話し方、人との距離のとり方、
友達同士のノリ、それら全てを知らない。
知る機会さえあなた達に奪われた
・高校、大学って一人でいて、あなた達には
それが居心地良さそうに写ったかもしれないけれど、
そういった友達の存在を思春期の子供が諦めていたと思う?
それでも友達を作る勇気がなかったんだよ?
長く友達がいなかったせいで、人とまともに話せなかったんだよ?
・生きていたら理不尽なことはいくらでもやってくる、
自分より不遇な人だって世の中にはいる、それは理解できる。
それでも子供の気持ちを蔑ろにして引っ越すことが親のすること?
・あなた達にも親の都合というものがあったんだろうし、
今自分が言っていることは(自分がこんな性格になってしまったことを)
あなた達のせいにして逃げているだけの責任転嫁にすぎない、
それもわかっている。
・だからもう、誰とも関わりたくない、親であるあなた達とも。
これから先は仕事先の人間関係だけで十分。
就職先に公務員を選んだのも、人間関係が限定されるから。
・今この瞬間から他人同士。さようなら。
・なお、今日までに自分にかかった養育費・教育費は今すぐにとはいえませんが、
相当額が貯まり次第振り込みますので、お待ちください。
こんな感じに多少要約したけど、ほぼ同じことを言いました。
携帯も解約されていたし、残った息子の部屋もアルバムや
学校で使用したノートなど、生活感のあるものは全てなくなっていた。
息子が持っていった可能性もあるけど、捨てたり燃やしたりしたんだと思う。
もうこの家で過ごした過去とかどうでもいいって感じだった。
うちらの寝室にも家族アルバムがあるんだけど、
息子の写っている写真だけごっそり抜かれていた。
息子が出て行って4ヶ月は過ぎたけど、
本当に息子がはじめから存在しなかったかのような虚無感に襲われている。
25年の子育ては間違っていたのかな
住民票をたどったり、息子の職場に問い合わせれば会えるんだろうけど、
そっとしておいてあげるのが一番だと思うのでしない
以上で私の話は終わりです。酒の肴にでもしてください。
結局息子と一緒に酒を飲むこともなかったな〜と今は悲しく一人酒です。
妻はあの日以降、抜け殻状態。鬱になってるかもしれない。
今度病院に連れて行く。