フェイク入り+20年以上前のお話。

当時、産婦人科に勤めていた。
で、その頃はまだ中絶は掻爬法(そうはほう)と
呼ばれるやり方が主流だった。

ある日、一組の夫婦が胎児が死んでいることが判り、
中絶と同じ処置を施すことになった。

数日後に同意書などそろえて処置となったのだが
旦那さんがどうしても奥さんに付いていたいと言う、
これ自体は夫婦で来られた方によくある傾向なので
処置室の邪魔にならないところに控えてもらっていた。

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そして麻酔をかけて処置が始まったのだが、
麻酔薬は
オウム事件でも注目を集めたが、
人によっては自白剤のような効果があり
時々すごいことを口走る人がいて
(お母さん、私のケーキ食べたの解ってるんだから!!とか)

この奥さんも作用があったのか大声で叫んだ。
それだけならよくあることだから驚かない。

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が、奥さんの口走った内容は

「○○さん!赤ちゃん産んであげられなくてごめんなさい!!」

○○さんは明らかにご夫婦の苗字ではなかった、
聞き間違うようなタイプの苗字でもなかった。
言うなれば夫婦の苗字が『山田』なら
奥さんが言った苗字は『勅使河原』位の違い。

旦那さんは真っ青になって
そのまま処置室を出て行ってしまった。
(事務の人いわく、お金払って帰ったそうだ)

当時はまだ高校出たての看護学生だった自分は、
人の顔があんなに凄まじい形相&顔色になるのを
生まれて初めて見たので、
思わず心拍数を記録するのを忘れそうになるくらい修羅場だった。

…その後のご夫婦にどんな修羅場があったのかは噂でも
伝わってきませんでした。

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