私はバブル世代。
とはいえ、当時はまだはじけてないから
バブルなんて言葉はなかった。
高卒でも上企業に就職なんて普通に出来た時代だった。
私も高卒で地元で就職。
友達は都内の大手企業に就職した子が多かった。
進学先も都内がほとんどで、
特に仲のいい子は派手に遊ぶので有名な大学生。

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当然、私も絵にかいたような派手な遊びを繰り返していた。
遊び相手はお金持ちの坊ちゃん大学生やリッチな会社員。
バブルがはじけても、まあディスコにはいかなくなったけど、
程度で楽しく遊んでた。
派手な職種だった会社を辞めて手堅く地元の土建会社に就職した。
中小企業だけど役所相手の仕事が中心で景気良かった。
肉体労働のおっちゃんたちや事務のおばちゃんたちに
かわいがられて楽しくやってた。

遊びもそろそろ卒業する頃だなと思い始めた頃、
友人の紹介でF男と知り合った。
F男は上場企業の社員。
大学時代は派手に遊んでいただけあって、
遊びなれていて面白かった。
そのF男と数人の友人で集まっての
プチパーティみたいので、Aと知り合った。

AはF男の同期の同僚で、私より5歳年上。
F男の友人にしては地味で落ち着いた人だった。
バブル世代だからそれなりの遊びも知っていたけど、
ちょっと堅くて面白味のない人だった。
2度目くらいにあった時、
Aから「F男と付き合っているの?」
と聞かれたので「ただの友達」と答えた。
実際、ふざけて軽いキスをしたくらいの仲。
家も知らない。家電も知らなくて、
でも名刺交換していたので
職場に電話して「今日遊ぶ?」って感じ。
今は彼氏もいないよ、と言ったら、

「じゃあ、今日から僕が君の彼氏だよ」

と言われた。
え?と思ったけど、冗談かなんかだと思って軽く流し、
でも自宅の電話番号記入の名刺を交換した。

意外な事に、Aは冗談ではなかったみたいで、
毎晩マメに電話して来た。
それが堅いんだよねー。だいたい自分を
「ボク」という人に会ったのも初めてだったし。
5分かせいぜい10分くらいの電話で、
じゃおやすみ、できっちり終わる。
しかも毎晩9時。だから9時に家に帰る。
数回目のデートの約束をした日、
私は仕事で前代未聞のトラブルに巻き込まれた。

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別のところで書き込んだ事があるんだけど、
職場には日系ブラジル人とかアルジェリア人の
労働者が数人いて、たまに現場までの送迎しかもしていた。
もちろん近距離の現場だし、社用車で現場に向かった。
現場は埋め立て地の不法投棄の撤去。

責任者がゴミを積んだトラックで
廃棄場へ向かってからなんと私は廃品の影に、
遺体を発見…。
確か夏だったんだけど、まだ臭くなくて、
真っ白で滑らかで全裸で、ものすごくスタイルが良くて
マネキンだと思ったんだよね。

当時まだ珍しかった自動車電話で通報して、
警察署と事情聴取…。
出払っていた上司が迎えに来てくれるまで帰れなくて、
もちろん私も彼も携帯なんか持っていないので
連絡も取れなかった。会社に帰ったら、
マスコミからの電話がじゃんじゃん来て、
社長に状況説明して
帰宅したのは深夜だった。
ポケベルには彼からメッセージが何件も入っていた。
自宅に電話して事の顛末を話そうとしたんだけど、
緊張がとけたのか急に泣き出しちゃって
言葉になんなくて気づいたら自室で座ってた。
しばらくしたら、
ポケベルに彼から「シタニイル」ってメッセージが…。

マンションの正面玄関を出たら、
彼が車で来てくれてました。
もう、嬉しいやらなんやらで、車の中でワンワン泣いて、
彼は4時間も待ちぼうけくらったのに
怒りもしないで、
その後2時間も私をひたすら慰めてくれました。
もうそれで完全にAに惚れました。
遊びまわるのもやめた。
そうなると着るものも何もかも好みが変わってくる。
以前はとにかく目立ちたかったし
大勢からチヤホヤされたかった。
今はAに褒めてもらいたい、
よく見てもらいたい、そればっかり。

それでも、A好みのスタイルにしようとは
思わなかったのが自分でも不思議だった。
友達とダブルデートとかすると
「お互い≪さん≫付けで呼び合うカップル初めて見た」と
言われたけど、あれから30年たった今も≪さん≫
づけで呼び合っている。
一年ほど交際して結婚したんだけど、
先日、どうして私と付き合おうと思ったの?ときいたら
私が煙草を吸わなかったからだって。

話をしていたら、私が資格マニアで
習い事マニアだと知って、興味が出たらしい。
逆にどうしてボクと結婚してもいいと思ったの?
と聞かれたので初めて理由を教えた。
私は喘息とアレルギーを持っている。
実は煙草は苦手で、メントールの煙草は得にダメ。
くしゃみが止まらなくなる。
それを聞いたAさん、
最初のデートの日から禁煙したんだよね。
二週間くらいは辛かったけど、
禁煙ってこんなに簡単なんだって
笑って言ってた。
これで惚れない女なんている?

なんだー、禁煙のおかげかー。
ぼくは君のおかげで健康になったよって笑ってました。
そして煙草の値上げの度に、
プレゼントをくれます。

結婚の時には、友達みんなに驚かれました。
特にF男は驚いてたなぁ。
そのF男も今では見る影もな
く腹の出たハゲたオッサンなんだけどね。

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