嫁は俺の後輩として入ってきた新入社員だった。
そして俺が教育係。
地方出身者だったため、俺の居る本社で研修を受け
最終的には彼女の実家の近くにある支社に配属されるはずだった。
ところが、出来が悪くて上司が転属にOKを出さず、
一年のはずの 研修期間が二年、三年と長引いた。
ある日彼女を叱った時、俺はお前の転勤先については行かないし、
お前の面倒を一生見れるわけじゃない。
だからしっかりしなさいと言った。
それを聞いた彼女は突然泣きだし、会社を休んでしまった。
俺は初めて嫁の気持ちに気付いた。
上司はニヤニヤしていた。
嫁が会社を休みだしてから三日後、俺は彼女に転属が嫌なら
俺の嫁という再就職口があると持ちかけた。返事はYESだった。
今のところ一生嫁の面倒は見るつもりだ。
嫁が俺のこと好きだなんて全然知らなかったので、
意識はしてなかった。
ただ、仕事できないだけで性格がよく、女の子らしいので
社外で知り合ってたら…なんてことを考えたことは事実。
だから100歩譲って俺は嫁が好きだったのかも。
ということは意識してたことになるな。
上司は厳しい人なので、俺と嫁との恋愛がらみで
転属させなかったってことはないよ。
ただ、嫁が俺のこと意識してるのはわかってたみたいだ。
嫁はどんなずるをして入社したんだと聞いたくらい
なにもできなかった。
だが、今は家事も子育てもきちんとしている。
だからできない部下が入ってきてもダメ社員とは思わずに、
そいつの良いところを伸ばそうと考えるようになった。