家の隣人がヤクザ屋さんだった。妹と風呂に入っていたら、「パアァァン…」みたいな大きくて乾いた音がした。

大昔だから時効と思って書く。
30年位前に住んでいた家の隣人がヤクザ屋さんだった。
物心ついた時からあそこはそういう家だと認識していた。
誰から聞いたのかも覚えていない。
近所の人もそういう認識だったが、
この家はめちゃくちゃ地域に溶け込んでいた。

その家にな私より少し年上の子供がいて小学生だった。
奥さん(多分組長の奥さん)が、
PTA活動に協力的な人で子供会やら何やら毎回大活躍。
だから子供から人気者だった。
近所の子が急病になった時、
いち早く駆けつけて病院まで連れていったのも
この奥さん(その子の親が留守だった)。

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テレビで見るようなヤクザ屋さんと違うように思ったけど…。
「でもそういう家なんだよなー」
「実は違うんじゃ?」
と思いつつ、誰にも聞けない雰囲気だった。
たまにガラの悪そうなオジサンがうろついてたけど、
特に被害はないし、奥さんはいい人だし、
近所の人も相変わらず仲良くやっていた。
小学生の子供も、学年違うから仲良しとまでいかなかったけど、
たまに遊んだりした。
その子から貰った凍ったヤクルトが美味しかった。
そんなある日。

妹と風呂に入っていたら、
「パアァァン…」みたいな大きくて乾いた音が。
風呂だから凄く響いた。何の音か分からなかったけど、
何故か胸騒ぎがして妹を見たら妹も同じだったらしく
「お姉ちゃん今の何?」と涙目。
「まさか鉄砲?」とか言い出して、
怖くなって慌てて風呂を出た。

居間に婆ちゃんがいて、「今変な音しなかった?」
と聞いたが何も聞こえてないと言う。
そのまま怖くなって無理矢理寝たが、
私たちが寝た後警察が事情聴取に来たらしい。

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結果、やはり発砲事件だった。
お隣さんに、対立する何ちゃらが…みたいな感じ。
次の日のニュースでバンバン流れていた。
うちの近所がテレビに写っていて変な感じがした。
威嚇だったのか、被害は窓ガラスとか壁くらいで怪我人はなし。
近所の友達も音を聞いていて、警察に話を聞かれたと言っていた。
急にちょっと羨ましくなり、
婆ちゃんに「私、音聞いたのに!起こしてくれれば良かったのに」
と言ったら、怖い顔で「そんな話するもんじゃない!」と怒られた。

それからしばらく通学路の途中途中に警察官が立って警戒する日々だった。
それが本当に非日常の世界で、子供ながらに「大変な事が起きた」と思った。

そういう家だと知っていたものの、
あまりに地域に溶け込んでいるから疑っていた。
でも紛れもなく本当にそういう家で、発砲事件も起きた。
小学生の自分には衝撃的な出来事だった。

ちなみに、奥さんも子供もちょっと元気なかったけど、
しばらくすると元気になってた。
近所の人も事件直後から普段と変わらない態度だった。

いつも近所のオバチャン達と井戸端会議してた奥さん、
元気かな。

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